見出し画像

リーンスタートアップ ~ よくある 3つの勘違い

新規事業開発を行う時、ビジネスモデルを確定するためにリーンスタートアップの方法論がよく使われているが、様々な原因で上手く応用できない時も多い。

ここでは、活用できない原因を徹底的に分析する目的ではなく、「他人のミスから学んだ方が早い」という視点で、私自身がよく指摘されたミス、および周りの方が勘違いしがちなことを 3つ紹介する。

リーンスタートアップの方法論を解説した本は既に多くあるので、下図で簡単に復習するだけにする。

基本的にリーンスタートアップとは、Build – Measure – Learn(BML)を繰り返すことにより、仮説を検証しながらビジネスモデルを明確化する方法論である。

以下、よくある 3つの勘違いを紹介する。

① MVP はアルファ版である

エンジニアリングが得意である方に、この勘違いがよく見られた。MVP は「Minimum Viable Product」の略であるが、普通の商品開発の考え方のプロダクトではない。仮説検証の視点から見ると、「MVP は重要な仮説を適切に検証できる最も小さい物」であるということは多くのリーンスタートアップ達者の意見である。

例えば、下図の Spotify による MVP の説明が分かりやすい。

Spotify による MVP の説明(出典:Spotify のプレゼンテーションより、
イラスト:Kirill Shikhanov

車を開発する場合、車が完成してから初めて顧客のフィードバックを受けるのでは遅すぎる。まだプロダクトをピボット(変化)できる時点から早めに顧客のコメントを受けて無駄を無くすのはリーンスタートアップの基本である。

しかし、早く顧客に見せようとして、開発したい物の一部(例えば下図の例ではタイヤや車台)を顧客に見せたとしても、顧客はその物を理解できず、適切なフィードバックは期待できない。それは、顧客の想像に任せることによるトラップである。「顧客は移動するために乗り物に乗りたいか」という仮説を検証するつもりであったら、スケートボードは車のアルファ版ではないが、MVP としては適切である。

Aaron Walter さんの説明によれば、MVP はただ単にすぐに開発できるものではなく、創りたいプロダクトの「Delightful(快適性)- Usable(可用性)- Valuable(有用性)- Feasible(実現性)」が一通り揃っていなければならない。(下図参照)

垂直カットによる MVP の説明(出典:Designing For Emotion, Aaron Walter)

② 顧客に何が欲しいか聞く

早く顧客と話すのはリーンスタートアップにおける基本的な指南であるが、その目的は「顧客の欲しい物が何か」を聞くためではない。普通は、問題を自覚したり気づく人は少数である上に、自分の問題を解決する物の形が創造できる人は少ない。

スティーブ・ジョブズの言葉によれば「You can’t just ask customers what they want and then try to give that to them. By the time you get it built, they’ll want something new.(消費者に何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。完成するころには、彼らは新しいものを欲しがるだろう)」である。

リーンスタートアップにおいて顧客と早く相談することの意味は手段の一つとして「BML」の「Measure」5を実行することである。各「BML」サイクルで、ピボットが必要かどうかが判断できるデータや情報が非常に重要である。従って、デスクで自分の想像を踏まえて計画することより、顧客と話しフィードバックを得る、もしくは顧客の反応を測れることをすべきである。

イラスト:The Plan B Experiment

さらに、仮説を検証する方法は、顧客インタビューだけではなく、市場動向やターゲット顧客増の心理などが詳しい人(業界専門家、販売業者等)と話したり街の中で人間観察したりしても構わない。

③ お金を節約する

リーンスタートアップの方法論を実行することは、お金を節約することが目的なのではなく、無駄を消去することである。普段新規事業を開発する時、何処に無駄があるだろうか? 長い時間をかけて調査、企画、開発してから、結局顧客の欲しくない物ができてしまうのは大きな無駄であるが、調査、企画の中にビジネスモデルを明確することに貢献しない業務が多ければそれも無駄である。

リーンスタートアップの要点は、各「BML」サイクルが終わったら、Learn ステップで、一段と明確されたビジネスモデルを見ながら、Pivot(ピボット:軸足を残したまま別の方向に向く)か Persevere(屈せずにやり通す)かの判断することができることである。万一、創りたいビジネスにニーズ、市場、実現性がないなら、中止する判断が早くできれば、それも無駄も削減することである。

従って、リーンスタートアップを使っても、必ず予算を節約できる訳ではないが、最後の結論に対して、途中の無駄な作業を削除できるのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?