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Ride Around Aomori 2020 参戦記


表題のレースに参加して来ました。
あまりにも情報量が多いので、こうしてnoteにまとめようと思った次第です。話題が多すぎるので固有名詞や用語については一部説明を省きますのでその点はご容赦ください。

目次
◆Ride Around Aomoriとは
◆前日譚
◆実走レポート
◆後日談
◆データ


Ride Around Aomoriとは

それは突然のアナウンスでした。
今年の年始早々、Twitterのタイムラインに驚きのpostが流れてきました。
それがこちら↓

なんとRAAMの予選会が日本で開催されるというニュースです。内容は青森をほぼ一周する650kmのファストラン。Ride Around Aomori、略してRAA。これまでウルトラディスタンスのレースはジャパニーズオデッセイぐらいしかなかった日本において、この距離の公式レースが開催されるのはおそらく初めてでしょう。
RAAMの出走資格が得られる予選会部門はエントリーフィーが50,000円と高額でサポートカー及びクルー2名以上が必要と、参加ハードルが高く本気でRAAMを目指してるチームでなければ手が出しづらいものですが、これとは別に走行会部門というソロでコース・時間帯等ほぼ同一条件で走れる部門が設けられておりました。エントリーフィーは5,000円でまあ普通です。
どれだけやってもただの私的ライドにすぎないキャノボと違って、たとえ走行会でも公式レース(建前上はレースではないけれど)としてのウルトラディスタンス、見逃す手はありません。エントリーです。

日程は8/21(金)に新青森駅前の東横インで車検とブリーフィング、8/22(土)の朝6時に新青森からスタート。下北半島~七戸~八甲田~弘前~鯵ヶ沢~竜飛岬ときて新青森へと戻る総距離650kmのコース。山岳ポイントは下北半島の斧の刃の部分に500m級、八甲田山の1000m級、岩木山の500m級、竜飛岬の500m級が控え獲得標高はおよそ6000mになります。

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制限時間はRAAMクオリファイアが32時間、走行会が40時間。正直緩いので気にする必要はありません。大半が田舎道なので信号は少なそうなので停止時間は少なく済みそうです。650kmという距離はR1キャノボと比べてひと回り多く、獲得標高もブルベ基準としては普通レベルですがキャノボ基準で考えれば多いです。コースプロフィールとしてはR9キャノボが近いものと思われますのでターゲットタイムはR9キャノボと同等レベルを想定するのが良いでしょう。

前日譚

さて、エントリーしてしまったからには出走に向けていろいろと準備しなければなりません。神戸から青森へは陸路は大変なので空路ですが、伊丹からでなければ青森直行便はありません。神戸空港から出ればな~と悩んでいたそのわずか3日後、フジドリームエアラインズ(FDA)が神戸-青森路線を3月に就航させるというニュースが流れます。でかした!
FDAなら自転車搭載サービスという空輸用輪行箱を無料で貸してもらえるサービスが使えます。これで移動に関するいろいろな問題は解決です。

次は宿です。宿はそのうち考えればいいやと思って放置しているうちにマヤさんからメールが来て、なんでもスタート地点の東横インに部屋を確保したので宿泊を希望される方はご一報くださいとのこと。すぐに「お願いします」と返信。これで宿の手配もOKです。

個人的な準備は着々と進んでいましたが、COVID-19の煽りでRAAの開催が危ぶまれる状況に陥ります。運営からは音沙汰無い日が続き、このまま中止になったら航空券のキャンセルはどうしようか等と考え始めた頃、ようやく開催の見通しをアナウンスするメールが届き一安心。ただ、650kmのファストをする覚悟が緩みかけていたので覚悟を固め直すのに少々時間がかかりましたが。

開催が決定したので職場に休暇を申請します。8/21(金)に車検があり、8/22(土)にスタート、8/23(日)の夜には閉会式のようなものがあるので8/24も休暇が必要です。時期的に忙しくなり始めるタイミングでしたがしれっと申請。穴埋めは未来の自分に任せます。

大会まで一週間を切り、マシンと荷物の準備を進めます。マシンはハブダイナモの前輪を外し特製の軽量手組ホイールに交換、フレームバッグ取り付け、フロントデスクブレーキパッド交換、リアタイヤ交換、各種電池交換、チェーン洗浄、注油、増し締め、レギュレーション準拠の反射材追加ぐらい。荷物は着替えと反射ベストと防寒具少々、モバイルバッテリやプロテクトJ1、大量の補給食とその他諸々といったところでしょうか。

