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<要約>ファイナンス思考

テーマ


"会社"のあらゆる活動に紐づいている。財務部門の担当者だけでなくすべてのビジネスパーソンが身につけておくべき考え方、ファイアンス思考を武器に日本企業を蝕む病PL脳の解決と、それに伴った再生の戦略を論じた本。

要約

初期的に想定されていた会社像(日本最初の会社は連合東インド会社)は、期間限定で集結するプロジェクト的な側面が強かった。
上場という仕組みが加わったことによって、企業の存続や永続的な企業価値の向上といった条件を満たす必要が出てくるようになった。

◯会社が評価される3つの市場
①労働市場
働く従業員の立場

②財市場
商品/サービスを消費・利用する顧客の立場

③資本市場
投資家の立場

※三者の短期における利害は食い違うことがあり、長期的な目線を合わせるのが経営者の重要な役割。

◯会社の活動の核=ビジネス
ある事業を始めようと計画する起業家が、必要な資金を投資家から集め、そのお金を投資して商品やサービスを開発して提供し、対価として得たお金を投資家に返すという一連の活動のことである。by福沢諭吉

◯会社が評価される3つのお金の側面

①事業の成果
損益計算書(PL)やキャッシュフロー計算書で評価される

②保有する経営資源
貸借対照表(BS)

③会社の価値
ファイナンス

要はファイナンス思考は、会社の価値を最大化するために、長期的な目線に立って事業や財務に関する戦略を総合的に組み立てる考え方のこと。

経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」を有効に活用して、会社の価値を最大化することが、ファイナンス的観点から会社に期待されている役割。

◯日本企業を蝕むPL脳
基礎的な会計知識に基づきつつもファイナンスの観点に欠け、会社の長期的な成長よりも直近の業績の見栄えを優先し,「目先のPLを最大化することこそが経営の至上命題である」とする思考態度のこと。

※会計制度の穴を突いて、売上高を多く見せたり、利益をかさ上げしたりすることで、PLは「作る」ことができる。

進行したPL脳の症状
①売上至上主義
→売上の最大化こそが経営の最優先事項ととらえる売上至上主義は、マーケット環境よりも自社の業績数値が議論の出発点になっており、前年対比の成長が目的化している会社で起きやすい。
社内の業績管理が利益ベースだと難しいことが拍車をかけている。

②利益至上主義
→利益の捻出・増加を絶対視する利益至上主義では、マーケティングコストや研究開発費の削減、「のれん」の償却を嫌った事業買収の抑制、子会社·関連会社株式の時価評価への洗い替えといったアクションが見られがち。利益の確保は重要であるが、固執するとかえって会社の長期的な価値向上の妨げにもなりかねない。

③キャッシュフロー軽視
→PL上の数値に意識が偏ると、キャッシュフローに対する注意が薄くなり、運転資本の増加や、子会社からの資金回収が後手に回るといった事態を招く。
結果として機動的な資金の活用ができず、場合によっては経営難に陥りかねない。

④バリュー軽視
→赤字さえ出なければよいなどといった発想で事業の価値を軽視していると、事業の処理が後手に回り、会社全体の屋台骨を揺るがす事態に至ることがある

⑤短期主義
目先のPLをよく見せることを優先する短期主義の発想では、事業売却や構造改革のように短期的なコスト計上を必要とする大胆な施策は着手しづらくなり、長期にわたる会社の価値を押し下げることになる。

◯日本のビジネス関係者がPL脳に陥ってしまいやすくなる原因

①高度経済成長期の成功体験
→右肩上がりで継続的に市場が拡大する経済の下では、市場の伸びに合わせて生産規模を
拡大し、売上やシェアを伸ばすことが最適な経営方針。
PL脳は、高度経済成長に最適化した思考形態。

②役員の高齢化
→日本の役員の平均年齢は61歳。海外だと53歳。

③間接金融中心の金融システム、
→戦時中の統制経済の名残から、高度経済成長期には「銀行支配」と呼ばれる間接金融中心の経済体制が築かれた。デットで資金を提供する銀行は、会社に対して成長よりも安定した経営を望み、利益が出続けることを重視する。

④PLのわかりやすさ
→PLの見方を理解することは、ファイナンスの考え方を理解するのに比べて簡単であり、社内のオペレーションを管理する指標としても売上や利益は使い勝手がよい。

⑤企業情報の開示ルール
→上場会社の場合、決算短信の冒頭にPLが記載されることや、業績予想の修正のインパクトの大きさから、経営者は必然的ににPLを意識する。

⑥メディアの影響
→「増収増益」、「減収減益」といったように、会社の状況を伝えるメディアの切り口はPL上の数値に集中しすぎている。業績の変化が企業価値の向上にとってどのような意味合いがあるのかという観点が欠如している。


この御恩は100万回生まれ変わっても忘れません。たぶん。