新人・若手弁護士向け メモ

※とある会合の講師で呼ばれたときの手控えを改訂したものです。今後も気まぐれに改訂します。(最終改訂2018年4月18日)

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第1 一日も早く戦力になろう

1 当たり前のことはできているか?

きちんと声に出して感じよく挨拶をする、お礼を言う、返事をする、周囲に感じよく接する。落ちているゴミ、輪ゴム、クリップ等を見つけたら拾う。コピー機のふたが開いていたら閉める。時間を守る。失礼をした人にはきちんとお詫びをする(謝ったら死んじゃう病にかかっている弁護士は意外と多い)。

2 自分の外見や雰囲気に注意を払おう

弁護士に相談に行くなら、やっぱり出てくる弁護士は弁護士らしくあってほしいのではないだろうか。医師の白衣効果は弁護士にも該当するのではないか?※美輪明宏やマツコデラックスはなぜあのような服装をしているのか?

事務所のカラーもあると思うが、自分が周囲からどう見えているのかを考えてみる。服装は即効性がある。

身なりがだらしない人はそれだけで損をしている。高級品である必要はないが自分が安っぽく見える外見にならないよう、髪形なども含めてよく考えてみる。

3 話し方も実力そのものである

人は、内容以上に、雰囲気や話し方を重視する生き物である。

口論も、内容よりも嫌な言い方がきっかけだったりする。

だから、正しい内容と同等以上に正しい話し方・正しい言い方ができるようにしたい。

「自分は正しいことを言っている、それが分からない相手が悪い」「物わかりの悪い相手のせいで交渉がなかなかまとまらない」と言っても仕方がない。

相手に対し、適切な話し方で、きちんと自分の内容も伝えられる人と、話し方や伝え方に無頓着な人とでは、成果は雲泥の差となる。

交渉場面だけでなく、依頼者との関係でも同じである。人は話の内容以上に話の雰囲気を見ている。人を不安にさせる話し方をしていないか?この人に任せれば何とかなると思わせられる話し方ができているか。

話し方は受任率(受任数/相談数)に直結する。処理の腕が良くても依頼がなければ腕を試す機会がない。
※最強のボクサーでも試合を組んでもらえなければベルトは手に入らない。

腕を発揮する機会が減ることは、経験の少なさにもつながり、結局は弁護士の力量そのものにも悪影響が出る。事案の聞き取り、尋問などでも経験の少なさは大きく影響する。

4 ボスにここだけは負けてはならない

実力で勝てなくても、熱意とその事件にかけられる時間では勝負できる。

担当事件の記録内容の把握、記録の検討、調査の深さではボスに絶対負けてはならない。
※「この件、こういう証拠はなかったっけ?」「あれ、依頼者はこういう風に言ってなかったっけ?」と言われて「えーっと・・。」とはなって欲しくない。新人でもプロである。記録の読み込みで負けるのはプロとして本当に恥。

初心を忘れずに常に一生懸命やる。その分、きっと実力も早くつくし、一生懸命な人は支援や助言ももらいやすい。

5 改善力・修正力を高める

よい点はどんどん自分のモノにする。改善点はすぐに修正する。

よい点をとり入れることは顧客・事務所・自分、すべてのためになることである。どんどん提言して事務所を良くしていく。

相手方弁護士のうまいやり方を自分のモノにする。同期と情報交換をして色々な事務所の色々なやり方を知る。

言われたことはどんどん直す。ボスの助言は、経験がある分、新人である自分で考えているよりは正しいのだろうと推定して、いったんは素直に聞くべきである。助言があるときは、その弁護士の経験や考えがあってしているのだから、ひとまずは素直に改善した方がよい。

6 ボスのまねをして、やり方や考え方を身に着ける

マネをして「型」を身に着ける。 仕事がうまい人は「黄金パターン」を持っている。それを見抜いてマネして自分のものにする。ワンパターンでよい。「黄金のワンパターン」「黄金の勝ちパターン」をまずは身につける。

※18代目中村勘三郎「型があるから型破りが出来る」「型が無ければ単なる形無し」。

7 時間と能力配分

打ち合わせ前に「この部分を打ち合わせで明確にする」「この打ち合わせで依頼者の方針が今後ぶれないよう、今の方針が最良であることを心の底から理解・納得してもらおう」などと、きちんと目的・ゴールを定めておく。そうすれば、話がブレない。

