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訪問販売って一番キツイ営業だと思う、という話

これはdesigning plus nine advent calendar 9日目の記事です。が、デザインサークルとはなんぞやという勢いで全くデザインに関係ないこと書きます。あれこれ言ってもしょうがないのでいきましょう。レッツピンポン。

こんな感じで書きます。3分で読めるから読んでね。
・訪問販売をやろうと思った経緯
・訪問販売は一番過酷な営業
・所詮はインキック
・訪問販売の叩き方
・黙る営業


訪問販売をやろうと決めた経緯

僕は2018年の4月から訪問販売業者として半年間働いていました(現在は休止中、戻るかはまだ決めていません)。会社名に言及すると契約違反になりかねないのでそこはお口にチャック、まぁ誰の家にでも設置してあるアレを売ってましたとだけ言っておきます。
この始めた一言で言うと、自分の考えを相手にわかりやすく伝える能力をつけたかったからに尽きます。

その年の3月に2週間ほどベトナムでインターンをしていました。『武者修行』というプログラムで、現地にある店舗の売り上げを伸ばすビジネスプランを2週間で考えて実行して結果出してね〜という内容のものです。「伝える力が弱いな」と感じたのはその時で、現地スタッフとのコミュニュケーションは言うに及ばず、一番は同じチームのメンバーとの関係においてでした。

偏差値の高い高校・大学に通っている人は結構共感するかもですが、日頃から論理的に判断して動く人が多いと思います。AとBの2案があったら、その2つでそれぞれ得られるもの失うものを考えて、利益が最大になる方にしようという考え方。ただ、そのインターンでチームメンバーだった一人の子がものすごく感情ファーストな女の子だったんですね。「論理的に」チームで出した結論に、一応従いはするけど気は乗らないよオーラはダダ漏れ。毎日そいつとケンカしてた記憶があります。俺の話こんなにロジック通ってるやん!と思いつつ、同時に自分の話が伝わらないことにイライラしつつ過ごした2週間。この辺のチームビルディングに関してはいくらでも書けるんでまたの機会に。

ロジックが通っているというだけでは人は動かないことに人生19年目でようやく気づき、伝え方を身に付けたいという思いが膨らみ、営業職をやってみようと帰国後すぐに飛び込んだ訪問販売の道。訪問販売を選んだのは、営業の中で一番キツイ仕事だから。というわけでここからようやく本編。始まり始まり。


訪問販売は一番過酷な営業

まぁ大層な見出しですが、実際そうです。笑

なんとなれば、訪問販売は「相手が必要としていないものに興味を持たせないといけないから」です。一般的な営業って、他企業や個人と商談に行く場合に、もうすでに相手が自分の企業にある程度興味を持っている場合が多いと思うんですよね。

例えばカーディーラー。お店に来ている時点でお客さんは新しい車に多少は興味があります。欲しがっている車は何か、なんで欲しいのか、じゃあなんで購入を渋っているのか(お金?置き場?色の好み?)......をいろいろ掘り下げていけば自然と売れます。下の図で言ったら50→100に持っていけばいい。一方われらが訪問販売はというと、0→100に持っていかなければいけない。いやーこれはしんどい。

だって想像してみてください。自宅に変なやつがいきなりピンポンしてきて「こんな商品があるんですよ! 買いませんか!?」って言われてもなかなか買わないですよね。門前払いがいいオチです。興味づけからしなきゃいけないっていうのはとても大変なことなんです。


断られて当然、所詮はインキック

そんなわけでめちゃめちゃ断られます、この仕事。感覚的にはインターホンで断られるのが4割〜半分くらい。地域差はあって、意外と足立区の人とか話聞いてくれます。ヤンキーの町も捨てたもんじゃない。まぁでも通算1000件以上インキック(インターホンで断られること)はされた気がします。

クレームもたくさんもらいます。一番ひどかったのは「お前、それやってること詐欺と変わんねぇだろ、舐めてんのか。」と50歳くらいの強面でスキンヘッドのおじさんから言われた時です。20分くらい理不尽に叱られ、名刺も渡してしまい会社にクレームも入れられ、その後メンタル取り戻すために先輩に電話したらボロボロ涙出てきました。叱られて泣くのなんて小学生以来で、さすがになんでこの仕事やってんのか疑問に感じるレベルでした。その時の気持ちは鮮明に覚えています。きついっす、この仕事。

始めて3ヶ月間は契約も上がりませんでした。ちなみにうちの会社は契約取れないと給料が全く発生しません。むしろ交通費も発生しないので実質マイナスになります。つまり金払って出勤してクレームをもらい、時間も金も飛んでいく状態で5月~7月くらいの土日を全部溶かしました。まぁ自分が平日の努力をしていたのかと問われると微妙なところはありましたが、契約も上がらない中1人で鬱思考に何度も陥りました。7月の上旬とかマジでヤバかったです。起きて出勤しようと思っても脳も体も拒否して、起きているのに1時間くらい布団から出られないこともありました。

