世界大会団体戦の話

お久しぶりです。パズル作家のにょろっぴぃです。

ツイッターを見ている方はご存知の方もいるかと思いますが、ここ1~2年で、リアル脱出ゲームなどの謎解き公演に行く機会が多くなりました。
2019年11月に開催された「ナゾガク」というイベントあたりから定期的に行くようになり、今は大体月2回ぐらいのペースで参加しています。緊急事態宣言で公演が開いた期間があった一方、オンラインのものもあるので、全部で大体50回ぐらいでしょうか。

謎解き公演といっても色んなタイプがあるのですが、パズルばかり出る公演はほとんどなく、今まで参加したものでは「スル?スル!パズル!!(タンブルウィード)」ぐらいしかありません。(間違い探しをペンシルパズルに含むのであれば、1月に開催された「リアル間違い探しオンライン~まちがいだらけの恋~(SCRAP)」も該当すると思います。また、先日参加した「その世界はパズルで出来ていた(ニチョ謎)」はパズル率は高めですが、謎要素もそれなりにありました)

ペンシルパズルはその名の通り、元々は主に紙と鉛筆で解くようなパズルを指します。代表例はクロスワードやスケルトンで、その性質上、皆でワイワイというよりも一人で解くことの方が多くなります。そのため、チーム戦を前提とする謎解き公演よりも、一人で解く持ち帰り謎の方が相性が良く、持ち帰り謎の方が出題率は高めです。
公演でも出ることは出るのですが、上記の例を除いてパズルは主役ではなく、パズルである必要性はないことが多いのではと思います。

ここで、パズル作家であれば考えたことがある方もいると思いますが、パズルを公演に取り込むにはどうすれば良いのか?という疑問が浮かびます。上記の通り、パズル公演、またはそれに準じるようなイベントは少ないので、まだまだ未開拓の領域感があります。


ところで、私が謎解き公演に行くようになった直前の2019年9月~10月に、世界ナンプレ・パズル選手権(以下「世界大会」とします)というイベントがありました。

コロナの影響で、残念ながらここ2年は中止になってしまったのですが、2019年までは毎年開催されていました。世界各国から大体200~300人が集まり、ナンプレやパズルを数日間にわたって解き続ける、世界最大級の競技パズルイベントです。私は2014年から2019年にかけて、これまで5回参加しています。本記事では世界大会そのものの詳細は省略しますが、興味のある方は検索してみてください。


■世界大会団体戦・概要

さて、この世界大会では、個人戦以外に、4人1チームの団体戦が開催されます。世界大会は各国代表として参加するため、日本を含め、選抜大会が開催される国も多いのですが、基本的に4の倍数人が選出されます。日本では、2015年以降は世界ナンプレ選手権・世界パズル選手権共に8人ずつとする形で定着しています。

日本はナンプレ、パズル共に非常に強く、世界でもトップクラスです。大体の年で団体ベスト3に入っています。オンライン大会であるSudoku/Puzzle GPのランキングを指標とした場合、Bチームであっても世界50位以内が目安となります(Puzzleはもう少し高いと思います)
一方で、国によってはそれほどレベルは高くなかったり、そもそも4人集まっていないような国もあります。また、ナンプレ選手権とパズル選手権は別の大会なのですが、一方の代表だけであっても、両方参加する人が大半です。そのため、ナンプレは解けるがパズルはほとんど解けない、みたいな参加者もいます。また、上記の理由で端数が出た場合には、他の国の人とチームを組むこともあります。

また、本大会では、一般のパズル大会と同様に、事前にインストラクションが配布されます。すべて英語で数十ページ、特に団体戦はルールが難解なことも多いため、日本チームでは顔合わせも兼ねて、ルールの読み合わせ会が事前に行われています。また、大会会場でも質疑応答の場が設けられます。

団体戦ですが、30分~60分程度のことが多く、各大会で2~3ラウンドずつ開かれます。難易度は幅があり、全問正解が1チームも出ないラウンドから半分以上が出るラウンドまでありますが、平均は2~3割ぐらいでしょうか。ここら辺は謎解き公演に近いかもしれません(部分点があるため、謎解き公演に比べると、成功/失敗という要素は薄めです)。

■概要まとめ

ここまでの話を踏まえ、謎解き公演との比較でまとめてみると、大体こんな感じになると思います。

・参加者のレベルの幅は大きい。一方、チーム内のレベル差は、参加者全体に比べると小さい。
・大体は同一国のため、その場でチームを組むのではなく、大会中は行動を共にするメンバーで組まれる(団体戦は1日の最後または最終日に行われ、事前に個人戦を数ラウンド行っていることが多い)。
・ルールは事前に配布され、ラウンド前までに読んでいることが前提となっている。また、レベルを問わず、ナンプレ・パズルが好きなことを前提としているため、ルールや問題の難易度は特に初心者配慮はされない。
・問題数や難易度は、ラウンドによって大きく異なる(詳細は後述)
・部分点があり、チームのレベルによって事前に目標を決めることが多い
・人数は大会を問わず、4人で固定
・言語依存の言葉系パズル(クロスワードなど)は出題されない。ワードパズル自体、出題は少なめ。
・競技のため、ヒントなどは一切なし


