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見えなくても何でもタダになるわけではない

もうずいぶん前になるが、地元の視覚障害者協会に「区から補助が出て無料で中国旅
行ができると聞いたんだけど…」と言う問い合わせがあったらしい。事務員さんもび
っくりしたそうだ。


重度障害者は障碍者年金が出たり、特殊な生活用具に対して補助金が出たりする。
視覚障害者の場合は白い杖や特殊なメガネ、拡大読書機、字ディスプレイや音声が
出る電化製品、パソコンの音声出力ソフトなどが対象になる。

自治体によって製品やサービスが変わってくるけれど、福祉タクシー券やバス券をも
らえるところもある。


本も点字図書館で作った点訳や音訳された本が借りられる。これは登録すればオンラ
イン上からデータをダウンロードすることもできるようになっている。

美術館や博物館も障碍者は無料のところがあるし、映画も遊園地も障碍者割引があっ
たりする。

都営の乗り物は東京都在住の障害者や高齢者は無料パスをもらえる。
70になった友人がシルバーパスを見せびらかしていたので私も障碍者パスを出してデ
ュエルになった。どっちが強いのかは不明だけれど、重度視覚障碍者の場合障碍者パ
スの方が介助者一人までを半額にできるので障碍者パスの方が強いと私は勝手に思っ
ている(笑)


私も見えなくなったばかりの頃は、いろいろなサービスがあるのだと感心したし驚い
た。
「ただで中国へ行ける」もその延長線上で何でもかんでもただでサービスを受けられ
るなんていうとんでも勘違いからの発想なのだろう。


点字図書館のオンラインサービスはメンテナンスなどで費用がかかるため、年に1回
寄付金を募っている。
私はパワーユーザーだし、薄給ではあるけれど今のところまだ働いでいるので毎年寄
付をしている。しかしやはり結構利用しているはずの知り合いは視覚障害者も読書の
権利があるからと言って寄付をしていないと言っていた。

いやいや、オンラインのサービスを使わなくても点字図書館に電話でリクエストして
点字本なり朗読図書のCDを送ってもらえばいい話で、PCやスマホが苦手な高齢視覚障
碍者は今でもこの方法で読書を続けている。

オンラインでダウンロードすればその場ですぐに読み始める事ができるというメリッ
トはあるけれど、図書館から送ってもらうという手段もあるのだから読書の権利うん
ぬんは全く問題にはならないはずだ。

お金がもったいないからとかケチだからと言うのではなくいかにも最もそうな理由を
つけて寄付金を払わない所が姑息だ。


私はオンラインサービスは有料にすればいいとずっと思っている。
ボランティアベースだから何巻もある小説の途中の1巻だけ音訳図書がないなんてい
うことがあっても好意でやってくれているものに対して文句は言えない。
利用料を払っていれば、「全巻揃えてくれ」などのリクエストは今よりしやすくなる
はずだ。


こんな話をすると障害者はずるいと言う人がいる。
見える人は図書館にリクエストしても人気の本は何十人何百人待ち。それに対して視
覚障碍者はすぐにダウンロードで着て読み始めることができる。

でも考えてほしい。ラジオで紹介された新刊本は、点訳音訳されるにしても1年2年待
たされるのが当たり前。今でこそkindleという選択肢はあるものの画像が多いものは
ボイスオーバー対応していないし、音声出力された機械音声はかなり聞きづらい。


障碍者年金についても前に一緒に仕事をしていた健常者に聞かれたことがある。
「東京だったら1ヵ月の家賃で飛ぶ値段だし、もしそれだけで生きていけるならこん
なところで働いてないよ」と言ったらとっても納得された。

タクシー券も、自力移動できない障碍者が通勤通院に使っていたらすぐに足りなくな
ってしまうし、その上ガイドヘルパーさんをお願いしたら。それだけでも月に10,000
円近くを支出することになる。
公共交通機関がいきわたっているところならまだしも、見えないと自力歩行は難しい
し自転車にも乗れないのである。


トータルで考えてみると、目が見えないと一人でできない事が多すぎて、コスパも悪
ければタムパも悪い。
いろいろなサービスがあったところで、やはり障害はリスクでしかないと、この記事
を書きながら再認識した。

年金を羨ましいという人もいるけれど、あなたは月8万位のために両眼なり両足を捨
てられるだろうか?
理由もなくお金なんてもらえるわけはないのだ。

そして障碍者も何でもかんでも割引になるわけではないし、少なくともただで旅行へ
は行かれない事は肝に銘じておいてほしい。

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