ちびっこに理不尽と不条理と勝負とは時の運であることを叩き込む最強王フォロワーの話
みなさん、最強王図鑑という本をご存知でしょうか?
最強王図鑑というのは、昆虫や動物や妖怪やドラゴンや悪魔や神をトーナメント形式で戦わせる本のことで、オタクにわかりやすく伝えると『異修羅』や『終末のワルキューレ』の試合のところだけ抜き出したやつというか、喧嘩商売最強十六闘士セレクションです。
これが子供にめちゃくちゃ人気があって、本当に飛ぶように売れるベストセラーなんですが、今日お話するのは最強王図鑑ではなく、そのパチ……フォロワーです。
やはり売れるとフォロワーがガンガン出てくるもので、最強王図鑑も
こういうパチm…….フォロワーがいっぱい出てくるわけなんですね。
その中でも代表格として有名なのが西東社の「頂上決戦」シリーズです。
この頂上決戦シリーズ、本当に中身がすごいんですよ。
本物最強王は例えば「恐竜」とか「昆虫」とかテーマに沿ってキャラを出していくのですが、頂上決戦はマジでめちゃくちゃなのでトーナメント上にグンタイアリとドラキュラとバハムートとティラノサウルスが並びます。
見境がなさすぎるだろ!
最新作の「異種水中生物」では、ホホジロザメ、シャチといった水中で強そうな生物といえば真っ先に上がるであろうものに加え、人魚姫、船幽霊、浦島太郎といった確かに水っぽいけど本当に強いのかわからん連中、さらにはフック船長、一寸法師など「水…..?」なキャラまで入り乱れてトーナメントを繰り広げます。
このリアリティとか実力差とかクソ喰らえと言わんばかりの無茶苦茶なマッチメイキングが頂上決戦シリーズの最大の特徴といえます。
さてこの手のバトルものといえば、誰がどうやって勝つのかを予想する楽しみがあるのですが、頂上決戦シリーズにおいて勝敗を予想することははっきり言って極めて困難です。
本物最強王が割と地に足が着いた理路整然とした戦いが多いのに対し、頂上決戦は不条理で理不尽な試合展開が多いのです。
……それでは、一つ水中生物編から例をあげて浦島太郎vsシャチをお送りします。
もうこの時点で「何の何の何!?」となるかもしれません。
亀を助けて竜宮城に行っただけのただの人間である浦島太郎が、水中のギャングでおこさま人気も高いシャチに勝てるのでしょうか…..?
いくら何でも無理すぎるだろと思いながら試合が始まると、
浦島太郎を空中にぶっ飛ばしたシャチを亀が浜辺まで誘導し、王手と言わんばかりにジャンプ攻撃を仕掛けたシャチを浦島が釣り竿につけた刀で斬り刻み、浦島太郎が勝ちます!
……そうはならんやろ!
真面目に考えなくてもおかしい戦いに憤るかもしれませんが、この先の読めなさすぎる理不尽かつ不条理な展開こそ本物最強王ではなかなか味わえない頂上決戦の最大の醍醐味といえるのではないでしょうか。
いや、もっとすごいのになると勝手にいなくなってバトル終了とかあるし……
このともすればツッコミどころ満載で荒唐無稽ともとれる内容の頂上決戦ですが、真面目に考察すると本物最強王との抜本的な差別化が根底にあるのだと思います。
本物最強王ではアリvsティラノサウルスといったパワーバランスがどう見てもおかしいマッチメイキングは少なく、互いの持ち味を引き出して激しい戦いを演出していく傾向にありますが、その一方で始まる前からなんとなく勝敗が見えてしまうという難点があります。
なぜアリvsゼウスのカードは組まれないのか。
なぜちびっこ人気のあるキャラは一回戦負けしないのか。
たぶん頂上決戦のスタッフも、最強王を読んでいて気になったのではないでしょうか。
この疑問点を突き詰めて解決していった結果、先の読めない混沌とした内容につながったのでしょう。
勝負とは所詮時の運であり、人気や実力だけで勝敗は決まらない。
頂上決戦の持つ混沌とした内容はちびっこにこういうことを教えているのではないでしょうか。
学習図鑑という側面がある本物最強王に対し、そのフォロワーたる頂上決戦はあまりにも見境がなさすぎてお行儀が悪く俗悪なのかもしれません。
露骨なまでに後追いをする姿勢もなんか嫌だと思うかもしれません。
しかし、頂上決戦のぶっ飛んだ内容はただただバカをやっているのではなく、最強王という巨大化したコンテンツにかなり真剣に向き合った結果産まれたのだと思っています。
そこには出版社の意地が確かにあって、安直なフォロワーだからと言って通り過ぎるのはちょっと惜しい。
是非ともこの不条理で馬鹿馬鹿しく理不尽で強烈な戦いを目撃してほしい。
本当にすごいから。
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