補給食はマイベストをチョイス。エネモチ5本、スポーツようかん10本、マグオン10個。他にもいくらか現地調達します。
天気予報は二転三転しつつも曇り予報っぽいので雨具は置いてきました。これが後に悩みの種になるとは……。

◆8月21日 スタート前日

いつもの時間に起床。身支度を整えて神戸空港へと出発します。空港まで大した距離ではありませんが、レース前の大事な身体に負荷をかけたくないのですぐ近くの駅から輪行します。神戸線が遅延してて焦りましたが余裕をもって空港に到着。

まずはFDAのチェックインカウンターで自転車搭載サービスの輪行箱を借ります。マシンがちゃんと箱に収まるかわからなかったのでいろいろ工具を準備しましたが、DHバーを傾けたのとペダルを外した程度で、ハンドルステムにもシートポストにもRDにも触れずに格納できました。助かる。
保安検査を通過しボーディング。青森へは1時間半ほどのフライトです。搭乗人数はやっぱり少なくて、20人もいないような具合。厳しいご時世です。
機内でのサービスは飴とチョコ、お茶かりんごジュースが提供されました。座席のポケットには機内誌もあります。コロナ禍真っ只中に乗ったソラシドエアでは機内誌もドリンクの提供も無くなってしまったのを思い出すと、サービスの回復具合に感動します。

現地に着くと曇り予報は裏切られて雨が降っていました。
残念なお天気ですが、とりあえず腹ごなしです。

みそカレー牛乳ラーメン、独創的な組み合わせですが、想像以上に美味しかったです。皆様も青森にお越しの際はぜひご賞味あれ。

輪行を解除して青森市街方面へ向かいます。青森空港は標高約190mほどにあるのでほとんど下り坂。楽ちんですが小雨が止まず気分はややナーバス。
時間に余裕があるので寄り道します。三内丸山遺跡を見学するつもりですが、悪天候のため隣にある青森美術館に寄ることにしました。

内外共に綺麗な施設でスタッフの案内も充実していましたが、展示物がやや少なく感じました。雰囲気を楽しみたい人なら良いかもしれません。

青森美術館を後にし、東横インへ向かいます。
びしょ濡れの道路を進んでいくと、やがて空き地ばかりの新青森駅周辺にぽつんとそびえ立つノッポな建物が見えてきました。目的地の東横インです。
玄関口の横にはクオリファイア組の注目株、落合さん御一行がせっせとマシンの組み立てをしています。「JUCA  RAAM」のノボリも立っていてちょっとテンション上がってきます。
同じタイミングでいかにもな装備のサイクリストがホテルに到着します。見ると走行会部門のひであさんでした。ひであさんとは1月の神戸ブルベ淡路惨脈以来の再会です。
ふたりでホテルの玄関を抜けてロビーに入ると、先に到着していたふぃりっぷさんがいました。ふぃりっぷさんも走行会部門にエントリーしています。
奥から井手マヤさんが登場。マヤさんは日本にブルベを持ち込み文化を根付かせたブルベ界のスーパーレジェンド。今大会の運営団体JUCAの副代表でもあります。初対面なので、ああレジェンド様だぁと感動していると、なんと向こうから「あなたが4号線キングね!」と握手を求められました。握手を求めたいのはこっちなのに!ってか4号線キングって何w
恐縮しつつも握手とともに挨拶を交わし、受付名簿に書くべきことを記入します。名簿の私の名前の横に手書きで「R4キング」と書かれていたのにはズッコケそうになりましたが…w

車検は問題なくクリア。走行会のブリーフィングは18時からとのことですので、それまで駄弁ります。
いろいろな意味で注目度抜群なマシンなのでいろいろ聞かれます。特に後輪の木製ホイールは大人気でした。あと「リカンベントじゃないんだね」とも数名から言われました。リカちゃんの実戦投入は少しだけ検討しましたが、400km以上の連続走行実績が無いマシンを絶対に成功させたいレースに投入するのはリスクが大きすぎるので見送りました。