時間は締め切りを作る。修習生時代の即日起案もそうだったが、締め切り内に出来るだけのものを一応作ることは極めて重要。

絵に完成はない。直そうと思えば永久にどこか直すところがある。我々の書面は芸術作品ではない。結論に至るための工夫は必須だが、結論を左右しない部分にこだわって他の仕事にしわ寄せをきたしてはならない。時間と自分の能力は有限だということを肝に銘ずる必要がある。

8 チャンスが来ないのはボスへのアピール不足

ボスはランダム配点のようで、その人の能力や人柄を見ている。やりたい事件はやりたいと言う。

「いつまで経ってもショボい案件ばかり配点される」「自分には難しい重い事件を任されてキツい」→どちらもよく聞く勤務弁護士の愚痴ではあるが、おそらく、前者の愚痴を言う弁護士はボスから評価されておらず、後者の愚痴を言うタイプは自分が思っているよりボスから評価されているのだと思う。

第2 ボスに追い付こう

1 ボスの成功理由を研究する

この人はなぜ仕事があるのか?ルートは色々あると思うが、共通するのは「自分の売り方がうまい」「ちゃんと売上げをたてている」という点。それは自分にマネできそうか?マネできなれば自分独自の別の「売り」は作れないか?ボスはライバルではないが、うかうかしていると寝首をかかれるんじゃないかという、程よい緊張感をボスに持たせることは、ボスのためにもなる。

2 ボスの欠点を分析し、自分がカバーできないか研究する

ボスが嫌がっていることは何か? ボスの苦手分野をカバーできないか。

ボスの欠点を補えれば事務所の生産性が上がる。当然、ボスから重宝される。重宝されればそれだけ自由になる。また、顧客はボスとは違う長所・価値を見出すだろう。

※ボスの欠点や苦手が見えないという完璧超人のようなボスの下で働いているのであれば、細かい分析や調査、手間作業、厄介な相手との交渉等、普通は面倒くさいと思えるところを引き受けてしまおう。

第3 業務上の工夫

1 速度を上げる

まずは、対応速度・反応速度を上げる。解決までに時間がかかるのは相手のいる問題なので仕方がないが、ちょっとした電話の折り返しなどのこちらができる「対応」「反応」はすぐにできる。
まずは反応速度を上げよう。良い意味で「せっかち」になろう。

次に、完成までの速度を上げる。着手が遅いタイプ、着手するが筆が進まないタイプ、自分がどちらなのかを見極めて対応策を考える。 どちらも、仕事パターン(習慣)の問題だと思うが、前者なら機械的に自分で締め切りを決めてやるしかない。後者は、自分の担当事件の理解が浅いことに原因がある場合が多いので、手術の前に患部のレントゲンを撮ったり患者の体と向き合うのと同じで、事件内容ともっとよく向かい合ってみるとよいだろう。

2 非効率な感情を排除する

「そのときのノリ」や「気分」で仕事をしない。
今自分がやっていることの意味を常に考える。
勝負がついてる勝ち事件の準備書面を書きすぎない。苦しい事件の処理を後回しにしない。

3 先を読む

交渉事件では、先手で動いていつも相手の番になるように進める。

三手読む。次何をするか(次の一手)、それをしたら相手からはどういう反応が予想されるか(二手)、そうなると先々どうなるか(三手以後・・)。以上、先々の展開を予想したうえで、次の一手として最善手は何かを考える。

腹が立つこともあるかもしれないが、短気は起さない。
短気は、文字通り長期的な視点を欠く精神状況なのだと思う。
短気は長期的には損であることがほとんど。

4 人に興味を持つ、他者への優しさと見切る厳しさを持つ

弁護士の仕事は最初から最後まで人と人の付き合いである。

法人顧客では人事異動で色々な人が代わる代わる担当になるし、退職などでお別れの場面も多くあるが、一人一人に対して誠実な付き合いをするようにする。離婚事件なども、毎年離婚する人はいないのでその事件が終わればその後の付き合いもおそらく終わるが、一人一人の人生に興味を持ち、できる限りのことをきちんとやる。

困っている人にはできるだけのことはしたい。
これは人のためになるだけではなく、自分の心を良い位置に保つ効果もある。

もっとも、できる限りのことをしているのに無茶ばかり言う人もいるかもしれない。友人関係に甘えてくるタイプもいるかもしれない。人への誠意と言っても、理不尽でも自己犠牲をせよという意味ではない。こちらだって家族の生活、事務所員の生活なども背負っているわけで、自己や身内を犠牲にしてまで誰かに尽くす義理はない。社会的に非常識な要望が次々と出てくるような相手であれば、思い切って関係を絶つ厳しさを持つことも必要かもしれない。

