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月虹蝶

 きちんと書いておきたかったので、タイミングがズレて半月経ってしまいましたが、ニディガ3曲目『月虹蝶』の話をします。今回の曲は僕ら(自分、Aiobahn、KOTOKOさん)全員ものすごく気に入っており、特にAiobahnは自身でも何度も聴いて「とても良い曲が作れた」とたいへん喜んでいるほど。彼がここまで自身の作曲に誇りを抱くことは珍しく、こちらまで嬉しくなる。

 今回は敢えて全てをシンプルにしてある。サムネもタイトルも。Aiobahnのチャンネルでなく、ゲームの公式アカウントのみであげており、宣伝も最小限。
 「(前2曲とは違い)完全にNEEDY GIRL OVERDOSEの曲として作った」とAiobahnが語っている通り、今回はゲームの枠を越えて愛された『INTERNET OVERDOSE』や『INTERNET YAMERO』とは一気に雰囲気を変え、あくまでゲームをプレイした人たち、そしてKOTOKOさんを……I'veサウンドを、ひいては美少女ゲームを愛してきた方々に届けばいい、と互いに考えており、狙い通り正しくそのような評価を受け、ゲームのファン、往年のエロゲーマーたちが喜ぶ様子に、Aiobahnと二人でうむうむと「いい仕事をした」と満足したものである。
 良くも悪くも前2曲はゲームの枠を越えすぎた。それは僕らにとっても必要な挑戦であったが、いつまでもネットをテーマに広くリーチする曲を作って周囲から「数字による評価」をされても仕方がないと、自然とAiobahnと僕も認識は一致しており、二人で好きなKOTOKO曲を改めて聴いた後、AiobahnのI'veサウンド愛へ託した。

 するとどうだ。届いたインストは6分を超え、イントロから彼の"本気"が伝わる。まるでAiobahnにとってのボヘミアンラプソディだと解釈する。大衆的な評価はともかく、文化的な、音楽的な完成度としては彼のターニングポイントとなるだろう。これには僕も本気で応えねばならない。というか、今までも僕はAiobahnから届いたインストに文句をつけたことは一度もなく、逆にAiobahnは僕の作詞に口を出したことが無い。ある意味では信頼の証であると好意的に受け取っているものの、回を重ねるたびにセリフパートがどんどん長くなるのは圧が強い。
 毎回「どうにかセリフパートを書き上げたぞ……」と一息つくと、次の曲ではもっと複雑な構成のインストがくる。山王戦でヘトヘトになりつつも流川から「そんなタマじゃねーよな」と無遠慮なパスを渡される三井の心情である。ボールが回ってきたのだからシュートを決めなければならない。もはや今回の曲は「必要な人にだけ届いたら伸びない」くらいの塩梅が成功だろうと、MVも僕自身が絵コンテを切った。そうなると当然省エネ撮影となるため、年末年始へ一人ロケ地として山梨へ行ったりと頑張ってみた次第。

 作詞のテーマは「蝶」とだけ考えていた。今月出版される小説のタイトルが『蜘蛛』だからだ。超てんちゃん、蝶、配信者……蝶々は夢の象徴、いつか醒める夢……いずれ還る美少女、となると「かぐや姫か!」と脳内のキーワードを繋ぎ合わせるように言葉を紡いでいく。前2曲はパッションで書いた歌詞であったが、今回は物語性の強いロジックで構成している。こうなると脳内の光景を表現するのは自分自身が最適であろう。それプロと比べて拙くとも。手術による入院もありタイトなスケジュールとなりましたが、編集さんがともに徹夜してくれたこともあり、個人的には大満足の映像となりました。言うまでもなくキービジュをお願いしたBerry Verrineさんによる七色の羽は圧巻。最初に拝見した際、目を奪われるとはこのことかと感嘆していた。素晴らしい。


 収録時、KOTOKOさんが驚くほど喜んでくれたことも印象に残っている。曲調から、今回への意気込みが伝わってくれたのでしょう。「あの頃のサウンドを今の実力で歌えることが嬉しい」とまで言ってもらえた。Aiobahn、やったな!
 総じて、関係者の想い入れが深く、2周年の区切りに相応しい一曲だと原作者として実感している。中国の方では日本の何倍も再生されており、コミュニティでは歌詞への解釈へ熱が入っている。なんと喜ばしいことか。もちろん本国でもクリア後のプレイヤーたちからも「これは間違いなくゲームの曲だ」と感動のコメントを頂いている。ここまで届けたい人たちに届けられたことは、ひとえにAiobahnの愛とKOTOKOさんの今なお成長し続けるボーカル力の賜物。
 一旦3曲目をもってニディガの音楽活動は一新する予定です。Aiobahnもニディガに関しては出し切ってくれたでしょうし、超てんちゃんに声帯がついたことを活かした別の見せ方にも挑戦したい。またいつかAiobahnや(これは近い未来で実現するだろうが)KOTOKOさんと巡り合う機会がある日まで、それぞれ別の形で試行錯誤していく。気持ちよく区切りができたのも『月虹蝶』の、七色の蝶のおかげですね。

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