無題

1週間でデビューを決めた ”僕” との 「ただれた関係」


「タレント、アイドルである前に社会人としての自覚や責任を果たすようにしていただきたい」

NHK・木田幸紀放送総局長は、定例会見で、相次ぐジャニーズ所属タレントの不祥事に、厳しい表情でそう苦言を呈した。

元TOKIO・山口達也の女子高生への強制わいせつに続き、NEWSの小山慶一郎や加藤シゲアキ、手越祐也に未成年女性との飲酒問題が立て続けに勃発し、NHKも番組の差し替えや、クレーム処理などの対応に追われていることを受けてのことだ。

「大アイドル帝国を築き上げ、NHKにまで大きな影響力を及ぼすようになっていたジャニーズのおごりとゆるみが招いた不祥事であることは明白です。これだけ続くということは、表沙汰にならなかっただけで、これが彼らの日常だったと思われても仕方ないでしょう。ジャニーズ事務所の罪は大きいですよ」

だが、ジャニーズ事務所に所属タレントを、一人前の社会人として教育する能力があるかどうかは、大いに疑問だ。

「創業者で現社長のジャニー喜多川氏には、これまでに未成年への性的暴行疑惑が山ほどあり、裁判で一部が認定されてもいる。にもかかわらず、これまできちんとした説明もなければ、社会的制裁を受けることもほとんどないまま、今も芸能界・テレビ界に大きな影響力を保ち続けている。そんな姿から、所属タレントたちは社会人としての何を学べばいいのか」

次は、豊川誕のケースを紹介しよう。


「自室のベッドを使うことがなかった」

豊川は、推定3歳のときに孤児となり、兵庫県姫路市の公園で保護されて児童養護施設で育った。高校を中退し、里親の家から家出して大阪のゲイバーや喫茶店でアルバイトをしているときにスカウトされ、上京。ジャニーズ入りし、1975年3月、16歳のときに「汚れなき悪戯」でレコードデビューを果たした。「豊川誕」 という名前は、「豊川稲荷に捨てられていた」というギミックとともにメリー喜多川がつけたものだった。孤児であることを、堂々と売りにしていたのである。

豊川は、上京初日から、ジャニー氏と当時のタレントたちが寝泊まりする「合宿所」に招かれ、自室が与えられた。だが、最初の1週間は「自室のベッドを使うことがなかった」という。豊川は、97年に上梓した 『ひとりぼっちの旅立ち―元ジャニーズ・アイドル 豊川誕半生記』(鹿砦社)の中で、実に淡々と告白している。

では、どこで寝ていたのか。

 ジャニーさんの部屋であった。

彼のベッドで毎晩、自由にされ続けたのだ。自分のやっていることが何であるのかはわかっていたつもりだ。だてにゲイバーで働いていたわけじゃない。

豊川と他の告発者との大きな違いは、その孤児としての壮絶な生い立ちからくる、腹の据わり方とくくり方だ。


「ジャニーさん、ありがとう」 が意味するもの

「ジャニーさんにベッドに誘われた時は正直、驚いた。だが、これから、この人に育ててもらわなければどうにもならないということも、僕は十分すぎるほど、理解していたのである」

そしてジャニー氏の求めに応じていた結果、なんとわずか1週間目にしてフォーリーブスの地方公演のステージにゲストとして登場するようになり、次なるスター候補としてファンに紹介され歌を披露するという大舞台が与えられたという。すなわちデビューが決まったのだ。

当時のジャニーズ事務所は、郷ひろみが抜けたあとで、新たなスターの育成が急務であったこと。また若き日の豊川がジャニーズの歴史を振り返っても1、2を争う美少年であったことも間違いないが、それでも、下積みもなければ、まともなレッスンも受けないままの少年の抜てきは、やはり異例のことだったはずだ。

その真相が絶対的な立場を利用したただれた肉体関係にあったのならば、当然、許されることではないし、これ以上のファンへの裏切りはない。

ただ、豊川氏は、この『ひとりぼっちの旅立ち』 の帯に「ジャニーさん、メリーさん、ありがとう!!」と綴っており、実際に、一冊を通して、彼らへのドロドロとした恨みはほとんど感じられない。ジャニーズを離れたあとも、メリー氏には何かと世話になっていたようで、最近のブログ (「豊川誕とみんな友達」livedoor Blog)などでの様子を見ても、現在も、彼らには感謝の気持ちの方が大きいようだ。

だからこそ、逆に、ジャニー氏による数々の行為があったことがリアルに浮かび上がるのだ。

性的関係を迫られるばかりでなく、当時の合宿所では酒やたばこは、未成年者でも暗黙の了解で許されていること、17歳のときに睡眠薬遊びにハマったことなどが綴られている。

