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男美プラ(仮称)激闘史

 メガミデバイスやフレームアームズガールや30MSといった美少女プラモデルをいじっていて、ふと思ったことはないだろうか。

 何故男性版メガミデバイスや30MSはないのか。

 FAGや30MSの派生元となったFAや30MMは純粋なロボットだし、ヘキサギアのガバナーは1/24スケールなので「男性版メガミデバイス」と言うにはちょっとサイズが違う。
 フィギュアライズの仮面ライダーやドラゴンボールも売られているが、版権ものもなんか違う気がする。
 男美プラ(仮称)というのは、ざっくり言うと美少女プラモデルの男版である。
 もうちょっと具体的に定義すると「1/10~1/12スケールのオリジナル男性可動プラモデル」になるだろう。
 「あればいいね」と言われつつも全然出る気配がない男美プラだが、その理由は

 売れる見込みがないから

 に他ならない。
 模型界隈は基本的に男社会なので、同じ金と時間で作るなら野郎よりも美少女やガンプラがどうしても選ばれがちなのは目に見えている。

 プラモデルと隣接するコンテンツになってしまうが、男性モデルが淘汰されつつある例をあげるとポリニアンとアゾンがある。
 ポリニアンはアクションフィギュアである。
 (厳密にはメカなので性別が無いが)シリーズ当初は男性キャラ(にできるパーツ)が存在していた。
 中性的な見た目と体型にしつつ、性転換パーツ(股間を選択式にしている)を入れたりとものすごく男性ユーザーに受け入れられるように努力したものの、駄目だったようでむちむち爆乳路線に走ることになる。
 アゾンは大手ドールメーカーである。アサルトリリィを販売している会社と言った方がわかりやすいだろう。
 アゾンはアサルトリリィやメガミデバイスと同じスケールの1/12で男性ドールを売っていたが、駄目だったようでシリーズ展開が打ち切られる。
 ドール用の1/12衣装も女性用しか売らなくなった。

 というように、フィギュアやドールの市場でも厳しいのだからプラモデルがいかに困難かはわかっていただけただろうか。

とはいえ、版権ものであったりスケールが違うと男性モチーフは一定の需要はある。
 プラモデルで言うならサムライトルーパーからフィギュアライズの仮面ライダーやドラゴンボールまで続いているし、美少女プラモデルのスタンダードとなった「素体にアーマーを取り付けて遊ぶ」コンセプトも、直接的源流は聖闘士星矢といえる。
 1/24のヘキサギアや1/35~144のAFVだと、男性兵士のフィギュアは需要が根強い。最もこれらはロボットや戦車の乗組員という側面が強いため、男性モデラーが模型世界に自分を仮託するための依り代として都合が良いという事情もあるのだろう。

 じゃあ男美プラは全く出る目がないのかと言われるとそうではなく、現在発売に向けて、コトブキヤと中華メーカーのMSGENERALが水面下で暗闘を繰り広げている。

 コトブキヤは、プロモデラーのNAOKI氏プロデュースの「ティタノマキア」から男性キャラの「ゲイルハウンド」を発売予定。
 ティタノマキアは2020年の発表から全く音沙汰ないまま3年経過し、当初参画予定だったアオシマが途中で抜けるなど非常に難航した企画だったが、2023年にようやく1弾となるゲイルハウンドが発売される。

ちゃんと素顔が付くゲハニキ


 ゲイルハウンドは要するにアイアンマンや仮面ライダーのようなパワードスーツを意識した造形になっているが、注目すべきはちゃんと素顔パーツが付いてくるところであり、これがあるからこそまごうことなく男美プラといえる。 まだ発売されていないため多くのことは語れないが、メガミデバイスやFAGとの互換性はあるのかなど気になるポイントはたくさんある。 また、これとは別に「創彩少女庭園」との互換性をウリにしたメカキット「メガロマリア」でも男性型のキットが開発されている。 あくまで素顔パーツの付かないロボットものと思われるため男美プラに入るかどうかは微妙なところだが、こちらも改造次第では男美プラを造れるかもしれない。

 一方、中華メーカーのMSGENERALからは「申猴」などの男美プラが開発中である。

リテイク前の申猴くん

 こちらも2022年初原型公開から1年経過した後に作り直されていることが確認されているなど開発は難航しているようだ。
 将魂姫は素体を2個作る仕様になっているので、これもアーマー着用時とそうでないものの2セットになると思われる。
 このほかにもイケオジのプラモとかいっぱい開発中なのだが、情報公開から全然動きがないのは中華メーカーあるあるなので……。

 さて大手のバンダイはというと、版権もの以外での参入の様子は今のところない。フィギュライズだとドラゴンボールやバットマンなどいろいろやっていて、おそらく世界で最も男性美プラのノウハウがあると思われるので、参入したら30MS並みのすごいことになるだろう。

 といったように、模型の世界において男美プラはまだ表には出ていないもののスローペースかつ熾烈な開発競争が繰り広げられている。
 男美プラは飽和してきた美プラ業界のブルーオーシャンとなりうるのか、それとも「単なる変わり種」として終わってしまうのかはわからないが、模型の世界も多様性があると嬉しいので個人的には応援したい。

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