■団体戦のラウンド紹介

さて、全体的な話はこれぐらいにして、ここからは、実際に大会で出題され、私が参加した団体戦をいくつか紹介します(写真は日本パズル連盟のFacebookサイトより。事前許可取っていないですが許して下さい笑)

団体戦は世界大会のみのイベントのため、個人戦に比べ、各開催国が趣向を凝らした問題が数多く出題されます。個人戦に比べると、純粋な競技というよりも、チーム向けイベントといった側面が強いとも言えます。また、対象の広さからか、どちらかというとナンプレよりもパズルの方がラウンドの内容は個性的です。


・人間チェッカーボード(2014ロンドン)
団体戦は数多くありますが、実際に人間が動いて解いたラウンドはこれが唯一だったと思います。
8×8のチェッカーボードのうち、指定された4マスに4人が立ち、ルールに沿って4人同時に別のマスにジャンプをしました。誰か1人でも間違えたところに飛ぶとその時点で失格で、日本チームは見事失格になりました(苦笑)
盤面の用意が大変だったのか、さすがに、盤面は1つのみ。そのため、対象も上位4チームだけで、各国順番に参加しました。でも、終わった後は色んな人が遊んでいました。

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・4色ペン(2014ロンドン、2015ブルガリアなど)

4人がそれぞれ1本ずつペンを持ち、4色の問題を解きます。個人戦は白黒の問題しかまず出題されないので、カラーの問題は団体戦ならでは。白黒の問題と異なり、間違えると修正しにくいので、慎重になりがちです。

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・ドミノ(2015ブルガリア)

パズル選手権では、ドミノを使ったパズルが出題されることがあるのですが、ここでは何と実際にドミノのパーツが配布されました(ラウンド後、おみやげになりました)。
それぞれが1問ずつ解くと余ったパーツが出るので、それを使って最後の5問目を解けば完答です。問題自体が難しかった気がします。

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・Coded Link(2015ブルガリアなど)

問題が大量にあり、盤面の一部のマスに同じ数字が入ることが分かっています。それを手掛かりに各問題を解いていきます。謎解き公演でもありそうな、オーソドックスな形式です。他にも、盤面の一部が共有されていたりする場合もあります。

「情報共有と役割分担」がとても重要で、最初は大体得意なジャンルから手を付けていきつつ、情報を共有していきます。
写真は実際にこのラウンドの際に使った一覧表。事前にインストラクションが公開されていて、A~Zまであることが分かっていたのですが、某メンバーが準備してくれました。確か、このラウンドはギリギリで完答だったので、この表がなければ時間切れだったと思います。

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・スクラッチ(2017インド、写真なし)

盤面がスクラッチになっていて、コインで削りながら解いていきます。チーム戦ながら、使えるのはコイン1枚のみでメモ禁止。しかも、間違ったところを削るとスマイルマークがあらわれ、その時点で、その問題は誤答扱いになる、という心臓に悪い仕様です(笑)
問題は7問ありましたが、強いチームでも5問ぐらいしか解けない難易度で、問題は難しめでした。問題は理詰めで解けますが、最後の1問になると時間の兼ね合いで、誤答覚悟でカンで削ったりしだします。


・カシミヤカーペット(2017インド、写真なし)

8×8の問題の代わりに、1×8の紙が8枚と、8×1の紙が8枚配られます。これを下から順に交互に重ねて盤面が成立するようにします。パズル度の高い某持ち帰り謎で、4×4で似たことをやる問題がありました。
8×8~11×11の4問ですが、見るからに難しそうなルールで、40分で2問しか解けませんでした(笑)その代わり、紙の位置さえ合っていれば部分点が付くようになっていました。1問も解けないチームも続出だったと思います。


・立体パズル(2019ドイツ)

木の板が配られるので、その場でカップを組み立てつつ、ナンプレ6問を解くラウンド。その場でナンプレの組み合わせを考えないといけないため、見かけに反してかなり難しく、全答したチームはごくわずかでした。あと、とにかく書きにくい(笑)

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・チェーンで繋がったペントミノ(2019ドイツ)

団体戦ではなく、上位4チームによる団体プレーオフで使われた問題です。上位4チームのみが参加するため、問題は非常に難しかったです。
写真では分かりにくいのですが、手前のテーブルに、ペントミノを使う問題が印刷されています。個人戦ラウンドをクリアすると、紙をめくることができます。ここで特徴的だったのが、ペントミノ(各ペントミノが2個ずつ)が針金のようなもので繋がっていたことで、要するに、ペントミノを置ける最長の長さに制限がついていました。もちろん、この長さの制約を使わないと解けません。

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ここに紹介したもの以外だと、大きな盤面が出題されてみんなで解く、何問か出題されて分担して解くなどのラウンドが多いかなと思います。


以上、世界大会の団体戦紹介でした。
見てると解きたくなりますねー。来年も世界大会が開催されるかは分からないですし、こんな感じの内容を、うまくイベントの形に落とし込めたら楽しそうです。

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