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陰謀論者(16):パンデミック条約反対デモ

2024年4月13日に東京・池袋でパンデミック条約反対デモが行われて主催者発表では1万9000人がこのデモに参加したとみられるが実際に参加したのは多く見積もっても5000人ぐらいではないかとみられます。

このデモを主催したのは元自衛官で極右活動家でもある佐藤和夫氏。彼は「英霊の名誉を守り顕彰する会」の会長を務めるだけでなく、都内各地で様々なデモを主催したことがあります。

そんなわけで、パンデミック条約反対デモを中心に極右が主催するデモについて取り上げたいと思います。

パンデミック条約

パンデミック条約は新型コロナウイルス感染症(COVID19)のパンデミック(世界的大流行)の影響を受け、今後の予防、備え、対応を強化するための新たな国際協調の仕組み、そして規範となる法的文書のことで2024年5月に開催される第77回世界保健総会での採択を目指し、WHOを中心に議論が進められています。

また、感染症などの疾病の国際的伝播を最大限防止するための国際的なルールである国際保健規則(IHR、2005年改正)の改正作業も同時並行で進められており、これらの2つの文書による枠組みが相互に補完しあうことで世界の公衆衛生のより良い協調が実現されることが期待されています。

ただ、限界保守や反ワク界隈においてはパンデミック条約ならびにIHR改正はワクチンが強制的に接種されるのではないかという疑念や各国の主権を根本から覆すなどの理由で反対しており、こういったの人が池袋のデモに参加したとみられます。

各国の主権を奪えるのか?

パンデミック条約が制定されると「WHOに国家の主権が奪われる」という主張は正しいのでしょうか?

パンデミック条約の交渉文書についての概要が日本語で読むことができ、条約草案も公開されているものの、国家の主権を脅かす内容は見当たらないどころか国家主権の確認規定が設けられているぐらいです。また、IHR改正案についてもワクチンの強制接種を含めた各国の自主的な判断を妨げる内容や基本的人権の侵害について懸念を生じさせる内容についての議論は行われていません。

したがって、パンデミック条約の発効ならびにIHR改正で各国の感染症対策についてWHOが介入することはできないし、国家の主権を奪われるという主張そのものがナンセンスといえます。そもそも、IHRには基本的人権の尊重や国家主権を確認する条文がすでにありますし、今回の改正で削除ならびに修正されることはありません。

第3条(諸原則)
1. 本規則の実施は、人間の尊厳、人権及び基本的自由を完全に尊重して行なわなければならない。
(中略)
4. 諸国は、国連憲章及び国際法の諸原則に従い、自国の保健政策に基づき立法を行い且つそれを実施する主権的権利を有する。その際、諸国は本規則の目的を尊重することが求められる。

国際保健規約(2005)仮訳

5000人が池袋に集まった

以上のことからパンデミック条約を反対する理由となっている主張に対して根拠がないと言わざるを得ないが、なぜ約5000人が東池袋中央公園(東京都豊島区)に集まったかというとパンデミック条約が採択されるかもしれない第77回世界保健総会が迫っており、限界保守ならびに反ワクチン界隈に危機感があったと思います。

というのも、林千勝氏のX(旧Twitter)にはこのデモをWHO総会採決前が最大の山場と位置付けると同時に「WHOシナリオと国民運動の必要性」というスライドを出しています。

WHOシナリオと国民運動の必要性(出典:林千勝氏のX)

このスライドによると第77回世界保健総会でパンデミック条約ならびにIHR規則改正の全貌が初めて明らかになると書かれているが、草案や議論については公開されていますし、前述のとおり、国家の主権や基本的人権を脅かす内容についての議論はされていないことからこのシナリオはすでに破綻していると言わざるを得ません。

余談ではあるが、林氏は2025年夏~秋ごろに疾病Xによるプランデミックが起きると主張しているが、こういった類は陰謀論にすぎないと思います。(参照

佐藤氏とのコネクション

このデモの実質的主催者である佐藤氏は限界保守界隈の人を中心に積極的に付き合う傾向があり、芋づる式に彼が主催するデモを誘っているのではないかとみられます。

彼が主催したデモの一例として2021年7月に東京・銀座で行われたワクチンを子供達に打たせないデモにおいては池田としえ日野市議もこのデモに絡んでいます。

ちなみに、このデモに先立ち、若年層への新型コロナワクチン接種中止の嘆願書を萩生田文科相(当時)に提出しているが、池田氏のほかに元参政党員の赤尾由美氏もメンバーに入っています。ちなみに、赤尾氏はコロナ前から佐藤氏との面識があるみたいです。とはいえ、赤尾氏も彼と同じ極右活動家で同じ考えを持つ人と積極的に付き合っているのではないかとみられます。

とはいえ、彼が反ワクになったのは2021年6月でそれ以前は池田氏との面識はなかったのではないかとみられます。このように元々限界保守だったが、同じ意見持つ人の主張を取り込むことでごった煮状態になったのではないかとみられます。


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