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カーテンの隙間から冬の朝

 眠れない夜のなかで、冬ほど空気の温度が変わっていく様を肌で感じる季節はないかと思います。

 冬って東雲のころが一番寒く感じます。もちろん夜も冷え込むのですが、早朝の澄んだ空気の冷たさはひときわ寒いです。眠れないと、夜が深まって寒さの底まで沈んでいくのを肌で感じ、眠れない今がいったい何時頃なのか、おおかた空気の温度で分かりました。

 もちろん冬以外の季節でも、寒暖差の激しい夜があります。でも冬の、夜から夜明けにかけては何か違うのです。
 私の周りの世界が静まり返り眠っている時、暗闇も気温も深く落ちていく。まるでその世界で私だけが、眠れずに起きているような孤独感を孕んだ夜の寒さがある。
 この寒い孤独の闇夜に音が消えていく音がする。そんな”音のない音”が聞こえるのです。
 そのなかで私は毛布に包まれながら、意識が眠りに落ちていくのを待っています。なかなか途切れない意識のなかでいろいろなことを考えてしまいます。その日あったこと、在りし日にやってしまったこと、明日のこと、自分のこと、誰かのこと、創作のこと、とりとめのないこと……。

 幼いころから夜は物思いと共にありました。私の不眠症は小さいころからで、夜という時間は長くも短くもありました。ずっとものを考えていたはずなのに、気づけば外が明るかったのです。

 最近も眠りに沈まない夜の、静寂の底に沈んでいます。
(このところ小説と文芸部の新入生向けポスターの、原稿を遅くまでしているのも一因なのですが……)

 もうこの寒さは三時半ごろかしら。あら、遠くで朝刊を配達するエンジン音が響きはじめたわ。
 ツンと冷えてきた、きっともう五時ね。

 重くもない瞼をすこし開いてみる。
 閉じた分厚いカーテンの隙間から淡い光が凜と差しこんでいました。
 夜の終わりと朝の始まりの狭間の時のなかで、天の色も空気も淡くなっていきます。
 今日もまた、眠れない夜が明けた。

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