今、私は単発の派遣で働いている。ちょうどユニクロの倉庫が繁忙期だったので、ここ3ヶ月は月に20日前後で入れてもらってる。腰の様子が怪しいときは3連休取ったり、調子よかったら5連勤したり。天気がいい日がわかったら仕事いれずに洗濯したり。

仕事は1日単位で選べて、ユニクロについては募集しない日もあるし、応募しても確定は前日のお昼なので、いわゆる不安定な仕事ではあるけれど、私にとっての安定は「いつでも入れていつでも逃げられること」なので、派遣は性にあってて気に入っている。

私はこの10年間働いて、どこの職場でも言われたことくらいならそこそこやれる自信と度胸とスキルだけはついたので、日雇いの派遣ほど安定した仕事はないんじゃないかと思っている。仕事自体は毎日何かしらあるので、選ばなければいくらでも働ける。

私が派遣で一番気に入っているのは、何より誰とも仲良くならなくてもいいということ。

与えられた責任をきちんとこなせば、それだけで私は存在を認めてもらえる。いちいち自分のパーソナルな話題をさらけ出したり、ランチや飲み会に行ったり、ずっと仲良くできるように顔色をうかがったりしなくても、円滑に仕事ができる。価値観をぶつけあったり、説得したり、納得させたり、戦ったりしなくてよいのだ。嫌ならいつでも逃げられる安心感。

朝の待機中もひとりで待つ。昼もひとり。おしゃべりな集団が仲良くなろうと近寄ってきても、笑顔で離れるだけ。

誰かと仲良くなると、価値観の議論になるのだということを、前の会社で嫌というほど思い知った。そしてその価値観の議論にゴールがないことも。

絶対に仕事以外のことは話したくない。私のことを評価するのは私だけでいい。誰からもちやほやされなくなったし、非難されることもなくなったけど、誰からも侵害されずに私が私の価値観を大事にできていることがとても幸せだ。

仕事中の態度だけはきちんとしているので、バイト先の社員やパートさんに信頼されている自信はある。

誰に対してもずっと長いこと「私に構わず放っておいてほしい」という願望は持っていたけど、職場で放っておいてもらえることがこんなに心地いいとは知らなかった。ずっと私が求めていたのは、「死ぬまでやる仕事」ではなく、「いつ来てもいいし、来なくなっても何もいわれない仕事」のだと気がついた。

今のバイト先でも、たまに私に興味の矢印を向けてくる人がいるけれど、そういう人には明確な答えは一切言わずに「どうでしょうね」とぼんやりと濁すだけ。他人の情報を知っておくことで、優越感を感じている人がいるのも前の職場で知ったので、「はい」「いいえ」ではなく「どうでしょう」がベストアンサーだと思う。

そういうワイドショー体質なお姉さんが2、3人そろうと、すぐに人の噂話や恋愛の話、悪口で自分が上の立場なんだと他人から認めてもらおうと必死になる。でも、私が何の情報も発信しないということを知ると、踏み込まなくなったので、バカではないんだなと思う。（性格が暗いから倉庫のフォークリフトしかできないのよねとか、やっぱりあの人結婚してないから気が利かないんだよとか、愚痴を言ってるのを聞くと、想像通りのバカなんだなと思ってますます関わりたくなくなるけど）

いまだに私をあきらめられないお姉さんは何人かいて、隙を見ては私の身に着けている服やバッグ、個人情報を聞き出そうとしてくるけど、その人には絶対に隣や背後を取られないようにしている。それはそれで優位に立てているようで意外と楽しい。