ダラダラしているうちに続々と走行会参加者が集まってきます。ピンクのMAKINOに乗って登場したちばさんや、はくらいさんとは初対面。今回でお知り合いになれました。今後ともよろしくお願いします。
地元青森から参戦のベテランライダー、カンレキマンさんも到着。彼はなんと今回のコースをぐるっと一周試走済みとのこと。強い。参加メンバーで輪になってカンレキマンさんからコースの情報を頂きます。「すてきなコース(意味深)が待っていますよ」とのこと。ふえぇ…。
ふぃりっぷさんから目標タイムを聞かれたので正直に「25時間半」と表明します。このタイムはR4キャノボの実績グロスをそのまま反映したタイム。これがこのままRAAに通用するかは知りませんが、宣言してしまった以上クリアしないと格好がつかないので重荷を背負ってしまいました。
情報交換をしていくと寝ずに走る派と寝る派に大別される構図が見えてきます。寝る派は六ヶ所村以降に遅くまでチェックインできるホテルが無いのが問題だとかなんとか。寝る派には厳しいコースのようです。
その後も百戦錬磨の強いライダーが到着し、走行会組総勢8名が揃います。
ブリーフィングが始まる前にホテルのチェックインを済ませ、自転車を客室内に入れます。客室に自転車を入れられてありがたやありがたや。

ロビーに戻って待っていると、先にブリーフィングをしていたクオリファイア組が戻ってきて18時ちょうどに走行会組のブリーフィング開始です。

ブリーフィングではコースの注意点として、山岳ポイントや補給できない虚無区間、道路工事によるダート区間の紹介、TS(BRMでいうところのPC)での記録・報告について、クオリファイア組に追いついてしまった場合の対応について(クオリファイアはドラフティング禁止なので、前に出たら速やかに30mほどの間隔を開けないとペナルティーを受けてしまうので一気に抜き去るなど配慮してほしい)、コースの要旨がRAAMの予行練習なので夜間はできるだけ寂しい道を通るようにしたので頑張ってねとか、明日の朝はクオリファイア組のスタートをみんなで見送るので早めの集合に協力してくださいとか、そんな感じの内容でした。
話を聞いてるとRAAMの練習の意味合いがかなり強いなと感じます。言うなればクオリファイアはRAAMの体験版で、走行会はRAAMの体験版の体験版といったところでしょうか。
最後に大会協賛のMANA BARさんからエナジーバーの試供を頂戴しました。

ホワイトチョコレートマカダミア味とダブルレモン味をひとつずつ貰いました。RAA走行中に食べてみましたが、ひと口目はパリパリサクサクとした食感なのに生地はしっとりしていて口内の水気が奪われず食べやすい印象。味はどちらのフレーバーも非常に美味で、普通におやつに食べたいレベル。とても気に入りました!

ブリーフィングが終わったらツイッタラー5人で集まって夕食を摂りに青森市街へと繰り出します。目的地は居酒屋わやわやさん。

お通しの時点ですでにレベルが高い。
そしてメインディッシュの登場!

豪勢なサーモンいくら丼!ネタを大量に使うので数量限定という代物。これを5人全員注文しました。
ごはん大盛り無料だったのでカーボローディングだしと調子に乗って大盛りにしたらとんでもないボリュームでえらいことに。
こぼれんばかりのイクラ(というかこぼれた)、厚切りのサーモン、そのサーモンの下からも炙りトロサーモンが出てくる。
ごはん大盛りなのにパワーバランスはネタの圧勝。お値段1800円と高額なのも納得の一杯だった。というかこれだけイクラとサーモン使ってこの値段はお得でしょう。あまりにも多いので胃の容量が小さい私は完食するのに苦労しました。
丼をつつきながら「落合さんはどんなタイムで戻ってくるんでしょうね~」とか「夜は野生動物が~」など、明日の本番について談笑しました。

ちばさんは青森駅近くのホテルを取っているのでここでお別れ(これについては参加者全員から何故東横インにしなかったのかと総ツッコミされている)。他のメンバーは電車で新青森に戻ります。
ホテルに戻る前にコンビニへ寄って朝食等を調達。出走直前の朝食メニューは重要なので全員真剣に吟味して選んでいました。
私は朝用に総菜パンと菓子パンとバナナ、それと走りながら食べる用にバタースティックパンにinゼリー×2、バタピーを購入。
ホテルへ戻って各自部屋に。私の方は荷物をまとめたり風呂に入ったりして明日の準備を整えます。ひと段落したところでTwitterを見ると、賑やかし隊の生郎ラーメンさんが東横インに到着したようなのでロビーに降りてみます。結局生郎ラーメンさんを中心に私とはくらいさん、そしてふぃりっぷさんの4人で20分ぐらいダラダラと談笑してました。

