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【配信を拝診⑪】ポリコレそのものは立派ながら問題は物語に生かせているかどうかで... 2022(ホームドラマ)⇔2036(ディストピア)の延々行ったり来たりがもどかしいNetflix独占配信ドラマシリーズ『バイオハザード』のマルチバースは誰得なり?

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。⊂(・ω・*)∩
 ラムちゃんや『ダーリンは外国人』の影響で"ダーリン(darling)"って女性→男性の呼びかけだけだと思ってたので、いざ外画で男性が発してるのを見た際に面食らった、O次郎です。

笑ってはいけない~」企画の中でもかなり初期の方か…。
この頃、藤原さんが副社長になるといったい誰が想像したであろうか。

 今回は先月からNetflixで独占配信開始となったドラマシリーズ『バイオハザードです。
 方々でかなり厳しい評価を下されているようですが、そうした他所様の考察や感想は避けつつ1シーズン・全8エピソードを鑑賞し終わり、そのまま個人的に思ったままの感想を書いていきたいと思います。
 ちなみに当方、ゲームの『バイオハザード』はナンバリング・外伝作品含めて軒並みプレイ済み、実写及びアニメーションの映画版シリーズも鑑賞済みです。この年初めに公開されたリブート版実写映画も観まして、これだけ数が有ると原作の再現性云々はもういい加減重要なところではないと思い至っておりますので、あくまで物語として面白かったか否かを主眼としておりますので、ネタバレはご容赦いただきつつ読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・・・・おどれ Dancing  Dancing  Star!!

 

『うる星やつら』は完全に再放送世代。
珍奇エピソードとしては第78話「みじめ! 愛とさすらいの母!?」が有名ですが、
個人的にそれ以上に強烈だったのが、面堂くんの別荘で無限増殖するとろろいもに
退路を断たれていくスリラーの第84話「恐怖! トロロが攻めてくる!!」です。
古典SF映画みたいな隔絶感と予想通りのバッドエンド、ホラータッチの作画が秀逸…。
よく言われるようにこのへんの時期が一番なんでもありで脂が乗ってたんでしょうね。


Ⅰ. 作品概要

 "アンブレラがラクーンシティの惨事の後も存続している"という前提からして完全なパラレルワールドかと思いきや、ラクーンシティでのリサの実験や街が辿る末路、オリジナルのウェスカーの存在とその死はゲームの史実通りのため、結果的に"ゲームのストーリーの重要なファクターが違う結末を迎えているにも関わらず、世界の趨勢としてはゲームの史実通りに進行しており、尚且つゲームの裏側の出来事を中心に描いている"という実にややこしい位置づけの作品になっています。
 邪推かもしれませんが、"ゲームとは別個のストーリーだから相違が有っても当然だよ。ただ、世界観そのものはゲームと同じだから興味持ってね。"という制作側の言い訳と懐柔策の絡み合いがそのまま作品の歪さに繋がってしまっているように思えてなりません。オリジナルならオリジナルでゲームからの引用は用語のみぐらいに留めてキャラクターもクリーチャーも創造する、ゲーム依拠ならゲーム正史と完全に矛盾が無いようなバックグランドを用意しつつ、キャラクターもクリーチャーもゲームでの端役や没デザイン・亜種のものを登場させる。製作サイドは出資する側も含めてそのぐらいの覚悟は見せて欲しかったところです。

この感染した自分を自分で手錠に繋いでるのがなんとバリー。
奥さんが彼をひた隠しにして生活してるところに主人公ジェイドが訪ねて来てるけど、
こんなチョイ役ならオリジナルから名前借りる必要無いやん…。

 

Ⅱ. 個人的フラストレーションのいろいろ

・過去篇の冗長さと蛇足感

 そしてまず過去の2022年の世界の物語ですが、普通の青春ドラマのようなしみったれた展開が延々続いてしまいます。ティーンエイジャーの姉妹二人が父親の仕事の都合で新しい街に越してきて、姉は社交的でボーイフレンドも出来て周囲と上手くやりつつ、妹は根暗さや嗜好(ヴィーガンなんだけどそうなったバックボーンの説明が一切無いので…)の所為で虐められたことで父親を頼ったり、勝手に相手に仕返しをした姉に対して怒って"自分を下に見ている"と詰ったり、父親の仕事内容が怪しいと正義感から二人で会社に忍び込んだり・・・。
 妹が研究所で犬に咬まれて感染したり、研究所で父のクローンに遭遇したりとハラハラ展開が有るには有るのですが、それとのコントラストとしての学園生活の尺が相当長く間延びし過ぎているので、結果的に14年後のディストピア世界の緊張感も邪魔しているような具合です。