ただ逆にめちゃくちゃいい人にも巡り合います、この仕事。さっきのクレームをいただいた強面ハゲの、次に叩いた家はとてもいいご主人でした。こっちの話にウンウン頷いてくれてすんなりアポが取れた上に、「さっき怒られちゃったんですよ...」という話をしたら共感までしてくれる、天使のような方でした。逆に泣きそうになりました。

7月に初契約を取った時は人生で一番嬉しかったし、その後に取った契約宅の人は今でも全員覚えてます。「最初は訪問販売断るつもりだったけど、熱量に負けて契約を結んだよ」とおっしゃったお客さんもいらっしゃいました。完全成果給だと自分の努力がモロに反映されるのはこの仕事の面白いところだと思います。あと別に時給制じゃないので、ある程度自由に仕事できます。仕事中に勝手に銭湯行ったりします♨️楽しいです。


いっぱい断られクレームももらい、それでもアポを取り続け、多分僕が訪問販売を通して一番学んだことは、「断られても当然。数打ちゃ当たる」って思えるようになったことです。

今までだったら、「会いたい」と思う教授や企業の方がいても、いろいろ言い訳してアポ取りしてこなかったんですね。でも、断られて元々やん!と思うとメールとかTwitterのDMとか普通に送れることに気づきました。断られても所詮はインキック、強面ハゲデブに20分叱られるよりはマシと思えるので。まぁ当たり前っちゃ当たり前ですが。笑


訪問販売の叩き方

さて、いよいよ具体的にどうやってやっているのか紹介していきます。多分みなさんが一番興味あるのはこの項ではないかと。

まず家の選び方。これはうちの会社の場合ですが、マンションとかアパートとか貸家は除外します。叩く人もいるみたいですが、大家さんとか管理人さんに話を通さなきゃいけないので実質無理です。同様に、集合住宅も勝手に家のことをいじっちゃダメな場合が多いです。ポ○スとか(これでわかる人は建築関係者ですね)。というわけで必然的に一軒家に絞られます。

次に家の外観をざっと見て、住んでいる人が大体何歳くらいなのか、経済状況がどれくらいかを見極めます。表札の感じ(例えば石でできた表札は高齢な方が多いし、ローマ字で書かれてる家は20 〜40歳くらいが多いですね)・車の種類(当然外車持っている家の方がお金持ってますよね、あと赤い車持ってる人は購買欲が高いことが心理学的に知られてます)・子供はいそうか(後ろカゴがある自転車がある家とか、朝顔置いてあるとか、上履きが干してあるとか)についていろいろ外見で判断します。

もう一個確認することが、その家のご主人さんが在宅しているかどうかです。ある程度高いものを売る場合、奧さんと仲良くなったところで所詮決定権はご主人さんの場合が多い。奥さん相手にアポを取っても、次回伺う時に90%断られます。なので、家の車庫に車がない(=ご主人さんが出かけている可能性が高い)場合は夜まで待って帰ってきたタイミングで叩きます。


次にインターホンについてです。インターホンの時には当然意識というのを使ってやってます。「みんな聞いてるんで、あなたも話聞くのが当然ですよ。逆になんで聞かないんですか?」という態度で叩かないと断られます。具体的には

❌「この辺りのみなさんにお話させてもらってます。よろしかったら玄関先までお願いします」(腰低すぎ。別に聞かなくてもいいかもと感じる)
⭕️「この辺りのみなさん順番に話をしています。2~3分で終わるので玄関先までお願いします」

といった感じです。声のトーンも、業務感バリバリで、玄関先まで出るのが半強制的に感じられるように調整します。余談ですが「ソ」の音で話すと人間断られづらいと何かの記事で読みました。当然意識は日常でもわりと使えるのでみなさんお試しあれ。


玄関先まで出てきてくれたお客さんに対して意識するのは、1に笑顔、2に声のトーン、3に声の大きさです。第一印象で人は7割近く判断されます。ちょっとでも相手に話を聞いてもらえるような明るさとテンションの高さでいかないと即ゲームオーバーです。最初の30秒で警戒心を解いてもらわないと絶対アポは取れません。

僕の場合は、それに加えてめちゃめちゃ丁寧に対応するというのが加わります。学校の卒業式でやるみたいな45度のお辞儀を3秒間して、こいつめっちゃ丁寧だなと印象付ける作戦です。丁寧に接されると自分も丁寧になるという傾向が人にはあるので。この辺は営業のキャラによってやり方は違っていて、例えばすごくフランクにお客さんに接するやつもいました。自分のキャラにあった営業のやり方というのはあると思います。


