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ラッキー体質の話

1
私は運がいい。

私自身が「運がいい」と思っているのであるから誰がなんと言おうと運がいい。
 若い時よりも断然幸福で、充実度が高い。
 

…とはいえ、これはヤケクソ体質改善の成果である。

2
 20代の半ばにあって私は短い繁殖期を終えた。
21歳の頃に卵巣腫瘍を、26歳で卵管炎を患った。二つとも手術をし卵巣を失った。そのときの絶望感はもうトレースできない。
大事な20代~30代は、体調不良と動揺で終わってしまった感じがする。

 昨今は多様な価値観が重要視される時代となったけれど、女性の市場価値がまだ生殖と直結していた平成の初めの当時は「嫁の貰い手がない」と言われた。


 30代の初めには完全に生理がまり、パッと見では健康体に見えるのに反して閉経後の抑うつはひどいもので薬を飲み飲み働いた。体重の増減も酷かった。
 この頃は今に比べてだいぶ不幸な気分でいた。

 結婚前は「いつ結婚するんですか」結婚後は「お子さんはまだですか」と聞かれた。同僚から、教え子から、保護者から。
「残念ながら、病気をしたので」というと急に気まずい空気になる。
 子供を産まない決断をした人と、産めない人とではだいぶ違う。私は後者なので毎回苦い思いをしたものだ。(聞かれた方は、うるせえお前ら全員死ね、と思うから基本的にはこういう質問をするべきではない)

 子がいないことはそんなに「かわいそうな」ことなのか。
 自分の価値については自分が決めていいはずなのに、時々そうした考えに引き摺られ、自らを卑下する瞬間もあった。


これには腹が立った。
だから
1 得意なものを一つでも多く増やし、自分自身を支える分野を見つけること
2 自分自身の中に楽しみを見つけること
3 普通の女性よりも老化が早いであろうから、健康に関する知識を身につけ、運動をし、骨と筋肉をつける努力をすること
4 自分の心持ちや行動を言語化をしておくこと

の4つに注力する事にした。

 

3
幸も不幸も光の当て方の違いだ。
気象による陰影の違いによって景色の姿は変わる。
これは光源の角度の違いによるものだ
 今、私が見えている景色に別の光を当てたなら、もっと美しい絵になるのではないか。だから私は全てのいい面に光を当ててやる。


 幸い得意分野を磨いたおかげで配偶者には恵まれたと思う。彼もまた稀な得意分野で生きる人なので利害が一致したというのもあるのかもしれない。

でも、結局のところ(配偶者の有無や性格などではなく)自分の幸せは自分自身で築いていくしかないのだとわかった。

悲しみに浸ろうが愉快に過ごそうが、同じく時間は過ぎる。
暗い部分に光を当ててもどうにもならない。
 
 もうこんなどんよりした時間を過ごしてはいけない。
不幸な気分に浸かっていると死ぬまで不幸な人間になりそうな気がした。

不幸な人間の思考回路とはこうだ。
どんなに優しくて性格のいい配偶者に恵まれようと、
自分には分不相応であり、釣り合わない。なぜ彼は私と結婚などしたのだろうか?と恨みがましく思ってしまう。
当時の自分はそうだった。とにかく何もかもが「不足して」見えたのだ。


4
一つの現象を増幅させて“ラッキー”な人間になるのだ!と決めたのが2006年ごろ。自分の正しい取扱説明書を作り、快適な環境を作ることから始めた。

・いいことも悪いこともあることを知る
・物事に対する「考え癖」について理解する
・嫌なことがあったら我慢せず「嫌だったこと」を徹底的に分析して、次に似たことが起こったら早めに対策する
・問題が生じた時の選択肢を最初に用意しておく
・なるべく良い面に光を当てて言い換える
・何か行動起こす前にとりあえず神社でおみくじ引いたり、タロットカードをひく
・しょんぼりしたらいい入浴剤入れて浸かる
・直感に従う
・今まで通ったことのない道を歩いてみる
・「願いごとノート」を書く
・優先順位をつける
・集中して作業する
・金銭を稼いだら三分の一程度は投資に回す

などなど。

しょうも無さそうだけど、できそうなことはほとんどやった。色々本も読んだ。

ヤケクソである。


これらは結構効果があってだんだん「ラッキーとアンラッキーの潮目」が見えるようになってきた。なんというか「運が悪い」とか「運がいい」と言った流れのようなものがはっきりとわかる。また運が悪い時も結果を焦らず観察することができるようになった気がする。
 
こうして若い頃の病気を振り返ると「案外ラッキーだったのでは…」とさえ思えるから不思議だ。
あんなに泣いて暮らしていたのに。
今なら若い頃の自分に優しく声をかけてあげられるのに。



6

 そんなこんなで私はかなり運がいい人間になった。
いつの間にか「めっちゃツイてる!」が口癖になった。

 仕事も「こういうのどうですか」と誘ってもらえたりするし、人からも親切にされる。不意にプレゼントやオマケをもらったりする。先週はデッサン会の方からコーヒー豆をもらった。奄美大島からタンカンが届いた。
 私自身、まあまあ親切なのだろうと思う。少なくとも邪魔にはされていない。
ありがたいことだ。


 最近のラッキーといえば、今年の京都滞在だと思う。
この歳になって遠方に暮らすなんて夢のようだ。
短い滞在だから絶対に元気に過ごしたい、Covid19には絶対にかかりたくない、いい物件を見つけてうまいこと無事に引越しをしたい、滞在中にいっぱい勉強したい、などの思いで御百度参りをはじめたんだが…


なんと!
今日突然新しい仕事の依頼があった。
家から歩いて10分弱!

 むむむ、今年の私はツイている。正月以来、大吉が続いているし、いろんなことが上手い感じに回ってる気がする。こういうスパイラルになったときは乗っかったほうがいい?かもしれない。
 チャンスの神様は前髪しかないらしいので、来週面接(打ち合わせ?)に行くことにした。(でも、あまり無理はしない、直感でダメならだめ)

上手くいきますように!




  

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