はじめての競艇、はじめての賭け事。

運任せ。みたいなのが結構好きだ。

くじ引きのたぐいはいくらハズレの確率が高くても100%ワクワクしながら引くし、ポケモンの技だと「つのドリル」「ゆびをふる」が好きだった。

日常生活でも「ええい、一か八かだぜ! オリャーーー!!」みたいな選択をすることが少なくない。

そのくせに本格的に金を賭けるタイプのギャンブルをやったことがなかった。

なぜなら日常的に「ええい、一か八かだぜ! オリャーーー!!」な選択をするような性格なので、本格的に金を賭けるギャンブルにハマると俺は100%熱くなり身を滅ぼすタイプだろうなと思って今まで避けてきたのだ。せいぜい時々気まぐれに宝くじを買う程度だった。

前置き終わり、以下初めて競艇場に行った話。


昨日久しぶりに友人たちと遊ぶことになり、目的地も決めないまま友人の車でウロウロしていると目の前にボートレース場が見えてきた。ボートレース福岡だ。福岡には競艇場があるのだ。

「行ってみたくない?」と、友人が言う。

「行ってみたい」と、もう一人の友人も言う。

ちょうど今日はレースをやっている日らしかった。

俺もギャンブルを避けていただけで競艇に興味がないわけではない。むしろ興味津々だ。人間がボートに乗って競争するんだぞ、面白いに決まってる。それにボートレース場の中がどうなっているのかも見てみたい。

「行ってみよう」

ということで初めて競艇場に行ってみることになった。

駐車場に車を置き、いかにもそれらしいおっさんたちの流れについていくと船券を買うところにたどり着いた。

まあ、せっかくなので! せっかく来たし! ボートレース場をフルに楽しむために! あくまでも記念に! 数百円分くらい賭けてみてもいいだろう! 熱くならない程度にな!

と自分に言い聞かせ、次のレースの船券を買ってみることにした。買ったのは2連単の1-2。100円分。

2連単とは一着目と二着目のボートを予想する買い方で、この場合は

「1番のボートが一着で2番のボートが二着になるんじゃねえの」

という予想になる。

なぜ1-2にしたのかというと、俺には競艇知識が何もないので予想もクソもなく単純にそこにある数字を若い方から並べただけだ。

これと、2連複で100円分適当に買った。2連複とは一着目と二着目の船を当てる点では2連単と同じだが、順位は問わない。たしかそうだ。

予想を記入したマークシートを持って券売機に並ぶ。マークシートを券売機に突っ込もうとするが入らない。なぜだ。生意気な機械め俺を受け入れろ。

よく見たら先にお金を入れてからマークシートを入れよとある。

ちょちょちょちょっとウッカリ間違えただけだしィ〜〜〜〜みたいな顔をしながら100円玉を2枚入れ、マークシートを差し込んだ。すぐにピカピカの船券が出てきた。


船券売ってるとこを出て、入り口のゲートへ向かう。ねとらぼのルーツさんの漫画で見たやつだ。100円玉直接入れるやつだ。読んでてよかったルーツレポ。


中に入ってから気がついたが、中にも船券の券売機がたくさんあるから入場してから買えばよかったのだ。さっきのは入場せずとも券が買える場外券売所だったのだ。

レースまで施設内を歩き回る。結構人で賑わっており、活気がある。活気があるにはあるが、なんだか空気が淀んでいるぞ。広く開放的な作りの施設なのに、なんだこの空気のどんよりとした淀みは。

ああ、この淀みはアレだ。俺が好きなアレに似ている。

格安のカプセルホテル特有の空気の淀みに似ているんだ。前に一度行ったストリップ劇場のロビーの淀みにも似ている。

あのタイプの、独特なたまらない淀みがある。俺はあの文字にしがたい淀みが大好きだ。

いつか「淀み」をテーマに記事を書きたい。おすすめ淀みスポットみたいなの。

ボートレース場は特にレストランや売店の淀み具合がたまらなかった。いや、あれはレストランなんて横文字は似合わない。食堂だ。食堂と呼ぶのがふさわしい。

淀みを堪能しているとレースが始まりそうになったので急いで観覧席へ向かった。

観覧席はほぼほぼ埋まっていたが、なんとか座ることができた。あらためて客層を観察すると80%がおっさん〜おじいさんに見える。しかもその半分くらいがなぜか示し合わせたかのように黒いキャップか淡い色のハンチング帽をかぶっている。本当に多い。おそらく、これが競艇場ファッションなのだろう。


そうこうしているうちにレースが始まった。何が何だかわからないうちに始まった。

非常にバカみたいな感想だが、ボートがすごい速さでグルグル回っていてなんだか楽しい。

そして何が何だかわからないうちに次々とゴール。結果は一着が1番、二着が2番のボートだった。

2連単当たってんじゃん。

まさか「数字が若い順に、1と2」なんてクソ適当な買い方をして当たるなんて思ってなかったので思わず興奮してしまった。これが噂に聞くビギナーズラックというやつか。

早速船券を近くの券売機に入れたら勝ち分が払い戻された。

ドジャーン、千二百円くらい。

どうせならもっと賭けておけばよかったと思ってしまうが、これはおそらく良くない感情だ。100円かけたのが1200円くらいになったのだから満足すべきなのだ。

しかし少額とはいえ、ギャンブルでお金が12倍程度に増える体験をしてしまった。いや正確には外れた2連複分の100円も勘定に入れると6倍程度だし、ついでに入場料の100円も入れると4倍なんだけど、それでも4倍だぞ。

4倍ってすごいぞ。人間の腕の本数が4倍になったら8本腕になることを思えば4倍のすごさがわかってもらえると思う。

お前、ボートレース場め。おのれ、おのれボートレースめ。チクショウ。


無職になんて成功体験を植え付けてくれたんだよ。


今後俺は事あるごとにこの体験を思い出すだろう。でも負けないぞ。

ぜッッッッたいにハマらないぞ、絶対にハマらないからな!!!!!

でもボートレース場は楽しかったのでまた時々遊びに行きたい。入場100円だし、船面白いし。淀んでるし。

でもぜッッッッたいにハマらないぞ、絶対にハマらないからな!!!!!

絶対だからな!!!!!!!!!!!!

俺がハマりそうになったら、ぜッッッッッたいに止めてくれよな!!!!!



次のレースも同じような感じで賭けてみたけど外した。俺のビギナーズラックは尽きた。

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