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『安倍晋三回顧録』を読む③回顧録を出して欲しい「官邸スタッフ」の7人

安倍総理の『回顧録』を読んで、安倍官邸を支えた官僚の皆さんへの感謝の言葉が多かったことが印象に残ります。

もちろんサービスで言っている面も当然ありますが、周囲に当たり散らしたりパワハラ常習犯の河野茂木西村康も話題になるだけに、スタッフにも敬意や感謝をもって接するのが一流政治家の条件だと痛感します。これらの方々は『回顧録』を読んで考えて欲しいところです。

それはさておき、安倍内閣で官邸のスタッフ方々の証言で、これ以上追加できない『回顧録』を補強をしていただきたいようにも思います。順次挙げていこうと思います。

①杉田和博官房副長官

回顧録では杉田官房副長官の言及が意外に少ない印象を持ちました。歴代の官房副長官の石原信雄氏や古川貞二郎氏は回顧録出しており、杉田氏にも回顧録をお願いしたいところです。

官房副長官としては、麻生内閣での漆間巌氏、杉田氏、現在の栗生俊一氏と民主党政権除き、警察庁長官が事務の官房副長官を務めています。

岸田内閣の栗生官房副長官には申し訳ないのですが、秘密保持などの点で今の岸田政権ですと安倍二次政権では考えられない甘さがあります。逆に杉田氏の凄さを感じます。

また、良し悪しはともかく、警察出身ということで政治の要諦である保秘の重要性を考えさせられる面はあります。「黒子に徹する」という信念をお持ちなのかもしれませんが、石原(自治)古川(厚生)と政権運営に与えた影響の相違も、政治学者の検討項目とも思います。

なお、学術会議騒動や文科省前川破廉恥騒動などいまだに騒ぐ連中がいますが正直どうでもよいです。

②谷内正太郎国家安全保障局長

国家安全保障局の立ち上げの大功績もあり、安保外交の歴史から見ると、谷内氏のメモランダムは非常に貴重です。安倍2次政権前に谷内氏が出した著作は、今読んでみると「やりたかったこと」が書いてある印象を受けます。

これを踏まえた谷内氏の回顧録はぜひ読みたいところです。

一方で谷内氏は若いときに若泉敬氏に私淑されていたことは知られています。若泉氏は沖縄返還に関する交渉の経緯などをまとめ、脱稿後に自裁しています。その是非はともかく、政治外交における責任と記録の向き合い方には考えさせられます。

勝手な想像ですが谷内氏自身、師に倣う形で回顧録は用意しているようには感じます。若泉氏については没後25年に福井新聞のインタビューで答えておられます。谷内氏も後世に伝えたい「志」があるはずです。

③北村滋内閣情報官・国家安全保障局長

北村氏については前稿でも述べました。

2021年に出された著書があります。後半が過去の警察行政の論文で、これはこれで重要なのですが、前半相当の部分をもっと厚くしてほしかったというところはあります。2022年に出された「経済安全保障」をライフワークとする著作には意気込みが伝わってきます。

今回の回顧録の監修については外交安保についてこちらが知りたくなるような話はまだ書けないのかもしれません。公開できる範囲で出して後は、非公開部分だけ数年後に出す等でも良いので、できるだけ出されるようにお願いしたいところです。

④今井尚哉総理秘書官

今井尚哉総理秘書官は、『回顧録』にしばしば登場します。しかし、著作は全くありません。今井秘書官については週刊誌などで良く取り上げられますが、今井秘書官本人による回顧録が非常に望まれるところです。

特に今井氏が靖国神社参拝に強く異論を唱えた点も回顧録にも出てきます(私は靖国参拝賛成ですが)。ただ、これに限らず異論を唱える今井秘書官の耳を傾けること「も」大事にしたのが安倍総理の長期政権の理由だと痛感します。

現在は、キャノングローバル戦略研究所研究主幹という肩書で論考を発表されていますが、エネルギー問題に関心あるようです。

安倍内閣当時のエネルギー政策で今井秘書官の主導と思われる(実際、この点は報道もされています)のがロシアとの関係です。

特にこれについては谷内国家安保局長との確執は当時から報道で出ていましたが、実際どのような議論がされていたのか、は現在がロシアとの問題が難しくなり、出すに出せないところだろうとは思います。

しかし日ロ交渉全体にもかかわる点であり、数年後にならないと出せないのかもしれません。その時日ロ関係がどうなっているか、気がかりです。

2023年2月にも読売のインタビューに応じていますが、骨太の回顧録をお願いしたいところです。

⑤長谷川榮一内閣広報官

長谷川内閣広報官は2022年3月に既に回顧録を出されています。特に広報官と言うことからの記述が興味深いところです。

「広報」のテクニカルな解説、官邸広報のありかたについては非常に興味深いところです。広報について『回顧録』の安倍総理の話とも被る点が多いです(当然と言えば当然ですが)。

ただ、『首相官邸の2800日』には出てきませんが、中小企業関連政策はヒットを連発していたことは報道は少ないものの知る人ぞ知るところです。
「ものづくり補助金」の立役者で「事業継承税制改革」「減価償却の一括償却」「手形改革」「金型保管費」等々を仕掛けたようです。アベノミクスの一翼でしが、この点についての言及をもっとして欲しいとは思います。
マスコミが経済政策の大枠ばかり論じていて、中小企業向けの政策の評価を全くできていません。いわば現場感覚の無い経済政策議論ばかりだからです。なお、地方にも長谷川氏が講演で来ていて私も聞きました。

一方で秦郁彦先生との英訳プロジェクトで騒動が起きており、ここは納得できないところです。別途論じたいところです。

⑥兼原信克官房副長官補

兼原信克官房副長官補は、外交官としても興味深い著作が多数あります。

山口県出身でもあり、私は、「悲劇」が無ければ安倍総理と松陰神社で外交論をユーチューブで語って欲しかった、と感じたと感じるところです。

この3月に著作が出ました。『回顧録』と併せて読みたいところです。

⑦谷口智彦内閣参与

谷口智彦内閣参与は、役所出身ではありません。それだけに筆が立ち、スピーチライターとしての素晴らしさは『回顧録』でも賞賛されています。既に安倍総理関連で著作も出されています。

拙稿でも、6大演説での感動フレーズを抜粋し、追悼としました。


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