商品の説明をするときに心がけていたのは、両面話法というやり方です。基本的に、人はモノを売られることに対して警戒をします。「この人は自分をだまして商品を買わせようとしているんじゃないか」と誰もが感じます。そんな時に有効なのが両面話法、物事のいい面だけでなくて悪い面もちゃんと伝えるというやり方です。具体的に、例えば浄水器を売るとしたら

「弊社の浄水器は、含まれる薬品の量が、今までの製品が出していたのの半分以下なんですよ!なのでお子さんの健康を気遣っていらっしゃるご家庭さんや、毎月ミネラルウォーターをいっぱい買われるご家庭さんはメリット感じてもらってます。
あとさらに、薬品の量が少ないので、地域全体で環境負荷を少なくしていくという取り組みにもなるんですよね。
......ただ、いくらいい製品と言っても、最初のうちは金属くさい水が出てしまったり、あとは値段も少し高めに設定されているんですね。なので、みなさんにはメリットデメリット含んでご説明しています。」

こんな感じでしょうか。他にも、
・「想像してみてほしいんですけど」と言って買っている未来を想像させたり
・「簡単に言ってしまうと」と言ってメリットをもう一回押したり
・わざとわからないような専門用語をポロっと出して興味をひきつけたり
といろいろなテクニックがあります。「具体的には」「例えば」という枕詞もめちゃめちゃ使います。この文章中でも何回もお世話になってます。笑


もう一つ、日程調整について。多分このスキルは日常生活で一番使えるやつかと思って紹介します。後日商談になることもしょっちゅうなので、日程調整をする機会は多いですが、その時はクローズドクエスチョンが大原則です。具体的に話します。

❌「今週か来週で、空いてる日はございますか?」
⭕️「平日と土日でしたら、土日の方が家にいらっしゃいます...よね。(うん)
→土曜日と日曜日でしたら、どちらの方がお時間とれますかね?(土曜日かなぁ)
→わかりました、弊社は朝10時から夜8時まで対応しているんですが、朝・昼・夜でしたらどこがご都合よろしいですか? (午後かな!)
→では土曜日の15時ごろに伺いますね!予定表などに記入しておいてください。」

「いつがいい?」と尋ねられるよりも、「何日と何日だったら空いてるけどどっちがいい?」と尋ねられる方が頭を使わなくていいので答えるのが楽です。この仕事やるようになると、日程調整をオープンクエスチョンでしてる友達を見ると勿体無いなぁと感じるようになります。

と、まぁこんな感じでいつも叩いてます。本当は好意の返報性とか人の褒め方とかいろいろあるのですが疲れたので割愛します。またの機会に。


黙る営業

そろそろこの話も終わりです。最後に、皆さんは営業職の人にどんなイメージを持たれるでしょうか?


・口が達者
・営業スマイル浮かべてそう
・商品を魅力的に説明する人
・いつの間にか丸め込まれてる

こんなところでしょうか。実際この4つはすごく大切なことです。口は達者だったらそれに越したことはないし、迷っている相手にグイグイいくのも営業の重要なスキルの一つです。ただ、営業をやるときに僕が自分の中で一番大切にしているのは「黙る営業」であることです。

商品の説明をして、メリットもデメリットも全部一通り言ったら、黙る。



ただ、

ひたすら、

黙る。



お客さんは、こちらが黙っている間いろいろなことを考えます。価格はどうか、家に置くとしたらどこに置くか、好みにマッチするかなど。その考えている時間を邪魔しないように、心がけるようにしています。それが一番難しいんですが。

黙ることにも関連するのですが、「話すよりも聞く」を心がけるのもとても大切だと思います。基本的に人は自分の話を聞いてもらいたいので、自分の持っている情報を言いがちですが、話したいと思っているのは相手も同じ。相手が商品のどこに興味を持っているのか、どこがネックなのかをちゃんと聞いてあげれる人が売れる営業マンだと思います。「聞く」のにもやり方があって、「へぇ」だけじゃなくて「へぇ、そうなんですね!」にするなどの方法や、頷きや相手の目を見るなどのノンバーバルな部分、相手の出した情報の一端を拾ってそこから質問していくなどいろいろあります。常日頃から、相手のことを「聞く」というのは心がけていきたいところです。


......でもたまには営業マンだって自分の話を聞いてほしいので、長々と仕事の話を書きました。笑
お付き合いいただきありがとうございます。


今度あなたの家に訪問販売業者がきたら、優しく対応してあげてくださいね笑




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