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明日から本気出す人たち

イラスト/alma様(株式会社KADOKAWA 刊)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321705000156/

2017年07月刊。
『ココロ・ドリップ』シリーズと同じく、メディアワークス文庫から刊行された、単刊読み切り作品。

3話構成でそれぞれ違ったメインキャラが登場するが、1冊通して読むことで見えてくるような仕掛けも施してあり、楽しんでもらえる自信がある。

全編を通じてストーリーを支えるのは、「未来予報士」と名乗る黒ずくめの怪しい男の存在だ。「未来予報士」という存在のインスピレーションは、図書館で何気なく気象予報の本を読んだときに降ってきた。

舞台に選んだ溝の口駅は比較的よく利用するのだが、二階連絡通路に時折、易者さんの姿を見ることがあった。

その易者さんのイメージと、「未来予報士」というアイデア。
ふたつが頭のなかで組み合わさったとき、本作の核となるイメージが突然、姿を現した。

1話と3話における、会社での描写。そして2話の、引きこもり青年の日常における描写。どちらも扱うのは初めてだったが、書いているときのストレス値は予想以上に高かった。

そのせいもあり、執筆はかなり難航した。書いても書いても、終わらない。シーンの単体での仕上がりが気に入らなくて、書き直すということも何度もあった。(構成に問題があり書き直す、シーンの差し替えはしょっちゅうだが、シーン単体の完成に手間取るというのは、あまり無い経験だった)

キャラクターについては、晃と帆波の関係性に思い入れがあった。この作品の執筆時における数少ない楽しみは、彼らの絡みを書いているときだった。ずっと書いていたいと思うほど、他のパートを書くことが大変だった……。

それとは別に、一番好きなキャラクターは間違いなく、エーコである。
彼女のことをもっと書いてみたかった。けれどもあれ以上の描写は、彼女の軽快さを損なうことになるので、不可能でもあった。
作者にとってはどこまでいっても手が届かない、高嶺の花みたいな不思議な存在である。

イラストレーターのalma様には、ポップで軽やかなタッチで登場人物たちを素敵に描いて頂いた。
表紙案については図案、色案で何パターンか候補を頂いた。本当に甲乙つけがたく、選ばれなかったパターンでの表紙も見てみたかった……。
ちなみに表紙だが、「帯を外すとその下に、地下アイドルのミィが隠れるように描かれている」という、ちょっとした遊び心が盛り込まれている。

さらに口絵を二枚も描いて頂いた。扉絵は少し幻想的な夜のシーンを切り取っており、溝の口や渋谷に行くといつも思い出す。(しかもお気に入りのエーコが描かれている!)
目次用の口絵にはメインキャラクター4人が並んでいて、シンプルながら、ものすごくお洒落。編集氏のなかでは、こちらを表紙に採用するという案もあったようだ。(それも見てみたかった!)

執筆期間はそう長くはなかったが、全体的に難産で、苦労が多かったイメージがある。全てを書き終えて構成の輪を閉じる瞬間の達成感を目指して突き進んだ。

構成や連作の仕掛け、繋がりについて言及してくださる読者様の声が多く、そこは素直に嬉しかった。
次なる作品に取り組むうえでの力になったと思う。

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