タレント、アイドルである前に社会人としての自覚や責任を―― この言葉をジャニー氏はどう聞いたのか。


ジャニー氏による「悪魔の行為」一部始終

いまのジャニーズファンにも、平本氏の名前はよく知られているだろう。現在、プロデューサーであり作家、投資家でもありといくつもの道で広く活躍をしており、その経験と確かな筆力から、ジャニーズ関連のネット記事をさまざまなニュースサイトに提供し、ファンの“知りたい”に応えてくれている貴重な存在である。

この平本氏が、これまでに紹介してきた、フォーリーブスの北公次氏、ジャニーズの中谷良氏、ソロデビューした豊川誕氏ら、10代にしてジャニー氏の毒牙にかけられ、人生を狂わされた者たちと大きく違うところは、ジャニー氏に”最後の一線”を、とうとう許すことがなかったということだ。

 もちろん、ジャニー氏からの誘いは、あったという。

ジャニー氏のホモ疑惑については、同僚のJr.たちから聞いていたものの、いまいちどういうことかを理解していなかったという平本氏だが、合宿所ではジャニー氏が一緒に風呂に入り、体をすみずみまで洗ってくれる上に、パンツまではかせてくれるのが当たり前、という奇妙さに気が付いてくる。

夜中になると、並んで寝ているJr.のところにジャニー氏は滑り込み、その場所からは、「ごそごそ……」「ハァ~…」 という謎の声が聞こえてくる。

 そして、ついに平本氏にも、その毒牙が向けられる。


「もっと気持ちのいいことしてあげる」

合宿所に泊まったある夜、強烈な香水のにおいとともにジャニー氏に抱き寄せられてしまう。そこまでの経験は何度もあったというが、その日のジャニー氏はさらに”その先”を求めてきたという。

例の如く腕枕をして足もからめてきた。この時は私は寝ておらず、私が寝ていないのをジャニーさんは知っていた。抱き締めながら、「ユー、もうすぐデビューだね」と発した言葉と一緒に少し荒い鼻息が頬を撫でる。
(中略)
「レッスンは大変だけど頑張って」「新しいグループにはユーがリーダーで頑張るんだよ」「来年にはもうユーは大スターだよ」とよだれが出るほど甘い夢のような話だった。これらをジャニーさんは小声で耳元でささやきながら手の平や腕のマッサージを施す。

 「もっと気持ちのいいことしてあげる」と言われた時は、心臓が爆発する思いだった。

 この”もっと気持ちいいこと”は、足の指を鳴らすことだったというが、こうしておいしい話とマッサージで、まだ性愛の意味も知らない少年の心を溶かしていくのが、ジャニー氏の手口のようだ。

強くもんだり指を鳴らしたりとテクニシャンのジャニーさんは、いつの間にか体を撫で回すようになり脚を股に突っ込んできた。

「ワァー」と絶叫した。しかし心の叫びであった。周りに寝ている二人にこの状況を知られたくはなかったのだ。

平本氏は、この窮地を、「トイレに行きたい作戦・我慢できないスペシャル」 で切り抜ける。そして、トイレから戻ると、ジャニー氏は、平本氏の隣で寝ていた「忍者」の正木慎也のことを、可愛がっていたという。

そして平本氏はその後、「本物のホモはここまでするのか、ということを知った」という、決定的なシーンを目撃することとなる。


「される方」と「する方」

四つん這いになった少年の後ろからジャニーさんは行った。細かいところは見えないが、少年の「痛い!」という声が耳にこだました。
(中略)
 彼はこの日をスタートに「儀式」のすべてを経験した。愛撫からキス、そしてアナル、フェラチオまでのされる方とする方。何カ月かすると、彼はグループメンバーに入り今でも活躍している。

 この行為をすればデビュー、そして拒否するならばいくら頑張ってもジュニアで終わる。そのことだけが頭の中に刻まれ渦巻いていた。

平本氏は、その後も、何度も抱きしめられての甘い囁きは受けたというが、決して一線を超えることはなかったという。そんな平本氏に、デビューのチャンスはなかなか訪れず、Jr.のリーダー格として活躍しながら、結局、デビューを諦めて、18歳のときにジャニーズを去ることとなる。

その後、いくつもの分野で成功を収めている平本氏だが、それでも、あのまま続きに応じていたら、今頃スターだったかもしれないとの思いがよぎることがあるようだ。

 自分では 「悪魔の囁きに乗らなかった」 と良い方に納得しておかないとジャニーズ事務所にいた経験が悪い思い出として付きまとってくる。

こうして、強い気持ちで過去に決着をつけているというが、それほどに、スターの浴びるスポットライトはまぶしく、ジャニー氏の「来年にはユーも大スターだね」という囁きはどこまでも甘く、10代の少年たちを惑わせるのだろう。

86歳になるジャニー氏が、現在も同じようなことを繰り返しているどうか知るよしもないが、King&Princeの成功も、こうした歴史の積み重ねの上にあるということを、メンバー、そしてジャニーズタレントのファンも知るべきではなかろうか。



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