5 安易な約束をしない、約束したらきちんとやる

やれないことはやれないときちんと言う。中途半端に引き受けていい加減にやるのが最も評価を下げる。それだったら引き受けない。但し、引き受けないときは言い方に注意する。前述の通り、人は言い方に腹を立てる生き物だ。

ちなみにこれは仕事に限らない。友人の飲み会や会合でも同じだ。参加するようなそぶりをみせて参加しないようなことは、自分の信用を傷つけている言動だと心得るべきだ。

6 保身をきちんと図る

依頼者や相手方とのやり取りは形に残す。

依頼者との関係では、自分がやることとやらないことを明確にさせておく。

打ち合わせ後に議事録っぽいメールを依頼者にしておくと安全。先手を取って動き、いつも相手のターンになるようにする。
→うっかり時間がたっても「こっちのせいではない」と言える。

若い人が保身を図らず突っ走る傾向があるのは、責任を取らされる怖さがまだ分かっていないからだと思う。

7 失敗の予防

自分の欠点をよく知っておく。それが失敗防止の第一歩。

例えば、やらなければならないのはわかっているが、つい先送りしてしまう事案放置・遅延型の失敗をしやすい人であれば、自分以外の人にお願いして尻を叩いてもらったり、担当替えしてもらう等、とにかく、誰かにその事件の話をして、一人で放置される状況にならないようにする。

期限・期間については事務にも知らせてあちこちから警告が出てくるようにしておく。

※おまけ(ボス弁向け失敗防止策):色々あるけど例示↓
・勤務弁護士の机にずっと置きっぱなしの事件ファイルは「やらなきゃ」という意識があるものの仕事が進んでいない事件であることが多い。勤務弁護士のデスクをよく見て、いつもある事件ファイルを気にかけておく。
・事務員には、勤務弁護士に、苦情や進捗問い合わせが来ていたり、勤務弁護士が問い合わせに居留守を使ったり、期日の延期をしようとしている事案があるときは報告するように言っておく。
・勤務弁護士が電話で誰かに謝罪していたり、妙に小声で話しているようなときは、電話が終わった後「今の何だったの?」ときちんと声をかける。
・控訴・上告期限、消滅時効については「まだ大丈夫?」という聞き方ではなく、日付を聞いたうえで、事務にもその日付を伝えたうえで、時間管理にかかわる人を多くしておく。

8 失敗の処理

失敗してしまったときは仕方がない。過去は変えられないのだから「今からできるベスト」を考えるしかない。

業務上の失敗や過誤はごまかそうとせずすぐにボスに相談する。嘘やごまかしはしない。嘘をつくと嘘を上塗りしなければならなくなり、そうしている間に取り返しがつかなくなることがある。

ミスが起きたこと自体はどうにもならないが、せめて、「ミス報告を遅延させて被害を拡大させた」「ミスを隠そうとした」という、本来のミス以上の、追加失点的なマイナス評価をされることはないようにしたい。

『自由と正義』の懲戒公告を見てほしい。失敗処理で嘘を塗り重ねて決定打になる違反をやってるな・・というケースを一度は見たことがあるはずだ。

9 顧客との関係、見通しの説明、説明の仕方、コミュニケーション

関係は「威張らず、舐められず」が原則。 フラットで丁寧・誠実な態度がよい。

事件の見通しについては、依頼者のニーズの順位を考える。
解決までの速度なのか、金額なのか、風評被害防止なのか、将来のトラブル防止なのか、刑事だったら早期の身柄解放なのか、無罪を徹底的に争いたいのか、職場や家族への納得と元通りの状態への復帰なのか等、様々なパターンが考えられるが、これらをきちんと説明をして議論を尽くした上で依頼者のニーズを把握し、それに従った対応をする。

顧客には耳の痛いこともきちんと言わなければならない。
時々逆ギレされることはあるかもしれないが、やむを得ない。
逆ギレを恐れて耳障りのよいことばかり言って、あとになって「そんなリスクは聞いていない」「そんなはずじゃなかったはずだ」と言われるともっと困る。

リスク説明はメールできちんとしておく。

※前述の、保身を図る・形を残すという所にもつながる姿勢。

また、このようなとき、言い方・伝え方が重要なのは繰り返し述べたところである。

自信のある態度が望ましい。とはいえ虚勢を張れと言っているわけではない。そもそも自信がないなら依頼は受けないほうがよい。自信があるなら自信のある態度で進めればよい(ただし威張れという意味ではない)。 