明日は早いのでほどほどにして解散。22時半就寝です。

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◆本番当日

目を覚ます。時刻は4:50。ちょっと眠いけどカーテンを開ければしっかり覚醒。すぐに朝食を摂って着替えをします。バタバタしてるうちに集合時間の5:30になったのでロビーに降りてスタート地点へ移動。

外は雨は降っていないけれど路面はウェット。雨雲レーダーを見ると東の下北半島にちらほらと雨雲が散らばっていて嫌な感じです。ただ、気温は21度程度と暑くもなく涼しすぎずちょうどいい感じです。
集合写真を撮ったりなんなりしているうちにクオリファイア組のスタート時刻、6:00が近づいていきます。

クオリファイア組スタート!落合さん→zucchaさん→櫻井さんの順に1分間隔で出走して行きました。ご武運を!

……はい。次は6:30にスタートする走行会組の番です。この中でまだホテルをチェックアウトしていない私とふぃりっぷさんはホテルに戻ります。ふぃりっぷさんは今から朝食だと言って部屋に入っていきました。私はというと、うんこするためにチェックアウトを遅らせました。立派な作戦です。長丁場のレースなので出走前にうんこが出るかどうかは超重要です。今回は狙い通り快便が出たので完璧です。
ホテルをチェックアウトしてスタートラインに並びます。

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やがてその時がやってきます――


実走レポート

6:30 RAA-JUCA走行会部門がスタートしました。
ドラフティング禁止のためインターバルを開けてスタートしたクオリファイア組と異なり、走行会部門はブルベと同様のルールということで一斉スタートです。
序盤戦。隊列は私を先頭に青森市街を東へと駆け抜けていきます。
くねくねとややこしい道を進み、R4へ。浅虫の辺りから信号の数は減って高速ステージが始まります。集団はスリムになり、先頭集団は早くも私とふぃりっぷさん、木谷さんの3人に絞られる。1時間強走ったところでふぃりっぷさんが先頭に出てきて牽引。かなり強烈。3.5倍ぐらい出てます。
ふぃりっぷさんは途中メカトラか何かわからないけど減速して離れ離れに。しかしほどなくして復帰し再びふぃりっぷさん先頭で先頭集団は突き進みます。
私の方もDHバーの固定が緩くて徐々に下を向くメカトラが発生。飛行機輪行後の組み立てが不十分だったみたい。信号待ちの隙にアーレンキーを取り出して増し締めして対処。

下北半島を北上していきますが、無情にも雨が降り始めます。雨量は大したことありませんが、降ったりやんだりといやらしい降り方でちょっとストレス。
むつ市街に到着し進路は一時西に変わります。ここで木谷さんは水を調達すると言って離脱。私は幅寄せしてくるクルマでブレーキをかけさせられてるうちに信号で分断されてふぃりっぷさんに置いて行かれます。

4時間で122.6kmなのでグロス30.65ペース。BRMならPCはオープン前です。やばいですね。
淡々と走り、下北半島の斧の刃先エリアに到着し北上開始。道の駅わきのさわで自販機補給とトイレを済ませ、最初の本格的な登坂が始まります。
標高500m地点を目指しえっちらおっちら登っていると、後ろから自転車が一台やってきます。やべ、木谷さんに追いつかれたか?と思ったら現れたのはふぃりっぷさん。先に行っていたはずでは…?
どうやら途中のコンビニに寄っていたらしく、気付かず追い抜いていたようです。

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天気は悪化の一途をたどり、霧に包まれていきます。上の方では視界20mほどまでになりました。登り切ってダウンヒルが始まり、霧の中を下っていきます。すでに嫌ですが、この霧が途中で本格的な雨に変わって身体がびしょ濡れに。ああもう嫌だ嫌だ!寒いわッ!
ふぃりっぷさんとふたりで「こんな雨聞いてねえ」と愚痴りながら登り返し。斧の刃先エリアはこの調子で200mほどの登りを3回ぐらい繰り返すクソアップダウンがあります。
登り返しの途中でクオリファイアの櫻井さんをキャッチ。邪魔をしないように一気に抜き去りました。リープブロック中のクルーさんに声援を貰えたのは嬉しかったです。
晴れていたら景色が良い区間らしいですがずっと雨と霧で景色もへったくれもありません。全身がじっとりと濡れ、特に靴の中の足が不快です。これはゴール後にTwitterを見て知ったことですが、クオリファイアの落合さんはこの雨区間が終わった後に乾いた靴に交換していました。羨ましい。サポート羨ましい。
ふぃりっぷさんはまだまだ強力に先行し、10秒ほど後方を私が追いかける展開で進行していきます。
そうこうしているうちにTS1の大間に辿り着きます。

