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2024年2月の新譜記録

こんにちは!タイトルの通り、私が2月に聴いて良いなあと思った新譜について、感想とともにまとめておく記事です。

良かった新譜

アルバムタイトルからsongwhipのページに飛べるので、気になった方はそちらからどうぞ!

1624 - No Buses

やるせなさや怒りを単純な絶叫や爆音による発散に捨象せず(あるいはできず)、ミニマルなパーツが重なり合う構造に託す作風がこれまで以上に明確になった、言ってしまえば非常に内に篭った作品だと感じました。しかし「人を寄せ付けない」というわけでは決してなく、むしろそのパーツを奏でるギターやシンセリフの臆病ともストイックともつかない手つきに、伏目がちにも何かを見つめ続ける人間性が垣間見える。そんな切なさもあり。Cwondoのソロ活動とも通じる唯一無二の作風がさらに突き詰められた一枚です。

There Must Be Something Here / acloudyskye

精巧に作られた箱庭やミニチュアを見るのが好きなんですが、それと似たようなものを感じてかなりグッと来るアルバムでした。パーソナルかつ精緻に構築された楽曲世界の箱庭の中で壮大な物語が展開されるようなインディートロニカ。どことなくポーターロビンソンを彷彿とさせるし、あとジャケットも含めてインディーゲームのサントラっぽい。

eimi - vai5000

光り輝くノイズの宇宙を漂いながら、遠くから響く歌声に吸い込まれていくような、神々しさすら覚える傑作。昨年に別名義でリリースしていたニンテンドー3DSへの郷愁にまつわるコンセプトアルバム『system BIOS』が非常に好きだったのですが、そちらが過去からの光に照らされながら伸びる影を見つめるような内容だったのに対し、本作はむしろ大いなる光に包まれて救済され、安らぎの中で全てが終わるような作品でした。そこではきっと3DSにも再会できるのでしょう。

GLOOM DIVISION / I DON'T KNOW HOW BUT THEY FOUND ME

この偏屈そうなポップセンスとユーモアがたまらない。2018年作のデビューEPが非常に好きで、そこからフォローしていた人たちです。80sのポップスやハードロックへの憧憬が明確で、その点daft punkを想起するポイントも多いのですが、彼らよりはもうちょっとフザけていて、あえてそれをチープで大味なインディーロック/ディスコに落とし込んでしまう捻くれ具合が愛せます。ベードラのデュオなだけあってグルーヴあります。

Body Meets Dress - Blumepopo

ちょっとザラついてハスキーなボーカルがとても好き。現実でない世界を夢想するようなドリーミーな音使いでありつつ、同時にずっと破裂しないままの緊張感も漂う、逃げたいのに逃げられない、地面から少し浮いたところで足首を掴まれているような感覚になる作品でした。M3「逃現郷」というタイトルはまさに。

汽笛の海 - Tiroru

「歌」と「曲」そして「音」の境界を曖昧に漂いながら、「煙」「水」といった曲名が示す主題のイメージを脳に直接流し込むような作品。「点滴の庭」とかよくわからないけど聴いているとそんな気がしてくる。曖昧な形だった音がゆるやかに「歌」の形を取り始めたときの柔らかな心地よさが印象的でした。3月に行く予定のライブに出演されるそうなので、そちらも楽しみです。

What Do We Do Now - J Mascis

どこまでも素朴で優しく、田舎の昼下がりの青空が目に浮かぶような、いなたくも爽やかなアルバム。この人、みんなのギターヒーローでもあるけど、それと同時に良い曲を書いて良い歌をうたう人でもあるんだよな〜ということを思い出す作品でした。

Two Star & The Dream Police - Mk.gee

何かがバグった平行世界のR&Bを聴いているような気持ちになる一枚。全体的に遠くの方から聴こえてくるような、輪郭の掴みきれないボヤけた音像で鳴らすキャッチーなメロディと豊かなグルーヴが、聴き手をゆったりと夢見心地へ誘います。Unknown Mortal Orchestraにも通ずるキッチュなサイケデリアを感じます。

Where we've been, Where we go from here - Friko

各所で話題になりまくってました。個人的に、インディーロックは概して好きなんですが、いわゆる00年代のUSインディーに関しては理解が抜け落ちている節があり、本作に絡めてArcade FireやBright Eyesといった名前が走るTLを見るに皆さんと同じ熱量では感動できないかもな〜と思っていて、実際それはそうなのかもしれないんですが、そういうのは傍に置いておけるくらいマジの気持ち良い音が鳴ってました。音楽的な面白さ、それでも洗練されすぎていない演奏、溢れるエネルギーにちょっとのやけっぱち具合と、インディーがインディーたる魅力が詰まった一枚だと思います。M8 "Get Numb To It!" は大名曲。

Volume 9 - Bardo Pond

21分超の大作 "War Is Over Pt.2"(M4)が本当に凄すぎる。スロウコアにしてもゆっくりすぎるくらいにゆっくりと、霧の湖に浮かんで漂うような幽玄な演奏を体に染み込ませたのち、10分を過ぎたあたりから徐々にヒートアップして、気付いたら大海原で太陽を眺めていたような爆音の大団円に到達しているカタルシスはこの上ありません。出音が本当に気持ちよくて、ほぼ同じパターンの上でインプロを繰り返しているだけなのに、ずっと聴けてしまいます。最高です。

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2月はこんな感じでした。あとはStop Making Senseの4KレストアとOPNの来日公演がマジでよかったです。


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