依頼者とのコミュニケーションは「短く・多く」が良い。
たとえば依頼者から何かが届いたら「届きました」と一言メール。事務経由でもよい。電話が来たら出先からでいいので「どうしました?」と折り返す。メールは即レス。メールのやり取りは自分からのメールで終わるようにする。

※前述の、連絡は相手のターンにして終わる、という原則にも合致する。

第4 個人受任

1 一人でやる度胸をつけたい、緊張癖を直したいなら国選がよい

国選弁護は舞台度胸もつくし、一人でなんでもきちんとやる経験としてよい。被告人から期待されていない場合も多いが一生懸命全力でやる。国選で色々できれば度胸もつく。度胸のある態度や自信は民事の個人受任の受任率アップにもつながる。

2 人付き合い

皆から好かれるならそれに越したことはない。

ただ、仕事の面からは、それよりも「この人に任せれば何とかしてくれる」と思われる人がよい。

何かの幹事、段取り・準備系の雑務をきっちりやることで「きっと仕事もできるだろう」と印象づけることが可能。

自分を宣伝してくれる「広告塔」を作る。 あちこちの会合に出て顔を売るという人が多いが、顔を出せば出すほど「大したことがない」とばれてしまうかもしれない(笑)。人脈で仕事を取りたいのであれば、あちこちの会合に出て顔を売っている人の無料顧問にでもなって、勝手に宣伝してもらう方が良い。

3 報酬

仕事の報酬は次の仕事。お金は自然とついてくるので単価を追わずにリピートを狙う。

・・とはいえ、他人を温めるために自分の体を燃やす必要はない。他の弁護士ならこれくらいは当然請求するだろうという相場分は、正当に請求すればよい。相場が分からなければ先輩に聞くなどすればよい。新人は安すぎる傾向がある。

受任欲しさに勝手に値下げするようなことはしない。値下げは最も安易で効果が薄い対応策だと思う。普段の経費率が50%だとして、50万円の報酬を40万に値引きした場合、粗利は50万円報酬だったら25万円あったのに40万円に値引きしたら15万円(40%ダウン)になっていることになる。利益が4割落ちるとなると今までの生活を維持するのも難しくなるだろうから、その分たくさんの事件を引き受ける必要が出てくる。つまり「貧乏暇なし」になってくる。貧乏暇なしだと、木を切るのが忙しくて斧を研ぐ暇がない木こりと同じで、自分の勉強・研究の時間もとれなくなる一方で、斧の刃が丸くなってくるのと同様、自分の知識もだんだんさび付いてくることになる。

見積もりは、きちんと方針を示して堂々と出した方がよい。その方が依頼者も覚悟を決める。

4 思い切って断ることも重要

受任時に「いやな予感」がするなら断る。その予感はきっと合っている。値切る依頼者は要求が多い場合が多いし、値下げした分責任が減るわけではない。引き受けないのが一番である。また、他の弁護士を解任してきた人の依頼は新人はやめておいた方がよいだろう。

※どのような相談者やどのような場合に受任に慎重になった方がよいのかは、語り出すと色々あるけれど、別の機会に取り上げる。

※4月18日追記:↓書きました。


第5 事務所経営

1 独立してやっていけるのか?

安易な独立はお勧めしない。

自分の個人受任での所得だけで安定して暮らせるかを試算してみる。仕事に関して具体的な見込みやアテがないなら、今の給料の2倍は毎月安定して個人受任売り上げがあるだろうか?(長期的な視点で見ても大丈夫そうか?)
企業担当者が約束してくれていたり、すでに顧問があるなどでもない限りは、相当苦労することを覚悟しておいた方がいいと思う。

なお、安定して売り上げが立っているかどうかの判断であるが、着手金が入る案件が毎月連続して来ていたとしても、安定感があるとは言えないと思う。受任は容易だがなかなか解決できないという、便秘になりやすい事件ばかり受任していると、最終的には全件中途半端になって破綻する。自分の中で特定分野の受任上限件数を決めておくと良いだろう(こじれた離婚事件などが典型。すぐに依頼になるが、なかなか解決しないで件数は増えていく。)。

2 そもそも独立する必要はあるのか?