写真を撮って事務局に通過確認メールを送信。近くにあった水場でボトルを満たし、公衆トイレで用を足してリスタートします。ふぃりっぷさんは食事をすると言っていたのでお別れ。今度こそ一人旅がスタートです。

東へと進んでいきます。雨はやっと上がって路面はドライに。向かい風のようでペースは上がりませんが、パワーを見ながら進むだけです。
東通村に入り、進路は徐々に南へ。原発関連施設がちょくちょく現れます。自治体に財力があるようで舗装は綺麗めです。

グロス28.4。いいペースです。間もなくTS2のファミマに到着。

ファミマにはマヤさんたち御一行が待っていました。あれ、有人PCだっけ?w
挨拶もそこそこに入店し、トイレと買い出しを済ませます。チェックのためにレシートが必要なので、どうせならといろいろ買い込み。買ったものはその場で食う用の菓子パンとバナナ。あとは追加補給食としてinゼリーと速攻元気、あとはヨーグリーナ2本。
店を出たらふぃりっぷさんも到着していました。話を聞くと、結局大間では食事をせず、私の1kmほど後方を走り続けていたとのこと。そしてここで改めて食事にするということで、今度こそお別れ。ふぃりっぷさんから「落合さんに追いついてきてね」と送り出されます。「それは無茶振りすぎませんか?w」と言いながらリスタート。

六ヶ所村に突入。距離としては全体行程の半分を消化していますが、身体の調子はまだまだ大丈夫。パワーのメリハリもしっかり出せます。いい手ごたえです。持参した補給のうちエネモチとバタピーが無くなった(正確にはエネモチは1つ残っていたけれど無いと思っていた)のでスポーツようかんにシフトします。スポーツようかんの後はマグオンのジェルが控えています。後半になるほど液状の消化しやすそうなものを摂る作戦です。

日没。正念場の夜が始まります。羽虫が多いのか、顔面にペチペチと虫が当たってきて鬱陶しい。虫嫌いだったら発狂するんじゃないかな。
七戸に到着。もうすぐ鬼門の八甲田山。登り始めてしまったら下山するまで補給は叶わないので、自販機を探してキョロキョロ。自販機があっても横にゴミ箱がないとかで2回ほどフラれつつ、ラストチャンスかもというところで飲み物確保。トイレにも寄りたいので公衆トイレを探す。鍵がかかってて1箇所フラれつつも、その次の場所でトイレを見つけ、登りへの準備はオールグリーン。標高1040mの傘松峠を目指して踏み出します。

大間から続いていたドライ路面はここにきてまたウェットに。ひと雨降った後?空気は湿っているけれども雨は降っていません。濡れた身体でダウンヒルとか絶対嫌なので降るんじゃないぞと祈りながら登ります。
疲労感を抱える身体に鞭打ちながらブリブリと180Wほどを絞り出して暗闇の山道を着実に登っていると、後ろからクルマが一台やってきて声援を受けつつ抜き去られました。たぶんマヤさん御一行でしょう。声援ありがてえありがてえ。
…いつの間にか霧が出始めました。前照灯が霧で拡散し、視界が悪化し始めます。坂の斜度はぐんと上がり、12%~14%が連続する急勾配区間に突入。しぬ…鬼すぎる…。目指す標高が1040mと言っても、途中で100mちょい下る登り返しがあるので実質それ以上です。遠い…峠が遠すぎる…。

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待望の峠です。記念に写真を撮ってみましたが、霧のせいで青看板が浮いてるみたいになってますね。
気温は15℃ぐらい。寒すぎるほどではないけれど、ダウンヒルに備えて一応アームウォーマーとジレを着て武装します。
ちょっと下ると硫黄の香りが立ち込め、TS3の酸ヶ湯温泉に到着します。公衆トイレがあるので用を足し、温泉の名前があるところでチェック用の写真を撮影。電波が入らなかったので通過報告メールは下書き状態にして先に進みます。
この通過チェックめんどくさいですね。一連の作業で3~5分は足止めされます。クオリファイアであればクルーが全て代行するので、ライダーの停止時間は一瞬で終わりです。羨ましい。サポート羨ましい。
酸ヶ湯を後にして一気に下ります。霧でたまにホワイトアウトしたりしてひたすらに恐怖。生きた心地がしない。しぬのでは。
泣きながら突き進んで下りきりました。よかった生きてる。霧も消えた。
下りきったところにはローソンがあります。当初の予定ではスルーするつもりでしたが、遠目に反射ベストの3人組が見えたので飛び込みました。きゃー!マヤさん御一行だー!(人恋しすぎた)

