白波の狭間で #2 肉塊

目の前のテーブルの上には手紙が一通。厚さにして5mmもないのだろうにとても厚く重く感じる。何故だろう。見るのにとても緊張する。
そしてそーっと手に取ろうとするとピンポンが鳴った。出てみると叔父だった。
叔父はずかずかと家の中に入ってくるなり鞄の中からとても大きいブロック肉を取り出し僕に手渡した。
正直叔父はまるでヤクザの様なイカつい見た目でこの状況だけで見たらとても恐怖でしかないだろう。なんて思ってると叔父が手紙を手に取ってニヤニヤし、開きながら「登校初日からラブレターか?え?お前は確かにいい男だもんな」とか調子のいい事を言っていたが、読み始めるなり怪訝な顔になり、僕にこう告げる。「これはあまり気にするなよ。イタズラだからな。分かったな?」と。なんでそんな強い口調をするのか不思議で仕方なかったが叔父が帰ってすぐに手紙を読むと理由が少し分かった。
手紙は2枚あった。1枚目には母親の死に対するようなこと。2枚目は僕の幼少期についてのことだ。母親は高速道路で壁に衝突しバラバラとなり亡くなった。と聞かされていたが、この手紙に書かれていたのは、既に死んだ状態で軽自動車に乗せられ、アクセルとハンドルが固定された状態でぶつかって死んだ。とある。
そんなの信じられるわけがないだろう。
確かに借金まみれだし、返すあてもない。
殺されててもおかしくは無いがそんな回りくどいやり方をとる意味はなんなのだろうか。
そして何故、僕に相続人としての役割が来なかったのか。あの母が僕を相続人にしないわけが無い。
推理小説をよく読む僕にとってそれは不自然でどこか現実味のない話だ。
なんて考えているとなにやら外が騒がしい。
窓の外を見ると少し離れたところに野次馬とパトカー数台。救急車も停まっている。
妙な胸騒ぎもあり何かあったのか気にはなったが今はとにかく腹が減っていたので料理をすることにした。出来上がったのでおもむろにテレビを付け、ご飯を食べていると、その番組の内容に戦慄した。叔父が通り魔にあったらしい。
犯人はまだ捕まっていない。手紙の内容などもあり、僕はこれが仕組まれたことでは無いのか。と否定したいのに頭が勝手にそう結びつけてしまう。そしてそうなった場合の犯人は恐らく僕も抹殺対象に入れるはずだ。色々考えていると時刻は1時。僕も殺されるのではないか。そう思うと怖くて寝れなかったが、何故かふとリオの事を思い出した。
僕は多分リオに恋心を抱いている。
その証拠に心が落ち着いて目が覚めたらとても心地が良かった。
まるで何も無かったかのように…

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