個人受任が多くて事務所事件がきちんとやれずに迷惑になる、だから独立する、というのが王道。
勤務弁護士に飽きた・忙しすぎる・ボスに仕事丸投げされるのが嫌だ、ボスの方針が気に入らない・仕事の幅を狭めたい・仕事の幅を広げたい・個人受任の経費納入が惜しい・・等、色々聞くし、それらの理由も、自分も勤務弁護士経験があるのでよくわかるが、事務所に原因があるとしても独立してその不満は解決するのか、他の苦労が増えることはないのか、今よりハッピーになれるのか。このあたりは感情論抜きで考える必要があるだろう。

「独立=自由」が成り立つのは食えている人だけ。
食えずに独立してもそこに自由はない。

独立でなくパートナーで自由になれないのか?事務所で不可欠の人材になれば発言力は上がるし、ボスも待遇を考えるのでどんどん自由になっていくはずである。辞める前にボスに待遇相談くらいはした方がよいだろう。

3  事務所経営を甘く見ていないか

事務所を独立する人は、テナント内装費、什器・備品、毎月の家賃、リース料、事務の給料・・といったお金の不安(仕事がくるかどうかという不安も結局はお金の不安といえるだろう)しか考えていないケースが多いが、実は一番難しいのは、事務所としての業務フローづくり・チーム作り・組織作りである。

※事務所経営については色々言いたいこともあるが、今回のテーマと合わないので割愛する。とにかく「経営をなめるな」とは伝えておきたい。

4 コスト感覚

安易にお金をかけない。独立準備中の人にありがちなミスは、内装・複合機などの業者の上客になって言いなりで金を使ってしまうこと。ホームページ業者・広告業者などに安易に外注費を払って大損するパターンもありがち。

コスト感覚は初期ほどきちんとしておくとよいだろう。

もっとも、いくらコスト削減が大事だと言っても「コストの削減=生産性向上」そのものではない。コストを下げて、同じように売り上げや業務量(成果)も下がるようでは本末転倒である。コストを下げたのに売り上げや業務量は維持できたと言えるときにはじめて生産性が上がったと言える。

生産性が上がって元が取れ、それが永続的だと言えるなら、思い切ってコストをかける必要もあるだろう。ただ、多分、初期はそういう決断をすることはないだろう。

いずれにせよ、損益分岐点をきちんと把握した上で、無駄な金を使わないよう自分を客観視することが重要だと言える。

5 顧問先の獲得

顧問弁護士どうですか?とホームページなどで広告している事務所もあるけれど、私からすると相当違和感がある。

いきなり顧問になってくれと言われたら普通は警戒すべきだと思う。

他の実績のある事務所や大型事務所を差し置いて、どうして無名の新人・若手弁護士であるあなたにそんな打診をしてくるのか、考えてみる必要があるだろう。

リピーターづきあいが続くようなら顧問契約の提案をしてもよいと思うが、そうでもなければ安易に広げようとしなくてよいと思う。

なお、上場企業の顧問契約は、飛込みではほぼ無理。子会社や末端部署でいい仕事をする。→今後の改善策などの提案・提言をする。→上司に話が行き、だんだん仕事が増えていく。→関連会社にも仕事は広がる。→そのうちうちの企業ともっと付き合いを深めていきませんか、というオファーが来る・・という感じで、良い仕事をして、狭い業界内での紹介でのし上がって顧問になる方法が良いと思う。私の場合はそのやりかたで長期的な付き合いを増やしていっている。

大企業の顧問は、安くても宣伝として効果がある。
それと、大きな組織の中での人間関係を見て、中にいる人たちのものの考え方や行動原理などを知ることは弁護士業務でも結構役に立つ。

6 企業顧客

大半の大企業は気まぐれな天才より安定した秀才を求めている。
その企業の経営が安定しているのならば「安定感」「安心感」を目指すことを第一とし、聞かれたことを早く・安く・可能なら資料を付けて回答する方向性で考える。

他方、若くて伸び盛りの中小企業・ベンチャーの社長は、「反応速度」「わかりやすさ」「企画をなんとか前に転がせるアイデア」「弁護士の敷居の低さ」を求めていることが多い。気軽に携帯やラインでいつでも相談できる関係がベスト。

経歴や肩書、出版などは良ければ良いほど有利。かといって嫌みになると逆効果なので、アピールはしすぎないよう気を付ける。

人間関係も重要である。好かれるに越したことはないが、それ以上に「頼りになる」「あの人に任せれば大丈夫」と思われることが重要。また、実績等が同じで仕事ぶりでの差が付かない事件なら、その弁護士の好感度・知名度・話題性なども依頼先決定の要素となるので、好感度・知名度・話題性が高い人は企業の仕事は相当有利だと思う。

