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タモリさんが興奮した絶景を見に自転車で行ってみたら

タモリさんは、一体どこをブラブラするんだろう?

6月29日放送の『ブラタモリ』は、熊本県の阿蘇が舞台ということで、阿蘇住まいのわたしは、興味深々でテレビにかじりついた。

番組の冒頭でタモリさんが立っていたのは、阿蘇カルデラを望む小高い山の上。撮影されたのは5月だそうで、辺りにはツツジが咲き、見晴らしが抜群だ。阿蘇で眺望が良いところといえば、大観峰や草千里が有名だが、その絶景が見れる穴場スポットに、タモリさんは大興奮していた。その場所は、「田子山(たごやま)」。標高651mという小さな山だ。

サイクリングが趣味のわたしは、阿蘇のあちこちを自転車で走っているが、実は田子山にはまだ登ったことがなく、以前からちょっと気になっていた。タモリさんが行ったんだから、行ってみよう!というミーハーな気持ちから、さっそく夫と二人で、ロードバイクで行ってみることにした。

これが、とんでもない冒険のはじまりだった。

ふもとの案内板にあった、車で行けるという道から登り始める。が、山道は狭く、路面が荒れている。斜度がほとんど10%以上、ひどいところでは20%を超え、自転車にしがみつくように登っていく。後ろからきた軽トラに道を譲って足をつくと、もうこぎだせない。軽トラのおじちゃんに「この道は、きつかろ~!」と言われ、「きつかです~(ヨロヨロ)」と答える。

自転車を押してほぼ歩きで登っていくと、さっさと先に進んでいた夫が、道の分岐で待っていた。だいぶヤバイけど…どうする?と二人でしばし考え、まぁせっかくここまで来たのだからと、頂上らしき方角の道へ進んでみることにする。しかしここから、ヤバさがさらに増してくる。

草がボーボー、岩がゴロゴロ。
自転車だと無理やり進めるものの…これ、車通れんやろ!?

すると、夫が引き返してきた。さすがにこの先は行き止まりだという。すごすごと荒れた道を戻る。


タモリさんが立っていたあの場所には、一体どこから行けるのか。よく見ると、途中で通り過ぎた駐車場に案内板があった。ここには公衆トイレがあり、なんとロードバイク用のラックも設置されていた。この悪路を自転車でくることが想定されている…?笑


駐車場の奥に、頂上の展望所へ向かう道があった。
いよいよ。

頂上からの景色は、感動ものだった。阿蘇山や外輪山、わたしが暮らしている阿蘇谷が一望できる。そしてこの絶景を、タモリさんもここから眺めたのだ。ミーハーな田舎者は、そのことにさらに感動する。

でも、何か様子がちがう気がする。草が伸びて、生い茂っている。テレビで見た場所は、もっと広くてすっきりとしていなかったか。ここにはベンチがあってたしかに公園のようだが、ずいぶん荒れている印象だ。鯉のぼりは破れて紐のようになり、ポールから垂れ下がっている。


もしかして、ちがう登り口から行ける、別の場所があるんだろうか。


帰りは来た道を戻るか、展望所の先にある階段を下るか。まぁせっかくなので、自転車を押して階段を下ることにする。(懲りない)

が、ほぼ藪だった。すぐ前を進んでいるはずの夫が、埋もれて見えない。

自転車をかついで、藪をかきわけながら降りていく。道幅も極端にせまく、足を踏み外せば転がり落ちて死ねる。この山には神話や伝説の残る13の神仏があるそうで、途中に小さな社もあったが、わりとそれどころではない。

なんとか無事に下りきったものの、これで合っていたのか?という疑問が浮かぶ。少なくともタモリさんたちが、あの階段を下っていないことは間違いない。芸能人が行くには危険すぎる。ということは、あの展望所ではなかった可能性も?自宅に帰って、番組の録画を確認してみることにする。


◇◇◇


映像を見て、驚愕した。
たしかに、同じ場所だった。

タモリさんの向こう側にあるベンチは、わたしがこの日、座ったベンチだ。


しかし、辺りの草が刈ってある。おそらく管理者が、撮影に合わせて整備したのだろう。2ヶ月ほどで草は伸びに伸び、撮影時にはなく再び設置された鯉のぼりは、さいきんの暴風雨でボロボロになったのかもしれない。


タモリさんがくるって、やっぱりすごいことなんだな。タモリさんと庶民の格差を、まざまざと感じた。撮影なのだから、見栄えをよくするのは当たり前ではある。けれど、放送後に訪れる我々のような庶民もいるかもしれないし、せっかくの眺望なのだから、継続して整備してもらいたい。

ただ、過去に田子山に行った人のブログなどを見ると、きれいに整備されている展望所の写真もあった。たしかにいま草が伸びる季節ではあるので、今回たまたまだったのかもしれない。なんにせよ笑えたから、まぁいっか。

しかし、ここに自転車で行くことは、全力でおすすめしない。

藪をかきわけたおかげで、わたしは手足15か所を蚊に刺され、腕に切り傷もでき、まるでわんぱくな子どもだ。(現代はこんな子ども、いない?)
身をもって知る、とはまさにこのこと。テレビを見ただけでは、真実は分からないものだ。自分で経験してみること。年を取っても、大切にしたい。











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