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「レジェンドどくだみ荘伝説/福谷たかし 青林工藝舎」


ヨシオを見ると安心する。
「どくだみ荘」のヨシオと、作者/福谷たかし先生の自叙伝のミックス本。 しがないヨシオよりも、作者がさらに破天荒で酒びたりな人生を送られてきたのがわかる一冊。

あの四畳半の薄汚れた部屋のリアリズムは、どん底を経た人にだからこそ描けるのだろう。 でも決して精神的にはどん底ではなく、むしろそんな生活すらも楽しんでいるかのようだ。
ぼくらは生まれた時から高度経済成長の競争社会に巻き込まれ、富を得て成功者になることばかりが幸せであると刷り込まれてきた。「自己責任」なんて言葉もこんな無慈悲な世の中の産物だろう。

ヨシオはそんな社会に馴染むことができなかった人間の代弁者でもある。 いや、馴染むことができなかった…、というよりも、馴染もうという気すらなかったのだろう。 バブル崩壊を経て、見せかけのグローバリズムに騙され続け生きて来た日本人とって、彼のような生き方は神々しくすら思えるのではないだろうか。

…ヨシオを見ると安心する。
精神的に追いやられている方はどんな心療内科に足を運ぶよりも、私は「どくだみ荘」を読むことをお勧めする(※あくまで個人の見解です)。

最後に、この本の巻末に、作者の福谷たかし先生の年表が書いてあるのだが、その中の衝撃的な一文を紹介しておこう。

「(31歳)阿佐ヶ谷のクヨクヨハウスで、マスターに松田優作を紹介される。初対面で、松田の言動に腹を立てた福谷が殴りかかり、その後お互いに意気投合、親しい交流がはじまる。」
#漫画 #comic #どくだみ荘 #福谷たかし #松田優作

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