見出し画像

#4 『ファスト&スロー』を読んでみて

こんにちは!なびです。
ぼんやり続けた読書記録も4回目。途中で放り出さずに何とか続けてます。
こういう記録が習慣になればもっと楽になるのかなと思いますが、
まずは少しずつチリツモでがんばります。
梅雨に入ってしまって、せっかく衣替えして半袖でなめた格好してたら思いの外寒くて、早速体調崩しそうですww
さて、今回紹介する本は天気とか関係なく心理学寄りのお話になります。

【読んだ本】 『ファスト&スロー』
【著者 / 訳者】 ダニエル・カーネマン / 村井章子
【発行所】 早川書房
【初版】 2012年11月

ーーなぜ読もうと思ったか

Techplayという技術者向けのセミナーでABEJAの方が紹介していたので買ってみました。元々人間の心理を科学的にアプローチしている題材は好きで、この本自体も実験に基づき、人間の心理を追求した内容となっています。

ーーどんなことが書いてある?

人間の意思決定はどのように決まるか、ということについて
システム1(早い思考;ファスト)とシステム2(遅い思考;スロー)という2つのシステムの機能で議論しています。
本の副題となっている『あなたの意思はどう決まるか』という記載がこの本を要約しています。
システム1は端的に言ってしまえば「直感」と表され、特に考えるという行為をしなくても自然と認識することができる(=早い)特徴がある。
一方でシステム2は「熟考」と表現でき、一般的な思考する行動のことを指している(そしてシステム1より「遅い」)、とのこと。
このシステム1, システム2がうまいこと働いてくれて、我々人間は意思決定することができるということです。
具体的にはシステム1とシステム2が互いに関連しあって物事を判断し、意思の決定に関わってくるというものです。
しかし、困ったことにシステム1, システム2ともに完全ではなく弱点があり、それが意思決定の不条理さが表現されてしまうと筆者は述べています。
システム1は騙されやすく、信じやすい傾向にある、一方で
システム2は疑ってかかり信じないというスタンスですが、怠けやすいという。。

ーー印象に残ったこと

本の内容から、人間の意思決定について書かれていますが、
特にシステム1, システム2の弱点によって発生する「意思決定の不条理さ」にフォーカスを当てている印象でした。

システム1は、因果関係が形成されるシナリオは扱えるが、統計的な推論にはとんと弱い。

例えば、人間の判断は時折「統計的な背景」を無視しがちです。
上記を説明する例として、ある人の性格判断から職業を当てるというお題を取り上げています。
「内向的・読書好き・インドア派」である男性が
「図書館勤務」と「商社勤務」のどちらである確率が高いか、と聞いた際に
多くの人は「図書館勤務」と答えるでしょう。
しかし、統計的にみると、世間では明らかに「商社勤務」の男性が多い
はず
で、上の答えは「商社勤務」であると答えるべきなのです。
「内向的・読書好き・インドア派」と「図書館」がシステム1によって連想されます。その関係性が非常に高いと判断されてしまうと、システム2の怠け癖が発揮されて機能せず、短絡的な判断を下してしまう、ということのようです。

これと同じように「ハロー効果」(第一印象が良いと知らないところまでも高評価を与える)が挙げています。
笑顔が素敵な人は性格も優しそう、ってやつです。

さらにはマーケティングで使えそうなアンカリング効果という概念も。

「アンカリング効果(anchoring effect)」または「係留効果」という。ある未知の数値を見積もる前に何らかの特定の数値を示されると、この効果が起きる。これは、実験心理学の分野ではきわめて信頼度と頑健性の高い結果で、あなたの見積もりはその特定の数値の近くにとどまったまま、どうしても離れることができない。

メーカー価格として「10,000円」と売られていると、消費者は「10,000円」を基準にして判断をすることになる。つまり、同じ1,000円で売られている商品でも、
「定価2,000円の50%オフ」の方よりも、「10,000円の90%オフ」の方がお得感がでる、という感じです。
多くの人が共通して感じる、この心情は心理学的にも有用と認められて、さまざまなマーケティング活動に使用されています。

「平均への回帰(regression to the mean)」として知られる現象で、この場合には訓練生の出来がランダムに変動しただけなのである。(中略)ランダム事象につきものの変動に因果関係を当てはめたわけである。

複数の相関関係があまり高くない事象においては、平均への回帰という概念が発生すると言われています。
具体的には、教官と訓練生の指導風景について、教官が言及する「叱った方が良い成績を獲得する」ということが間違いである、ということの証明です。
教官の言い分では叱った方が次に成功する確率が高いから、と述べており、それを理由として上述の言及を行なっているようですが、その主張を筆者は真っ向から反対しています。筆者は「訓練生の出来は教官の叱咤激励に左右されず、全くのランダムで決まる」とし、叱咤されたということは、「その時の訓練生の出来は非常に低かった」ということとなります。そのため、叱咤された次の施行では、「出来が悪くなる確率は比較的低くなる」ため、叱咤される可能性は自ずと低くなる、そのため「叱咤された後は良い成果となると勘違いする」と述べています。
当たり前ですが、教官から叱咤されることで、訓練生のパフォーマンスが向上するとは思いませんし、この意見については共感しました。
ただ、「相関関係が低い現象はランダムに決まり、結局は良いことと同じくらい悪いことも起きる(平均に回帰する)」という思考はなかなかおもしろかったです。
まあ、「叱咤することで伸びる」とかいう昭和的な指導方法は意味がない、むしろ訓練生の自信を喪失する可能性があり、マイナスであるとすら言えるから止めろ、ってことでしょうが。。笑

ーー本書を読んで

人間の意思決定は非常に曖昧で不安定さを持っていることを実感しました。自分の脳ですら信用しすぎるのは良くないですね。
端的に言ってしまえば「何事も疑問に持ち、深く考えろ」ということでしょうか。。
何事も疑うことは、まあやろうと思えばできると思います。日頃から「なぜ?」という意識を持って、さまざまな現象にアプローチすればいいのですから。ただ、深く考えるためにはベースとなる知識、すなわち「思考の材料」が必要になります。この思考の材料は「インプットした知識量」と置き換えることができ、いろんなことをどれだけ知っているか、ということとも捉えそうです。
つまり、インプットにより知識を増やすことが大切なのかなと思いました(これからもたくさん本を読みます笑)。
全体を通して人間の思考回路を深く掘っていく内容は、とても刺激的でした。本書では、システム1とシステム2にはそれぞれ長所と短所が存在しており、優劣をつけるべきでないという姿勢を一貫して言及しています。つまり、「〇〇しなければならない」などと言ったレクチャー本ではなく、あくまで人間の思考回路を紐解いたサイエンスな本でした。
このレビューも確実に完全なものでは全くないし、システム1による直感的な思考も多々含まれていることでしょう笑。気になる文章がもしあれば、ぜひ原本を手にとって読んでみてください!
実は下巻もありまして、、こちらは近いうちに読んでみることにします。。(まだ未読でした。。笑)

拙い文章ですが、読んでくれてありがとうございました!
それでは!

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

いつも記事を読んでいただきありがとうございます! 私がもっと頑張れるためにはあなたのサポートは非常に強力です。noteでもっと記事書いてほしい!と思ってくれるのであれば、ぜひともサポートお願いします