大阪高等裁判所

高裁のお作法 民事(弁護士向け)※2020年10月追記

■注意書き■
① 書いてある内容が効果的かどうかは知りません。推奨するものでもありません。話のネタにはなるかもしれません。
② 高裁判事によって考え方が異なることもありますし、この通りにやってひどい目にあっても私は一切知りません(笑)。
③ 一応、東京高裁判事から聞いた本音の話です。
④ 裁判官でこれ見て意見がある方は教えて下さい。私もお作法を知りたいので(笑)。

高裁のお作法

・控訴理由書の期限は目安だが、遅くとも期日1~2週間前には出すこと。
→高裁は第1回期日前に合議する。合議に間に合うように出せば一応セーフ。

・長い控訴理由書は目次をつける等して、わかりやすくして欲しい。 読む気のしない長いのは勘弁してくれ。

・文献は、相手にまで出す必要はないが裁判所に対しては資料として該当部分を渡すべき。マーカーで線を引くなどして読みやすくして欲しい。

・一部勝訴で、相手が控訴する見込みなら付帯控訴ではなく本控訴しておけ。
<例>
 当方原告で1000万払えと被告に請求したが判決では700万認容となった。おおむね勝訴だが、相手が控訴するとわかってるなら本控訴しておいた方がよい。付帯控訴だと原判決維持になるときがある。裁判所「まあ、付帯控訴だから高裁判決でも700万でいいよな」ということで、とりあえず原判決維持しておくか、ということになりやすいらしい。

・同様に、本来完敗事件だが、予想外に一部敗訴で済んだ場合も、相手の控訴が見込まれるならこちらも本控訴しておいた方が、さらに傷口を広げなくて済む場合がある。

・民事訴訟は続審だが、事後審だと思って、原判決に食らいつく控訴理由書にして欲しい。原判決の「おかしいところ」をきっちり指摘する。ちょっとした誤記も含め、きちんと読み込む。高裁は原判決の間違いは正すが、自由心証や解釈の許容範囲内の是正はしようとしないことが多い。

・高裁は原判決を誰が書いたかを結構見ている。信用されている裁判官の原判決をひっくり返すのは結構大変(その逆もある。)。

・控訴事件は、あたりまえだが、原審で和解にもできずに判決までもつれ、しかもそれに納得がいかないという、こじれにこじれた事件である。そんな事件が毎日のように、新件としてやってきて、同じようなペースで判決や和解という形で解決しなければならない。裁判所のこの忙しさを理解できるだろうか。高裁判事は滅茶苦茶多忙である。このような理由で、乱暴に片付けにかかってくることもあるだろう。和解を強要したり、ちゃんと控訴理由書を読んだのかと文句が来そうな、エイヤと割り切った原判決維持をするのにはこういった背景がある。だから、ベルトコンベアにのらないようにきちんと原判決の看過できないミスを端的に指摘しなければならない。被控訴人なら控訴人のこのような指摘を端的に排斥して(あるいは違う構成でも結論は変わらないと主張して)守る必要がある。

・時間を掛けさせないで事案を把握させるように色々工夫すること。 なんだっていい。漫画だっていい。わかりにくい事案は関係図でも入れてほしい。そういう配慮が欲しい。

・原審勝訴のときは、「逆転敗訴するかもよ」との脅しに注意すること。当事者に対して明確な二枚舌は使わないが(→明確なウソはつかない)、二枚舌のようなニュアンスを使い分けることはある。

・大きな会社が当事者のときは、できればちょっと譲ってくれると助かる。うまいこと回るように協力して欲しい。
※これ、どうかと思いますが、実際そう言っていたのでそのまま載せます。

・和解したいときは書記官経由でもいいから必ず伝えてほしい。出来れば本音と建て前も両方伝えてしまう方がよい。あとはうまくやるから任せて欲しい。

・和解が本気で無理なときも書記官経由でいいので伝えて欲しい。無駄な和解期日は入れたくない。


高裁って・・(私の印象)

高裁って、すごくちゃんとしているときと流すときの落差が激しいですよね。

地裁が控訴審となる場合はわりとちゃんと読んでもらえる気がしますが、高裁の控訴審だと、時々全然読んでいないかのような原判決維持がある気がします(高裁で逆転されるだろうなと思いながらやってたらあっさり勝訴の原判決維持で、こりゃ、相手弁護士大変だろうなと思ったり、その逆も・・。有利にも不利にもなります)。

高裁のこのやる気(やる気の問題と言ったら失礼ですが)のムラっ気は、普段忙しすぎるのが原因であると思っています。

どんな優秀な人でも、自分がこなせる以上の分量の仕事が来たら回すのは無理ですから、どこかで乱暴に片付けざるを得ないってことなのでしょう。

そのような状況を前提として、高裁の「やる気スイッチ」はどうやったら入るのかを考える必要がありそうです。

私も色々試しましたが、長くて読む気がしない控訴理由書より、原判決のツッコミを箇条書きにでもした上で「だから、原判決は正されなければならない」という伝え方が良いのかなと思っています。

あとは、理詰めも大事ですが(言うまでもないことですが)、心情的にも「確かにこれはおかしい」と共感してもらえるような書き方がよいのかなとも思います。

まあ、これは、控訴審に限らず、どの準備書面でもそうだと思いますが・・。

※本稿は、6年前に別のところに載せたところ好評だったのでこちらでも掲載したものです。多少改訂してます。

(2017年12月11日追記)
高裁の実情について書かれている本は今までほとんどありませんでしたが、岡口基一裁判官×中村真弁護士の『裁判官!当職そこが知りたかったのです。民事訴訟がはかどる本』(学陽書房)が先週発売されましたね。早速読み終わりましたが、あまり高裁経験がない弁護士にはお勧めです(それなりに経験してコツをつかんでいる人でも、「高裁あるあるネタ」の読み物として楽しめる内容だと思います。)。てことでリンクを貼っておきます(画像をクリック)。

画像1

(2020年10月30日追記)

これも貼っておきます↓↓

基礎からきちんと控訴審(前編)|第二東京弁護士会 https://niben.jp/niben/books/frontier/backnumber/201905/post-19.html

基礎からきちんと控訴審(後編)|第二東京弁護士会 https://niben.jp/niben/books/frontier/backnumber/201906/post-24.html

おわり

#裁判 #弁護士 #裁判官 #裁判所 #法律 #司法試験

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