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日々の壁打ち:話題のCommand R+とClaude 3 Opus、GPTsに市況分析をやらせ、各々の推察を比較してみる

今回のテーマ

今回は、AI開発企業のCoherが発表した話題の『Command R+』に、日々自分がやっているような、経済記事のポイント抽出とそれに基づく分析をやらせてみました。結果の比較用として、同様のプロンプトで同じ記事をClaude 3 Opusと自作GPTs『U.S. Market Summary』に分析させた結果も載せて、各々比較してみようと思います。

結論から言えば、Command R+の性能は、スピードの面ではClaude 3 OpusやChatGPT-4のどれよりも速く、かつその出力内容の品質に関しても、事前に十分なInstructionsが与えられているGPTsに負けないぐらいの結果を出したと思います。改めて生成AIの進歩はすごいものだなと驚くばかりです。


Command R+について

Command R+とは、AI開発企業のCoherが発表したすでに日本語対応ができているOpen LLMのことです。最近ですとGIGAZINEの記事がわかりやすいと思いますので、説明はそちらを読んでもらったほうがよいでしょう。

すでにCommand R+を実際に試してみた方が、「Claude 3 OpusやChatGPT-4よりも優れている!」という感想を挙げているのを見かけるようになりました。そこで自分も普段日々やっているような、経済市況の分析をCommand R+にやらせてみることで、実際の性能を見てみます。

Command R+は、以下のHugging Faceで公開されているものを利用しました。すでにチャットボックスがついていて、すぐに試せる状態になっているので、本当に気軽に試すことができます。

分析する対象

ちょうど、Bloombergのほうに『米決算シーズン到来で注目の5つのテーマ、潤沢な現金や利益率改善』という、面白い記事が掲載されましたので、こちらを分析するドキュメントとして、各LLMに与えることにします。

分析の方法

分析は、2段階でおこないます。

1.上のブルームバーグの記事のポイントを各LLMにまとめさせます。プロンプトは以下のような簡単なものです。

添付した記事を分析し、重要と思われるポイントを箇条書きで指摘してください。
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<分析する記事のテキスト>

2.続いて、そのまとめさせたポイントに基づいて、短期(1週間程度)、中期(1月程度)、長期(1年程度)の市場への影響を推測させます。プロンプトは以下のようなものです。

まとめたポイントを元に、短期(1週間程度)、中期(1月程度)、長期(1年程度)の市場への影響を推測してください。

さっそく見てみましょう。念のために画面ショットも一緒に掲載しておきます。

Command R+の結果

現在の最新市況のまとめ

  • ウォール街は、2024年第1四半期の米企業の利益伸び率が2019年以降で最も低い3.9%になると予想しているが、予想が過度に悲観的である可能性もある。

  • 市場は、米連邦準備制度による年内の利下げを予想しており、これが個人消費と経済活動を後押しし、企業業績と株価の上昇につながる可能性がある。

  • 回復力のある経済と堅調な消費者需要により、S&P 500構成銘柄の利益は2四半期連続で増加すると予想されている。

  • 「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手テクノロジー企業(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、エヌビディア、メタ、テスラ)は、第1四半期に38%の増益が見込まれている。

  • これまで注目されていなかったヘルスケアや公益事業などの業種の業績予想が上方修正されている。

  • 企業の現金およびフリーキャッシュフローは記録的な高水準にあり、米大企業の資本配分が回復しつつある。

  • 営業利益率は収益性を示す重要な指標であり、企業のコスト削減とAIブームにより、第1四半期の営業利益率は15%と予想されている。

  • トレーダーは、今回の決算シーズンにS&P 500のセクターごとに異なる動きを予想しており、インフレ見通しの違いにより相関関係が低下している。

  • 通信サービス、テクノロジー、公益事業のセクターは20%以上の利益増が見込まれる一方、エネルギー、素材、ヘルスケア企業は利益減の可能性が高い。

  • 適度なインフレは成長、貸し出し、借り入れを促進するため、収益にとって良いことであり、株式市場はそれを織り込んでいる可能性がある。

市場への影響(短期、中期、長期)

短期(1週間程度):

  • 決算発表を控え、市場は慎重な姿勢を維持する可能性が高い。

  • 決算発表の内容次第では、短期的なボラティリティが高まる可能性がある。特に「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手テクノロジー企業の決算内容が市場の動向を左右する鍵となるだろう。