せっかくコンビニで止まったのでちょっと買い出し。買ったのはたしかアクエリアス950mLとその場で食う用シーチキンおにぎり、追加補給食として一本満足バーとinゼリーだったかな。おにぎりを食べながら「他の皆さんはどんな感じですか?」と聞いてみると「前のクオリファイア組は元気。心配なのは後方」とのお返事。グルペット組は通過報告を後回しにしているようでイマイチ安否確認ができていない様子。

おにぎりを口の中に詰め込み終わったので先を急ぎます。ひと山越えたのでペースを確認。ゴール目標タイムを再考します。当初目標では25時間半でしたが、このペースなら25時間切りができそうで、それ以上も期待できそうです。Twittre越しに見守ってくれている数少ないギャラリーに腹積もりをアピールするために目標をpostしておきます。

場所は黒石市、そして弘前市に移ってきます。等間隔に並ぶ街灯、ちらほらと姿を見せるコンビニ。嗚呼、文明!いいなあ。明るい街いいなあ。
道も広くて走りやすい。ちょっと元気が出て進みますが、赤信号に捕まる捕まる…。憎い…文明が憎い…。

そんな文明の明かりもほどなく途絶え、岩木山への登りが始まります。ここでの最高地点は450mほど。真顔で登ります。途中に道路工事でダートになってる箇所が2箇所ほどあり慎重にパスします。
登り切るやや手前にTS4の嶽温泉の看板に到着。通過報告メールを送りつつ、暑いのでジレとアームウォーマーを脱ぎます。

TS4通過のツイートを流したところで、TLにチラっと聞き捨てならないものが見えました。

ふぃりっぷさーん!なにラーメン食ってるのwww

思わぬ飯テロを食らいつつ、峠へ。俺もラーメン食いたい。食べたいなぁ。マグオンを舐めて我慢。
峠を越えてダウンヒル。鰺ヶ沢へ向かうダウンヒルコースはくねくねと曲がりくねるテクニカルなコースで手を焼きました。極めつけは何の前触れもなく突然現れたダート!それなりのスピードで突っ込んだのでその瞬間は落車を覚悟しました。ハンドルを抑え込みつつもブレーキはかけず自然にスピードが落ちるのを待ち、どうにか無事にダートをパス。工事中の看板ぐらい出しておいてくれ…。

鰺ヶ沢に到着。おお!海だ海!真っ暗だけど!
ここから津軽半島を北上していきます。文明が消失するメロンロードに入る前に水を補給したいところです。ギリギリのところで自販機を見つけてカルピスを購入。これ以降は補給することはありませんでした。

今宵の月は月齢2.5。ほぼ新月。闇夜のメロンロードは遠くに立ち並ぶ風車か電信柱か何かの灯りが全て同期して明滅しており異様な雰囲気。空には雲が無くなり美しい星空が広がっている。是非とも足を止め寝転がり、闇に目を慣らして星見をしたかったけれどそんな余裕は全くありません。前を向いてペダルを踏み続けます。
遠くに赤く光る変にピカピカした何かが見えてきました。近くまで来てみるとなんとパトカー。そしてその前にはクルマが一台。クオリファイアのzucchaさんのサポートカーでした。なんだなんだ職質?気になりつつも横を通過。ゴール後に知ったことですが、zucchaさんはここで道路脇の茂みから飛び出してきた猫と接触し落車。鎖骨骨折によりリタイアとなってしまい、残るクルーは警察と現場検証に立ち会っていたとのこと。気の毒です。野生動物は本当に怖い。

