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クリスマスに小田急沿線の松屋で牛丼を頬張るカップルを見ながら、表参道でクリスマスディナーをする20代カップルのペルソナを書く時が来たらどうすればいいのか悩んだ

いまぼくは小田急沿線のとある駅のエクセルシオールカフェの、分煙がそこまで徹底されていない店舗の隅の席でグランデサイズのコーヒーを啜りながらパソコンと向き合っている。

世間的には今日はクリスマスイブ。今日はあちこちでカップルを見かける。こんな日に外でご飯を食べようとすると、どこも非常に居心地が悪い。好きな喫茶店や近くのくつろげる少し洒落たお店はカップルだらけだし、こんな日に僕に優しくしてくれるのは松屋や富士そば、チェーン店くらいだと思う。

お腹も空いていたし、たまたま近くにあった松屋に滑り込んだのだけれど、なんとそこにまでカップルがいた。勘弁してほしい。

外見から推測すると大学生には見えないが、20代前半くらいだと思う。男女ともに地味めで、おそらく近所に住んでいるであろう服装だった。男のほうは黒のダウンジャケットにダメージ感がややるデニム、若干寝癖がついた髪、剃り忘れた髭、地味めのスクエアフレームのメガネ。女のほうはカーキのミリタリージャケットに黒のややスキニーめのパンツ。こちらはやや丸みのあるメガネ。ボストンタイプというんだっけか。

なんだか楽しそうに二人は牛丼を頬張っていた。最初は、なんだか地味なカップルだと思った。クリスマスイブなんだから、こんな日は二人でお揃いのセーターでも着て、表参道のカフェでもいって、そこまで美味しくもないラテでも飲んどけと思った。それでその後、東京カレンダーで調べたおしゃれなレストランで味わからんままディナーでも食っとけと思った。

そんなことを思いながら松屋のカレーに口をつけようとしたとき、ハッと気づいた。自分が思わず毒づいたこの典型的なカップル像がいわゆる世間のカップルの当たり前みたいな想定でいたけれど、実は本当はこっちの松屋で牛丼を食べているカップルのほうが本当のリアルなカップルなのかもしれない。

ちょっと前にグラミン銀行が日本に入ってくると聞いて、僕は震えた。日本はそこまで貧しくなったのかと。そして是枝裕和監督の「万引き家族」を見て「あ、これはフィクションでもなんでもない、本当にこういう人たちがいて、増えてきている、本当にリアルな話なんだ」と思った。

だから、広告会社や大企業が商品開発のときにつくる20代のペルソナ、いわゆる情報感度が高くておしゃれな服を着て、クリスマスに表参道でディナーをする20代カップルだなんて全然リアルじゃないんじゃないかと思った。いや、そういう人は一定数いるんだろうし、実際ぼくの会社のお客さんたちの商品を買ってくれる人たちはそういう人なのかもしれないけれど、ペルソナとして描かれすらしない、クリスマスイブに牛丼を食べている人たちもいることを忘れちゃいけないと思った。

クリスマスに牛丼を食べるカップル、スーパーで買った惣菜を家で食べるカップル、彼氏や夫が仕事で夜遅く帰ってきて0時くらいにこじんまりとケーキを二人で食べるカップル、そういう見えないリアルな人たちのことを知らずに書いているペルソナなんてリアルじゃないし、僕はそういう人たちがいることを知らない人間を信頼できないと思った。

みたいなことを言いつつも、そのカップルも実は去年まで表参道でディナーしていたかもしれないし、本当は人のことはわからないんだけれども。とにかく1つ言えることは、クリスマスに一人でパソコンと向き合い続けているとこんなわけのわからない文章を書いてしまうということだけ。


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