  • 予想を上回る業績や強気のガイダンスがあれば、市場に安心感が広がり、株価の上昇につながる可能性がある。

  • 一方で、予想を下回る業績やネガティブな見通しが発表されれば、市場は下落する可能性がある。

中期(1月程度):

  • 第1四半期の決算シーズンが終了するにつれ、市場はより明確な方向性を見出すだろう。

  • 予想を上回る業績が確認されれば、市場は上昇基調を強める可能性がある。特に、これまで注目されていなかったヘルスケアや公益事業などのセクターが上方修正されれば、市場に新たな刺激を与えるだろう。

  • 企業の現金ポジションが健全であることが確認されれば、M&A活動や株主還元の強化など、資本配分の拡大が期待できる。これが市場にポジティブな影響を与える可能性がある。

  • 一方で、インフレや地政学的リスクなどのマクロ経済要因が企業業績に与える影響にも注目が集まるだろう。これらの要因が企業のコスト構造に悪影響を及ぼしていることが明らかになれば、市場は下落する可能性がある。

長期(1年程度):

  • 2024年末に向けて、市場はより複雑な動きを見せる可能性がある。

  • マグニフィセント・セブンの利益成長率が他のS&P 500構成銘柄を下回るとの予想は、市場のリーダーが変わる可能性を示唆している。投資家は、より広範な銘柄に注目するようになるかもしれない。

  • 適度なインフレは成長を促進するため、株式市場にとって必ずしも悪いことではない。しかし、インフレが予想以上に高止まりした場合、企業のコスト構造に悪影響を及ぼし、利益率を圧迫する可能性がある。これが長期的な株価の下落につながる可能性がある。

  • 一方で、米連邦準備制度による利下げが予想されており、これが個人消費と経済活動を後押しし、企業業績と株価の上昇につながる可能性がある。

  • 市場は、マクロ経済要因と企業業績のバランスを取ろうとするだろう。地政学的リスクやインフレの動向、中央銀行の政策など、マクロ経済要因が企業業績に与える影響に注目が集まる。

Command R+は、これらの出力をほぼ待ち時間なく出してきました。
サーバ自体があまり重くないことは考慮しなければいけないとは思いますが、そのスピードには驚きです。

また内容に関しましても、特に問題なく、そつなくまとめていると思います。少々文字が多いかなという印象はありますが、このぐらいなら悪くないです。

推測部分の評価ですが、指示として与えた『短期(1週間程度)、中期(1月程度)、長期(1年程度)』のタイムスパンの割り振りも、悪くありません。ただ他の2つのLLMと比べると、文末に「これは記事に基づいた予想なので、外れる可能性もある」みたいな注意はつけないみたいですね。
ある意味、「LLMのことがよくわかっている人向け」という印象です。

個人的な感想ですが、普段から自前のGPTsを使って米国市況分析をおこなっている自分としては、ローカルのLLMでこれがすぐに出力されるのなら、かなり魅力があります。

Claude 3 Opusの結果

現在の最新市況のまとめ

はい、この記事から重要と思われるポイントを以下にまとめました。

  1. 米国企業の1-3月期の業績予想は控えめだが、実際の業績は予想を上回る可能性がある。

  2. 大手テクノロジー企業の高い利益率が全体の業績を押し上げる要因となる。特に「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の業績が注目される。

  3. ヘルスケアや公益事業などの業種では、アナリストによる業績予想の上方修正が進んでいる。

  4. 企業の現金およびフリーキャッシュフローは記録的な高水準にあり、株主還元や事業拡大への投資が期待できる。

  5. 営業利益率の改善が予想されており、企業のコスト削減やAIブームが利益を押し上げる要因となる。

  6. セクター別では、通信サービス、テクノロジー、公益事業が大幅な利益増を見込む一方、エネルギー、素材、ヘルスケアは利益減の可能性がある。

  7. 適度なインフレは企業の収益にとって必ずしもマイナスではなく、株式市場はそれを織り込んでいる可能性がある。

以上が、記事から読み取れる主要なポイントです。米国企業の業績動向や市場の期待を理解する上で参考になると思われます。

市場への影響(短期、中期、長期)

短期、中期、長期の市場への影響を以下のように推測します。

短期(1週間程度):

