しばらく前にこんな本を手に入れた。

　高橋鐡編著『人性記　日本インテリゲンチャ一千名の懺悔録』あまとりあ社

　性に関する統計データと事例をどっさり紹介した本だ。
・性交を知った年齢や原因
・初性交について年齢や事例
・自慰について
・性の目覚め
　などについてデータと実例をドサドサ紹介していてめちゃくちゃ面白い。

　俺もデータ収集が目的ではないものの精通エピソード集『みんなの精通』女性の初自慰エピソード集『その頃女子は』などを運営していたのでかなりシンパシーを感じる。

　一応Amazonにもあった。すごい値段がついている。俺は運よく古書店で1000円くらいで買えた。

　奥付けページ。初版は昭和27年。戦後GHQが廃止され、日本の主権が回復した年らしい。初版発行時点ではギリGHQの支配下。めちゃめちゃ重版されているところを見るといっぱい存在するはずなので皆さんも古書店とか探すと見つかるかもしれない。

　性の統計データといえばアルフレッド・キンゼイ氏のキンゼイレポートが有名だが、そのキンゼイ氏からも本書に言葉が送られていた。日本版のキンゼイ・レポートと言っても良いかもしれない。

　とはいえみていただければわかる通り、めっちゃめちゃ昔の本だ。つまりデータもかなり古い。インターネット普及の前後で性、特に自慰に関するデータは大きく変わっているはずだ。

　そこでこの本のデータと俺が『みんなの精通』『その頃女子は』で収集したエピソードから得られたデータを比較したら面白いんじゃないのか。と思ってこの記事を書き始めた。

　しかしこれだけのデータがあるのにも関わらず、本書には『精通』に関するデータは残念ながら記載がなかった。唯一比較が出来そうなデータは『女性の自慰と絶頂について』だ。

　右の表は「女子が自慰を始めた年齢」そして左の表が「強い性感(絶頂とは書いてないけど多分絶頂？)」を感じた年齢を表している。どちらもソ連のツバンコフ氏による調査だ。何人分のデータなのかがわからない点が不安ではある。

　これはアメリカのハミルトン博士による「強いアクメを得た時期(初めて絶頂した時期)」のデータだ。

　ナ月調べによるデータはこちら。データはこの時のやつだ。

　表にまとめたものがこちら。

　まず初自慰について考察していこう。一見全然違うように見えるが、これは年齢区分の仕方によるところが大きい。「10歳まで」という括り方をすればどちらも「10歳までに経験する」のが圧倒的多数にはなる。ちょっと乱暴すぎる区分だろとは思うが。
　いやこれツバンコフ氏のデータは全然足りねえんじゃないの、これ11歳とか12歳はどこに入るのよ。ネットもない時期にデータ集めるのがスゲー大変なのはわかるけどよ。『人性記』でも甘いよねって言われてたし。

　そして初絶頂のデータはこちら。こちらも年齢区分の仕方でかなり違って見えるが、共通点がないわけでもない。ナ月データをハミルトンに習って「6-11歳」で括るならば同様に圧倒的1位になる。その場合ナ月データの2位は5歳以前となるが、ツバンコフデータにもハミルトンデータにも5歳以前が1人もいないのが気になる。

　ツバンコフデータはさておき、ハミルトンデータは69名分からなることが本書より分かる。多くはないが、全く無意味なほど少なくもないだろう。あえてこれらのデータを鵜呑みにするなら、女性が5歳以前に絶頂を体験するのはかなり近年になってから見られる傾向と言えるだろうか。あるいは日本にのみ見られることなのか。

　何にせよナ月調べを含むどのデータも確実とは言い難いので「かもね」程度に思ってほしい。
　ツバンコフ、ハミルトンデータは母数が少なく、ナ月データは「投稿したい人しか投稿してない」「自慰も絶頂も経験してない人がデータに含まれていない」ためである。

　結果としては「昔も今もデータは似てるといえば似てるけど、昔のデータはあんまり当てにならないしナ月データもそれほど確かとは言えないからあんまり意味はないよね」という物だった。

　ツバンコフデータ、ハミルトンデータに限らず、女性の自慰に関するデータを集めることはかなり難しいことが『人性記』で触れられていた。回答してくれる人がそもそも少ないことの他、嘘や記憶違いが多く含まれるためだという。匿名性が高いインターネットを用いた調査でも同様の問題があるのに、匿名性が低い手段しかない時代の性のデータ収集は大変困難であったことが窺い知れる。
　俺はインターネットが使えるだけ恵まれている。

　この記事を書くためにこれ(下のやつ)を読み返して、このまま埋もれさせておくには惜しいなと思ったので今から無料にする。投稿エピソードがめちゃめちゃ面白いから読んで。めちゃめちゃ良いから。

　あとみんなの精通買って。