全編通して過去と未来の物語を同時並行で追う、というと
仮面ライダーキバを思い出しますが・・・

 過去篇の内容が薄いがゆえにシーズン1丸々使っても大して14年後のディストピア世界への布石になっていないため、ハッキリ言って過去篇との同時並行はエピソード3ぐらいまでで終えて以降は14年後の現在の物語に専念させた方が何倍も良かったように思います。
 物語そのものの奥行きや面白さよりも「過去と未来の同時並行」という見せ方への執着が優先してしまい、その引き延ばしによる"薄味化"の割りをモロに食ったのが過去篇、ということだと思います。
 序盤こそ早めに妹ビリーが感染したことで"このままビリーが死んでしまう"というミスリードが生まれ、その中で中盤に現代篇の方でも成長したビリーが登場した件は良かったと思いますが、過去・現在のクロスカッティングが上手く働いていた部分は正直なところその点のみだと感じました。

お互いのお互いに対する不満を抱えたまま過去篇が終了していれば
それが現代篇での因縁と愛憎にも繋がりましたが、
過去篇の時点で既に本音をぶつけ合ってるんだもの…。

 制作可否そのものはさて置き、シーズン2以降も過去と現在の同時並行は続けるものと思われますが、それであればメインの姉妹のキャラクター性が過去と現在で乖離していくのを防ぐためにも過去篇では退場してもらって別のキャラクターに展開を引っ張ってもらった方がよろしいのではないかと。


・現代篇のアクションのしょっぱさ

 そして対する14年後の2036年の”現代篇”ですが、約60億人のゾンビこと"ゼロ"の跋扈に対して、ウィルスの根絶を目指して各地を飛び回るジェイドとそれを捕獲しようとするアンブレラ、それに"ゼロ"達を労働力として使役する謎の集団ブラザーフッドと、実に四つ巴の対立構造になっているものの、見どころとなりうるはずのアクションシーンに印象的なものが殆ど有りません

いざガチンコの直接対決!!・・・かと思いきや呆気なく気絶して次の場面へ、
みたいな肩透かしが実に多い。

 "ゼロ"との闘いは多勢に無勢なので基本的に逃げ回るばかりで、他勢力が登場して肉弾戦かと思いきや呆気無く不意を突かれて昏倒。巨大クリーチャーが登場してもやっぱり基本は逃げ回るばかりで、絶望的状況を退けたり流麗なり骨太な肉弾戦を制したり、巨大クリーチャーを苦戦の末に仕留めたりといったアクションのカタルシスが不足しています

集団ゾンビに華麗なガンアクションで立ち向かって制したのもジェイドではなく、
アンブレラ者に雇われたおデブちゃんのリチャード!!という始末。
カッコいい見せ場を巨漢に譲るのもポリコレの範疇に入るのかどうか・・・。

 普通の活発なティーンエイジャーだったジェイドが成長後には精悍なビジュアルになっているのでそこはヒロイン無双を期待してしまうのですが、実際は手りゅう弾で"ゼロ"を吹き飛ばして逃げ回ったり、チェーンソーを振り回して特異クリーチャーの頭部を切り取ったりと、誰得?状態のしょっぱいシーンばっかり続いたのはなんだかなぁ…というところです。

ピンチに恐れおののくだけのシーンの方がまぁ多いこと多いこと。
ブレイド』ばりのカリスマティックな佇まいのオリジナルウェスカー。
リブート版は既にマハーシャラ=アリで決まってるけど、
ヴィラン側でランス=レディック採用してもええんやで!っていうぐらい
クールだけど登場はほんのワンシーンのみ
製作陣がゲームオリジナルの領域にしり込みしてる感バリバリやんか…。


・描きたいのはウィルスの恐怖?それとも親子愛?