メロンロードは本当になにもありません。夜も更けてきて眠くなってくるコンディションです。睡魔が来る前に先手を打ってカラオケタイム。眠気覚ましにはなんだかんだ言って歌うのが効く。十三湖を通過しメロンロードが終わり、竜飛岬へ通ずるR339に入ります。
なんとなく尿意があり、道の駅こどまりという名前が出てきたので「よっしゃトイレ!」と飛び込んでいったらなんと入り口にロープが張られている!?やっべ死ぬと焦って急ブレーキ。ギリギリセーフで停止。というか前輪ロープに当たってますがな。どうしてこんなロープが…とよく見ると道の駅に隣接するように立地してるオートキャンプ場だった。紛らわしいわッ!
気を取り直して道の駅で用を足してリスタート。ラスボスの竜飛崎への登りに突入します。この登り坂がめちゃくちゃキツい!息が乱れカラオケは強制終了。でもキツいから眠くならない。500km以上を走り続けてきた身体にこの坂は刺激が強すぎる。
地平線近くにチラチラと見えるオリオン座。星空を目指して激坂を駆け上がり、待望の峠。からのダウンヒル。いつの間にか東の空が微かに色づき始めています。明るくなり始めれば睡魔の心配はなくなります。睡魔の峠も越えましたね。一気に下り、進路を東へ。この辺は「雲のむこう、約束の場所」の舞台のはずですが浸る余裕はありません。先を急ぎます。
先を急ぎたいのですが道路工事に阻まれたりもします。

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この赤信号に2分20秒も待たされてめっちゃイライラしました。工事区間もダートでさらにイライラ…。

日の出の4:54と同時にTS5にチェック。いよいよゴールが見えてきました。補給食の貯蔵は充分。水もギリギリ足りる。身体は痛いけど故障するような悪い痛みは皆無。残り50km、ロングスプリントです。

インターネット越しに届く声援がエネルギーになる。こんな朝早くにありがとう。涙出そう。

半島をぐるっと回り進路は南。新青森にロックオン。残る力を振り絞って踏む。体を小さく丸めて本気のTT。
風の恩恵は無いけれど、信号は無くクルマの交通量もほとんどなくて進む進む。6時を回り、クオリファイア組はもうゴールしている頃か。ああ、俺も早く解放されたい。早く終われ早く終われ……あとパンクするなよ……

ゴールのあおもり健康ランド。ゴールで待っていた皆さんの顔を見た瞬間力が抜けました。よかった。本当によかった。

タイムは24時間15分。自分でも驚きの結果です。
「すごいよ!落合さんと5分差だよ!」
えっ?嘘、そんなに頑張っちゃったの俺?
「あと落合さんは酸ヶ湯温泉まで走りに行ったよ」
…うん。やっぱり本物は格が違いますわ。僕もう1ミリも動きたくないもん。

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後日談

もう動きたくないけれどそうは言ってられないので、ひーこら東横インまで移動して預かってもらっていた鞄を回収し、健康ランドへ戻ります。フレームバッグに突っ込んでいた布マスクをつけたら泥水の匂いがして心が死にました。
兎にも角にも風呂です。雨と汗で汚物同然の身体を洗い清め、湯船に浸かります。ああ^~人権の音ぉ^~。そのままフラフラと仮眠室へ移動してバタリ。おやすみ~。

―――1時間半ぐらいで起きた。なんか身体が興奮でもしてるのか?
とりあえず腹ごなし。

野菜炒めうめえうめえ。カーボばっかりだったから野菜が超高級料理にしか見えない。
身体を休めているうちにふぃりっぷさんとはくらいさんがゴール。お二人とも29時間台です。ふぃりっぷさんは夜に胃腸の調子が悪くなりパフォーマンスが低下、県道12(メロンロードと並行するもうひとつの正規ルート)走行中に睡魔にも襲われ道端で仮眠までする羽目になったとか。完全にサバイバルである。六ヶ所村宿泊組のひであさんとちばさんも無事ゴールして来ました。
その後新青森駅で三色海鮮丼を食べ、18時に東横インで表彰式。クオリファイアの落合さんはもちろん、櫻井さんも年齢を感じさせないタイムで見事RAAM出場権を獲得。おめでとうございます!
そして大変光栄なことにオマケの走行会部門にすぎなかった私も前に呼ばれ、表彰状を頂きました。ありがとうございます…!
その後自室に戻り、明日に備えて自転車は輪行できる状態にしておきます。
めちゃくちゃ眠くなってきたのでこの日はこれでログアウトです。ばたり。

8月24日
いやぁ。清々しい日曜日の朝ですね!え?今日は月曜日?知らんわっ!たまたま土曜日が48時間だったから今日は日曜日に決まってるだろ!

