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「NVICアナリストのつぶやき」第2回 「働き方改革について〜野球部という存在〜」

こんにちは。NVIC note編集チームです。

今回もアナリストのコラムをお送りします。

第2回は、弊社きっての硬派系アナリスト友野が、昨今の「働き方改革」の流れの中で、これをいかにして個人の幸せ、企業の強さに繋げていくのか、という切り口で考察しています。


働き方改革について ~野球部という存在~

皆様、こんにちは。NVICの友野と申します。
 
ここもと国を挙げて働き方改革の取り組みが進められています。

厚生労働省によると、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や、「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化といった状況」の下、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする」ことを目指す、とされています。

働き方改革関連法が2019年4月に施行され、「長時間労働の是正」や「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など9つのテーマに沿った制度変更が実施されてゆくこととなっています。働く立場からすれば、大いに喜ばしいことと思われます(下のイメージ図①ご参照)。
 
NVICでも、今年度よりテレワークを一部導入し、個人の事情に合わせた柔軟な働き方をサポートするとともに、気分を転換することによる柔軟なアイディア醸成も目指しています。

このように働きやすさという点で、会社の仕組みや工夫の面でもバックアップが充実してくるものと思われます。

<働き方改革のイメージ図①>

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ただ、どんなに制度が改善され、会社が工夫を凝らしたとしても、ひとりひとりの仕事の困難は、困難としてあり続けます。

労働時間の抑制、休暇取得の推進を目指すとしても、目先の仕事は減るわけではなく、合理化の推進といっても、降りかかってくる困難に対して今日明日すぐに直接的な効果が得られるということは稀だと思います。

仕事が片付いていない状態でオフィスを退出して、片付いていない仕事のことが頭から離れないといった状況は、かなり不幸だと思います。

従って、個人としては、どうすれば日々の困難や雑多なことに疲れ果ててしまうことなく、当初の理想や目標に対して前向きに進む集中力を持続し、日々の活動量を最大化することができるのかということを考えなければ、働き方改革が進んでも、個人の幸福度は高まらないと思います。


以前興味深いアンケート調査を目にしました。

中学生・高校生を対象に、部活動の練習時間とそれに対する意識について聴き取ったものです(下のチャート①②ご参照)。

それによると、野球部は、他の部活動(スポーツの主要種目)に比べて、活動時間が長く、特に休日の練習量は圧倒的な差がありました。

そもそも他のスポーツと比べるまでもなく、高校球児の週当たり平均活動日数6.57日、休日1日当たり7.70時間は驚異的なレベルだと思います。

しかし、その長い練習時間について、(休日がほしい、遊びたい、勉強とも両立したいといった葛藤はありつつも)不満を感じている部員の割合は少ないことが示唆されています。

調査主は、学年が上がるにつれて勝利至上主義の色彩が濃くなり、強くなるためには長い練習時間が当然必要であるという意識が染みついているがため、不満が少ないという結果となったのであり、過去の自分の成功体験をそのまま踏襲させてしまっている指導者の意識改革が必要であると結論しています。

私は少し違った印象を受けました。

少年達は、プロ野球選手に憧れて幼いころから野球を始めて、甲子園に出たいという圧倒的な夢があり、日々の練習は、誰にとってもゼロではないその可能性への延長線だと信じて取り組んでいるのであり、日本では野球のほうが他のスポーツよりも、少しだけシステマティックに夢が仕立て上げられているという状況が背景にあるのではないか。

従って、その共通の目標に向けて一致団結しているから、厳しい練習も前向きに受け入れることができるのではないかと思われました。

練習時間(労働時間)は長ければ長いほど良いといった非合理的な発想が、カルチャーとして定着するのは避けるべきですが、共有化された夢や目標は、外形的には困難なことも乗り越えて力にすることができるということの証左であり、働き方改革が進む中で、個々人の気持ちのあり方の理想を見出すヒントがそこに隠れているのではないかと思われました。

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(出所:①②ともに笹川スポーツ財団の記事「なぜ、野球部の練習は長いのか?」のデータを基に筆者作成)

NVICでは、オフィス内に集中ブースを4席設置し、外部からの雑音をシャットアウトして、午前中は企業分析に集中するという取り組みを実施し、企業分析の実績の積み上げサイクルをいかに速く回していけるか試行錯誤しています。

このように企業分析を業務の根幹と位置づけ、その投資活動を通じて3つのステークホルダー(投資家、投資先、投資コミュニティ)へ価値を提供することを社是としています。

個人的にはその共通の理想に対して、どうすれば集中力を一日の最後の最後まで持続させるひとふんばりがきくのか、そしてそれを日々変わらず積み重ねていくことができるのかと常々思いを巡らせる中、上述のように野球部に対して憧れにも似た仮説を抱きました。

働き方改革として、国レベルの推進会社の施策個人の気持ちのありかたの3つの次元がかみ合ったときにはじめて組織のパフォーマンスの最大化と、個人の幸福の最大化が両立されるのではないかと考えます。

組織と個々人の心が同じ方向を向くことができれば、たとえ背負うものが軽くならなくても、個人の背中が強くなり(下のイメージ図②ご参照)、その結果早く家に帰れる、休みを取るゆとりができる、翌日も元気、というサイクルが生まれることが働き方改革の目指すべき到達点ではないでしょうか。

さらに、それを実現できる会社こそが、変化の速い時代に柔軟に適応し、自社の競争優位性を持続させ、超過リターンを生み出し続けることができるのではないかと考えます。

押忍!

<働き方改革のイメージ図②>

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(担当:友野)