  • 1-3月期の業績発表が本格化する中、予想を上回る企業の決算結果が相次ぐ可能性があり、これが株式市場の短期的な上昇要因となる。

  • 特に大手テクノロジー企業の好決算が市場心理を刺激し、関連銘柄を中心に買い需要が拡大するだろう。

  • ただし、予想を下回る決算結果も散見され、個別銘柄によっては大きな値動きとなる可能性がある。

中期(1ヶ月程度):

  • 決算発表が一巡した後、市場の関心は今後の業績見通しに移っていくと予想される。

  • アナリストによる業績予想の上方修正が進む業種や企業に注目が集まり、これらの銘柄が市場をけん引する可能性がある。

  • 企業の潤沢なキャッシュと利益率の改善を背景に、株主還元策の拡充や設備投資の増加が期待でき、これが中期的な株式市場の支援材料となるだろう。

長期(1年程度):

  • インフレ率の動向や金融政策の変更が長期的な市場の方向性を左右する重要な要因となる。

  • 適度なインフレは企業業績にプラスに働くが、インフレ率の急激な上昇は金融引き締めにつながり、株式市場にとってはマイナス材料となる。

  • セクター別では、構造的な成長が期待できるテクノロジーや通信サービスなどが長期的に市場をアウトパフォームする可能性がある一方、エネルギーや素材などの景気敏感セクターは変動性が高くなるだろう。

  • AIをはじめとする技術革新が企業の生産性を高め、長期的な収益成長を後押しすると期待される。

ただし、これらは記事の内容を基にした推測であり、実際の市場動向は様々な要因の影響を受けることに留意が必要です。

Claude 3 Opusは、上の出力を、サーバへアクセスするための待ち時間の後に表示しました。すごい速くもなければ、遅いとも感じない、使い心地です。特に重いとも感じなかったです。

記事の要約でもあるポイント抽出のまとめ方は、文章自体は判りやすいのですが、曖昧な部分も多く見られます。これは他の結果と比較しないと判りづらいのですが、例えば「米国企業の1-3月期の業績予想は控えめ」とありますが、GPTsのほうではこちらは「S&P500構成銘柄の利益」とはっきりと対象を表示しているので、読み手側としてはGPTsのほうに軍配をあげざるを得ません。

推測部分の評価としては、指示として与えた『短期(1週間程度)、中期(1月程度)、長期(1年程度)』のタイムスパンの切り分け方がぬるい印象です。また特に短期の部分の内容は、「で、結局どれ推しなの?」と聞き返したくなるような答え方をしています。また、各期間内で微妙に被る内容が推測されているのが、個人的にはちょっと気になるところです。

その一方で、推測部分に関しては、冒頭で「短期、中期、長期の市場への影響を以下のように推測します。」という一文からはじめているので、以下がAIが推測した文章であることは明確にわかります。また〆に「推測は完全ではない」ことにも触れてますので、返答形式としては問題ありません。

個人的な感想としては、「文体はわかりやすく、事実のまとめと推測の区別ははっきりしてよいが、具体的に書かれている内容には、一部あいまいな部分がある」という印象ですね。人で例えるならば、「返答に自信が無い」印象を与えるものです。自分的には、この程度の回答レベルだと返答スピードが多少速いからといって、自作GPTsにとって替えることができるほどの価値があるかというと「そこまでは、ないんじゃない?」という結論ですね。

自作GPTs『U.S. Market Summary』の結果

GPTsということは、ChatGPT-4だということです。

現在の最新市況のまとめ

この記事に基づいて、注目すべきポイントは以下の通りです:

  • S&P500構成銘柄の利益: 1-3月期の利益は前年同期比で3.9%増と、2019年以降で最低の伸びが予想されるが、市場の予測が過度に悲観的である可能性がある。

  • 米連邦準備制度の利下げ予想: 利下げが予想され、これが消費と経済活動を後押しし、業績と株価の上昇につながる可能性がある。

  • 注目される銘柄: 「マグニフィセント・セブン」の1-3月期の利益は38%増が見込まれる一方で、他のS&P500種構成企業は2%減が予想される。年末にはこの傾向が逆転すると予想されている。

