才能がない人間は諦めたほうが幸せなのか?
ヤフーニュースでこんな記事がランキング上位にあった。
実際に番組を見ていないので、どんな文脈やトーンで話したのかは分からない。
おそらく半分冗談みたいな感じで話したのだろう。
ただ引用部分だけ切り取って判断すると、(僕が勝手に松ちゃんのライバルだと思っている)太田光の考えとは対称的であるように感じた。
ちなみに太田光の考えというのは以下の記事で語られている。
彼は後輩芸人のネタにも絶対にダメ出しはしないという。
30年以上もお笑い界の前線で活躍していながら、なお謙虚であり続けるこの姿勢には頭が下がる。
松ちゃんの話も分からないではないのだが、個人的には太田光の考えのほうが好みだ。
(バラエティ番組内での発言なので比較するべきではないかもしれないが)
ところで冒頭の記事に対するコメントを見るとこんなものが散見される。
これはお笑い業界に限らずよく目にする「夢追いフリーター」に対する考えだ。
しかしこの考えには3つの疑問点がある。
1.才能の有無なんて分からない
1つは、才能があるかどうか判断できる人間なんているのだろうか?という疑問だ。
たとえば『らんま1/2』や『犬夜叉』などで有名な高橋留美子は、かつて週刊少年ジャンプに門前払いされた経験がある。
また『進撃の巨人』の作者である諫山創もデビュー前にジャンプに持ち込みしたものの、編集者に酷評され落とされたという。
このような例はジャンルを問わず枚挙にいとまがない。
要するにその道のプロですら判断を誤ってしまうのだ。
何がヒットするかは誰にも分からないのである。
2.ふつうの人生って幸せなの?
2つ目は"ふつうの人生"が幸せなのか?という疑問だ。
彼らが言うふつうの人生とは、おそらく企業勤めのサラリーマンの人生を指しているのだろう。
サラリーマンといえば僕が一番に思い浮かべるのが自分の父親だ。
うちの父親は有名企業の社員で、世間的にはいわゆる"勝ち組"と呼ばれるような職業だった。
世間的な価値観からすれば社会的地位も高く、収入も十分ある。
だが実際に父親の生活を間近で見ていると、本当にこれは"勝ち組"なのか?と思わざるを得なかった。
父親は毎朝7時に家を出て、夜遅くに会社から帰宅する。
その後しばらく愚痴を吐き続け、食事をしたらすぐに寝る。
寝て起きたらまた会社だ。
そんな父親の姿を見て、
「僕にはこんな生活は耐えられない。絶対に会社員にはなりたくない」
と子供ながらに思った。というか今でも思っている。
(もちろん父親の働きのおかげでこれまでの生活があることは理解している)
父親が幸せだったのかどうかは本人にしか分からない。
だがもし僕が同じ境遇だったら、その生活を僕は幸せだと感じないだろう。
もちろんそうした生活が誰にとっても不幸だと言うつもりはないし、良い悪いを言いたいわけでもない。
要は"ふつうの人生"を幸せに感じる人と感じない人がいるという話だ。
だから
「普通の人生を送ったほうが幸せになれる」
なんて語っている人を見ると、
「なんで君に他人の幸せが分かるの?」
と思ってしまう。
3.売れていない芸人は不幸なの?
3つ目は売れていない芸人は不幸なのか?という疑問だ。
人気のない芸人はお笑いだけでは食べていけないため、たいていバイトをかけもちしている。
彼らの収入や社会的地位はたしかに低いのかもしれない。
大多数の芸人はこの先も一生売れることがないだろう。
だが自分の好きなことをやり、少ないながらも自分の芸を楽しんでくれる客がいる。
仮にこの先ずっと"成功"できなかったとしても、今の生活そのものが十分幸せなのではないだろうか。
彼らのような生き方も立派な人生のあり方なんじゃないだろうか。
少なくとも彼らの人生を他人が不幸かどうか決めるのは間違っているように思える。
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