本シリーズ一番の名優にしてネームバリュー的にもトップなのに、
その死も葛藤も他のキャラクターに対して然したる影響を与えずというのがなんとも失礼な話。

 ランス=レディック演じるアルは当初は自分の延命のために姉妹を誕生させつつも本当の娘に対する親の愛を持つ・・・しかしながら当の姉妹は自分たちの出生に関する身勝手な秘密に憤るばかりで彼の死にさほど悲しまず。
 彼の上司でアンブレラCEOのイブリンは自分の妻(同性婚というところが彼女の出自や人間性の裏打ちになっておらず、とりあえずのポリコレ感が大いに問題)と息子サイモンを愛しているものの、最終的には薬効への探求心と支配欲から妻をジョイの薬漬けにし、感染したうえに足手まといになりそうな息子を射殺してしまう。
 なんというか、描かれているドラマの真相の冷酷さのわりに描き方がメロドラマチックなので絶妙にそれぞれが反発し合っていて、観ていて内容の処理に困ってしまいます。
 アルバートとマーカスというウィルスの生みの親にして諸悪の根源のキャラクターが中心に来ているので、それであればゲーム本編で未だきちんと描かれていない"大罪人を親に持つ子どもの責任の取り方"をフィーチャーして欲しかったのですが、既にその一方が死亡し、他方の姉妹は14年を経ても痴話げんかに終始しているなんとも残念な印象が拭えないところです。

アルとバートの倫理観とイブリンの支配欲との相克構造が
14年後の姉妹の対立に引き継がれて盛り上がって欲しいところなのですが・・・



Ⅲ. 製作・キャストについてひとことふたこと

・制作会社 - コンスタンティン・フィルム

処女作は『荒野の用心棒』。
旧実写版『バイオハザード』シリーズ含め、アクションの見せ方の
ノウハウはかなりの蓄積が有る筈だか…。

 ハッタリの利いた派手なアクションがウリの会社のハズなのに本作での不発感は一体どうしたものか・・・。
 思うに、監督陣にしてもキャスト陣にしてもアクションに精通してる人が乏しかったのと、これまでの蓄積とは敢えて違うものを見せようという冒険心が悪い方に向かってしまったのではと妄想は尽きません。

・ジェイド=ウェスカー役 - エラ=バリンスカ

一応興行的にはペイはしたみたいだけど、肝心のアクションよりも
メイン三人のファッションショーみたいな構成が目立った『チャーリーズ・エンジェル(2019)』。

 上のほうでも書きましたが、やはり主人公であるからにはアクションの見せ場の相当程度はきちんと彼女に華を持たせてほしかったところで、脚本の煽りを受けているにせよ、独断専行を貫くなら旧実写版シリーズの主人公アリスのように一匹狼を貫くか、さもなくば現状の仲間を救うための行動で共感を呼ぶ主人公像は最低限示してほしいところです。


・アルバート=ウェスカー役 - ランス・レディック

ジョン・ウィック』シリーズではホテルマンで出演シーンは多くないながらも、
そのシドニー=ポワチエの如き紳士な佇まいは素晴らしい品格。

 アクション映画に多く出演しているものの重鎮役が多くて実質的なアクションシーンは実は少ないという珍しさ。
 今年で還暦というのも驚きながら、せっかくの存在感と体格なので本シリーズ続篇でも是非ともアクションの一翼を担っていただきたいところ。
 年齢的にも是非『エクスペンダブルズ』シリーズの続篇にどうでしょう?


Ⅳ. おまとめ

 というわけで今回はNetflix独占配信ドラマシリーズ『バイオハザード』でについて語りました。
 新しいものを見せたいという意欲は結構ながら、ドラマシリーズとしての毎回の"引き"や、視聴層の間口を広げようといういわばスケベ心が空回りして物語の細部への作り込みがおざなりになってしまった印象です。
 ここまでの酷評を考えると次シーズンの製作は暗雲が立ち込めていそうですが、実現の暁には兎にも角にもアクションとそれに続く爽快感の充実は確約してほしいところです。あとは拡がりの見えない過去と現在の同時並行にスパッと区切りをつけて下さい…というのが切なる願いで。
 どうせなら"タイトル詐欺"というか、名前だけは『バイオハザード』だけれども中身はオリジナルの影も形もない創作、ただし入魂のクオリティー、っていうのがこういう"原作絞りつくした何度目かの映像化"の取るべき方策のように思えました。

 取り止めが無くなってしまうので今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




コッチのシリーズはようやくビジュアルに慣れてきたところに
大胆なストーリー進行のアレンジも見られて個人的にはアリだったんだけど
敢え無く続篇中止に・・・・・・がちょ~ん。( ゚ω゚)


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