7 うまくいかないのはなぜか

大体は次の3つである。

 ① 単に努力していない。努力が足りていない。 
 ② 努力の方向性が正しくない。
 ③ 努力しても能力的に無理なことをしようとしている。

自分の欠点を素直に認め、それを前提として今からできるベストを尽くす。

意外と①が多いように感じる。

例えば、周囲が勉強していない環境にいる学生が、ある日ものすごく勉強したとする。「俺、こんなに勉強した」と満足げに思ったりするわけだが、本当によく勉強している人と比べると、そのレベルの人の日常的な量すら届いていなかったりする。

それと同じで、気まぐれに思い立って、そのとき自分では頑張ったつもりでも、実はそうでもないことは結構ある。

やると決めたら、周囲が心配するくらいそのことにのめり込んで努力するべきだろう(特に独立初期は。)。

8 小銭仕事をバカにしない

一攫千金狙いは安定感を欠くので、タクシーでいえば常に初乗り客がいるような状況を目指す。遠距離客(高額案件)はボーナスくらいに考え、アテにしない。1件1万2万の小さい相談や文書作成でもひっきりなしに来ていればかなりの売り上げになる。単価が安いなら、生産性を上げて効率よくできないかを考えてみる。

低単価での効率的なやり方は大きな事件の対処でも役に立つ。

9 生産性向上の意識

コスト感覚だけでなく、自分の労力を最適化することも考える。

技術革新は経済全体を成長させるわけではなく、上手く使う人の効率を上げて上手く技術を使えない人との生産性に差をつける。 

便利な技術を取り入れるだけで、自分の生産性は、同業の他者より効率化するだろう。

無駄なことはしない。勝ってる事件に必要以上のリソースをかけない。負け事件は依頼者との関係を重視した対応に努める。

無駄なことはしないと書いたが、面倒くさいことはきちんとやる。

無駄なことと面倒くさいことの区別がつかないという場合は、要するに、その案件に必要なことが分かっていないということだから、単純に経験不足・実力不足である。そういうときは、非効率でも全部やる方向で頑張るしかない。

小さな労力で大きな成果となるような、レバレッジがかけられるような動き方を考える。
→短いひと手間で解決までの時間を大幅に短縮できることがある。

例えば、文書を送るだけ送って、ろくに返事が来ないので数週間して「文書を送っていますが、どうですかね?」と相手に問い合わせるより、文書を送る当日「今日文書を送りました。明日届くと思いますので宜しくお願いします。」翌日「届きましたか?ちょっと開封して送った文書について今一緒に見てもらえますかね?」と小さく連絡を刻むようなやり方の方が絶対に早く解決する。

10 相談相手をつくる

相談できる人を作っておく。友人でもよいが、メンターというか、自分の中で一目置いている人を大事にして、その人とは普段から縁をつないでおく努力をしておくとよいと思う。

その意味では、ボスが全然無能だったと思って辞めたならともかく、ボスの力量を評価しながらも退所して独立したのであれば、そのボスとの関係はいつまでも良好なものとなるようにすべきだろう。

弁護士が全分野に精通していることはあり得ない。
他の弁護士がどんな事務所にいて、普段どんな仕事をしているのかを知っておく。会派や派閥でも、どの先生がどんな事件を得意としているのか意識する。不慣れな事件の相談のときは相談を持ちかけられるだけの人なつっこさと図々しさを持っておくと良いだろう。

また、うっかり受任してしまったのなら、慣れている先生に共同受任してもらって報酬は渡してしまえばよい 。指導料・勉強料・安心料だと思って割り切ればよい。

11 ノウハウは惜しみなく人に見せる

情報は情報を持っている人のところに集まる。

情報を持っていることを示すには情報を出すのが一番だろう。情報を出せば、それについて意見をもらえたり、うちの方が上手いやり方だという議論になったりして、ますますよい情報が得られるようになるはずである。仲間の弁護士には「ノウハウを見せるからそっちも見せろ」くらいは言ってもバチは当たらないだろう。

12 「知っている」だけでなく「できる」ようになる

「知っている」と「できる」は全然違う。

「それは知っている」で終わらずに、「できる」ようになる。

行動力・実行力をつける。→これが一番大事。

(おわり)

#経営 #弁護士 #法律事務所


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