  • 業績予想の上方修正: ヘルスケアや公益事業などの注目されていない業種において、業績予想の上方修正のペースが加速している。

  • 企業のキャッシュとフリーキャッシュフロー: 記録的な高水準にあり、資本配分の回復の兆しを示している。

  • 利益率の改善: コスト削減やAIブームの影響で、営業利益率の改善が見込まれている。

  • セクター別の動向: S&P500のセクターごとにインフレ見通しが異なり、セクター内の株価の相関関係が低下している。通信サービス、テクノロジー、公益事業は20%以上の利益増が見込まれるが、エネルギー、素材、ヘルスケアは利益減の可能性がある。

これらのポイントは、投資家が今後の戦略を決定する上で重要な考慮事項になりそうです。

市場への影響(短期、中期、長期)

記事の内容とそこから抽出したポイントを基に、市場への影響を以下のように推測します。

短期(1週間程度)

  • 決算シーズンの開始: JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴなど重要銘柄の決算発表が予定されているため、これらの企業の結果によって市場は短期的な動きを見せる可能性があります。特に、予想を上回る結果が出れば市場のポジティブな反応が期待できます。

  • 利下げ予想: 短期的には、米連邦準備制度による利下げの期待感が市場のセンチメントを支える可能性がありますが、実際の決定には至らない場合、その影響は限定的かもしれません。

中期(1月程度)

  • 業績予想の上方修正: ヘルスケアや公益事業などの業種で上方修正された業績予想が、これらのセクターの株価にポジティブな影響を与える可能性があります。

  • セクター間の相関関係の低下: 異なるセクター間でのインフレ見通しの違いが明確になるにつれ、投資家は特定のセクターへの投資を選好するかもしれません。このことは、セクターごとに株価の動きにばらつきをもたらす可能性があります。

長期(1年程度)

  • キャッシュとフリーキャッシュフローの高水準: 長期的には、企業の潤沢なキャッシュとフリーキャッシュフローが継続することで、企業の成長戦略や株主還元政策が積極的になることが予想されます。これが市場の堅調な支援要因になる可能性があります。

  • 利益率の改善: 長期的な視点では、コスト削減やAIブームなどによる利益率の改善が企業の株価に好影響を及ぼす可能性があります。

これらの推測は、市場の他の要因やグローバルな経済環境の変化によっても影響を受けるため、投資戦略を立てる際には慎重に検討する必要があります。

「そのようにInstructionsを事前にあたえてあるから」というのはありますが、投資家目線からみた注目すべきポイントとして整理してあるのはさすがです。また文字数もちょうどよいぐらいにまとまっており、かつ曖昧さがすくない表現になっています。ただGPTsのセッティングが「マクロ経済学を理解している投資家向け」なので、使われている言葉が一般向けとしては難しいかもしれません。

推測部分に関しても、「記事の内容とそこから抽出したポイントを基に、市場への影響を以下のように推測します。」という冒頭の文章からも判るように、「以下の文章はAIによる推測である」ということと、「この推測はどのようなデータを用いてのものであるか」を明示しています。細かいことですが大切なことです。

指示として与えた『短期(1週間程度)、中期(1月程度)、長期(1年程度)』のタイムスパンの切り分け方に関しては、マクロ経済学を知っている投資家向けの回答になっていると思います。Claude 3 Opusの回答との一番の大きな違いは、「キャッシュとフリーキャッシュフローの高水準状態」の影響が、Claude 3 Opusは「中期(1月程度)」規模の影響と推測しているのに対して、GPTsは「長期(1年程度)」規模の影響と推測していること。これに関しては、個人的にはGPTs側に軍配をあげます。

一方、出力スピードは、この中では一番遅いです。カーソルが動きながら文字を出力しますが、その出力に合わせてこちらも文章を読んで内容が理解できるぐらいです。利用上はべつに構わないのですが、もっとキビキビと動いてくれたほうが気持ちいいのは間違いないですね。

ローカルでCommand R+が使えたら最高でしょうね!

すでに個々の感想のところで述べましたが、「ローカルでCommand R+が使えたら最高でしょうね!」というのは、本気で感じました。

「ダウンロードしてローカルで動かすこともできる」ようにはなっているとはいえ、今Command R+をローカルで動かすためには、それなりのマシンスペックを備えたPCもしくはMacが必要だそうです。

とはいえ、このように優れたLLMが身近に来ているのは、本当に楽しみなことですね!

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