ロビーに降りて朝ごはんにします。

さすがにRAA関係者がぞろぞろいます。木谷さんもいたのでむつで別れた後のことを聞くと、あの後ペースが上がらず苦しみ、八甲田山を登ったところで仮眠して夜を明かしたとか。私がそんなことしたら寒さで死んじゃいますよ。ある意味強い。
完食後も席でだらだらTVニュースを眺めていたら、落合さんのクルーのひとり、世界の森脇さんがやってきました。ISR1200  4Cというブルベ界でも最高峰にして世界でただ一人の称号持ちその人。去年BRMの神戸600でゴール受付をしてくれて知り合いになっています。「落合さんのあのペースはやっぱりRAAM本番の想定でしたか?」とストレートに聞いてみると、その通りだとの回答。ゴール後も元気に酸ヶ湯へ行っていた様子からの推理でしたが、やっぱり落合さんチームはこのRAAを徹底的にRAAMの予行練習ととらえて、ペースまで5000kmの連続走を想定して走らせていたようです。RAAをワンデーのレースとして走っていた私とは文字通り土俵が違っていたわけですね。もし本気を出していたらどんなタイムが出ていたことやら…。
「それでもソロで24時間15分は本当にすごい。おめでとう」と森脇さんからお褒めの言葉を頂きました。ウルトラレジェンドからこう言ってもらえるなんて、私は夢でも見ているのでしょうか…?

今日は完全にご褒美の観光デーです。JUCAの皆さんをはじめ、参加者等お世話になった皆さんに別れを告げ、ふぃりっぷさんが手配してくれたレンタカーにはくらいさんと共に乗り込んで3人で酸ヶ湯温泉へ向かいます。

酸ヶ湯温泉は強酸性の温泉。疲れた体に効く~!特に打たせ湯が最高。バキバキの首・肩・腰がほぐれるほぐれる…。
……身体がすごく軽くなりました。これが湯治ってやつか。
お昼ごはんをどうしようかと話し合います。近くにあんまりお店無いですねとか言いながらGoogleMapsをいじり、空港への道中に「まきばレストラン」という牧場併設のレストランを見つけたのでここはどうかと提案すると、ふぃりっぷさんが「よし行こう」と勘で即決。

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で、やってきました「まきばレストラン」。ロケーションがすでに最高ですね。
メニューはパスタとピザなどイタリアン中心。私はカルボナーラを注文。
サラダとスープはご自由にお取りくださいとのこと。え、まじかおかわり自由なのか。

うっま!なにこれ美味い!ふぃりっぷさんからマルガリータピザを一切れもらうとこれも美味い!店内にある石窯で焼いてるだけあって生地が絶品だ。

調子に乗ってジェラートも注文。さすがは牧場のジェラート、これも文句なしで美味い。今回の青森旅のMVPはまきばレストランで決まり。また来る。

その後、青森空港まで送ってもらい、一緒に遊んでもらったお二人ともお別れ。神戸への帰途に就きます。

FDAの自転車搭載サービス最高だ(何度でも言いたい)。
1時間半程度フライトし、神戸空港に降り立ちます。暑い…暑すぎる…。

酸ヶ湯温泉のおかげで体力が回復したので空港からは自走で帰ることにしました。これでRAAが締めくくられました。お疲れさまでした。何もなく終わりかけていた夏に、いい思い出が作れました。

長文お付き合いありがとうございました。最後に走行データを記して終わりです。


データ

タイム:24時間15分
走行距離:645.85km
獲得標高:5626m(※下北半島で高度計がバグっていたので実際は6000m程と思われる)
平均速度:28.0km/h(ネット),26.6km/h(グロス)
平均ケイデンス:79rpm
平均心拍:135bpm
平均パワー:151W
NP:167W (パワーウエイトレシオ3.1W/kg)
気温:平均19.5℃,最高24.0℃,最低14.0℃
時間毎の走行距離
1時間目:25.90km
2時間目:32.04km
3時間目:32.96km
4時間目:31.75km
5時間目:29.29km
6時間目:25.00km
7時間目:25.81km
8時間目:25.56km
9時間目:27.18km
10時間目:28.63km
11時間目:23.87km
12時間目:30.81km
13時間目:27.58km
14時間目:16.76km
15時間目:18.54km
16時間目:28.06km
17時間目:27.57km
18時間目:20.41km
19時間目:29.80km
20時間目:30.05km
21時間目:21.68km
22時間目:23.54km
23時間目:25.83km
24時間目:30.79km
25時間目(15分間):6.36km


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