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NYでアルコホリックミーティングに行った話

アディクション=楽しいわけではないのにそれをせずにはいられない状態

ニューヨークに渡ってまだ間もないころ、一度、AAミーティング、アルコールホリックの集まりに参加したことがある。

と、いうと、なんだかすごい人たちの集まりに聞こえるけれど

アメリカは日本よりもお酒のマナーに関する世間のスタンダートが厳しくて

酔って醜態をさらすのはあり得ない行為=アルコホリックのレッテルを張られる
と言っていい。

何より、アルコホリックには厳格な規定はなくて、自分でお酒をコントロールできていない、と感じたら、それは立派なアルコール中毒。AAミーティングに参加することが奨励される。

アルコール中毒のニューヨーカー

私をミーティングに連れていってくれた、というか、引っ張っていったのは、60代の元モデルで、今はジュエリーデザイナーをしながら、女優業もしている生まれも育ちもニューヨークの生粋のニューヨーカー。

彼女のお父様は、お酒の飲み過ぎで体を壊して亡くなったそうで、彼女もモデル業を引退して、オフィスワークをするようになった20代半ば頃から毎晩のように飲んでいたそう。

20代後半から30代前半に数回婚約破棄をして、30代半ばから、お酒の量が増えて、収入のほとんどが飲み代に消え、そのうちレントも払えなくなったらしい。

度重なる家賃の滞納でアパートを追い出されたのがきっかけで、週末の朝のAAミーティングに参加するようになった。以来、旅行の時も、全米各地で参加していて、一度もサボっていないと言う。


私もニューヨークに渡ったばかりの頃、仕事もしておらず、暇ばかりあったこともあって、ついついワインを飲みすぎてしまう夜が増えた。

そのせいか、外食の時も飲みすぎてしまったりして、一度、知人たちの前で、醜態をさらしてしまったということがあったのだけど、

そのことが思いの外ショックで、それ以来、すっぱりアルコールを絶った

という経緯を元モデルの彼女に話したら、ぜひ一緒にミーティングに来るようにと、熱心に、というか、かなりしつこく誘われた。

「私はもうお酒を飲むつもりはないから」

と断り続けていたのだけれど、ある日、ブランチをした時
「ちょうどこれから始まるミーティングがあるから!」
と引っ張っていかれた。

AAミーティング

アッパーウェストサイドの教会で、日曜日の午後に行われていた集会には、様々な年代の男女が30〜40人くらい集まっていた。

ステンドグラスからやんわりとした日がこぼれる明るい教会内で、輪になって座って


どれくらいの期間シラフでいるのか
これまで、アルコールでどんな辛い体験をしたか

なんてことをそれぞれをシェアしていく。

父親がアル中で自殺した人

母親がお酒にだらしないのがイヤでイヤで、自分はそうはならないと決めていたのに、同じようにお酒に溺れてしまった女性

アルコールが原因で、子供を手放さずをえなかった母親

それこそ、重たい話のオンパレード

そんな人たちと一緒にいることさえ耐えられなかった私は
自分の番が回ってくる前に、会場を出てしまった。

愚かな自分を覚えておく

今でも、ときどき、その時のことを思い出す。

そして、今になって、やっと、あの人たちが、なぜ、毎週ミーティングに行って、過去の辛い思いをわざわざ口にしていたのか、分かる気がする。

人間は愚かだから、いつしか、その苦しさを忘れてしまう。

少しだけならいいか

今度は大丈夫

苦い思いが少し和らいだころ
甘い思いがどこかしらか湧いてくる

そんな時、昔の苦しさを思い出して
踏みとどまることができるかどうか

そんな場を持っているかどうか

それしか、自分を止める方法がない、とうことに、さんざん苦しんで、みんなようやく気がつくんだろうな。

私は、もう酒を飲みたい、と思うことはないのだけど
最近、2年ぶりに、別のアディクション的な悪い癖がむくむくと顔を出して

今の私はあの頃より強くなった

今度はバランスを保って付き合える気がする

という勘違いを膨らませて、もう一度手を出して
その結果、やっぱり、またえらい目にあった。

あの日、アッパーウェストサイドの教会で
「なんなのこのコワイ人たち?」
と思った、アルコホリックたちのほうが、よほど立派だ。

なんて愚かな自分

せめて、このことを忘れないように、ずっと覚えておこう。

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