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【配信を拝診⑳】隣の大家の寡黙な老女は超武闘派‼ 娘を攫われた母親が恐るべき一家の宿業を知る孤島アクション映画『LOU/ルー』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。( *¯ ꒳¯*)
 そういえば学生時代、この時期は赤い羽根共同募金を登校時の校門前とかでやってたな~と思い出す、O次郎です。

先生方が結構な額を募金箱に入れて下さるのを見て大人やな~と思ったもんで。
その時期は貰った赤い羽根を使って休み時間になんちゃってダーツ大会やったり…
そのままだと軽過ぎるから針先に消しゴムのカス刺したりしてね。(*´艸`)

 今回は先月末にNetflixにて独占配信開始となった映画『LOU/ルー』です。
 簡単に言うと主人公の老女が"実はとんでもなく強かった"系のアクション映画なのですが、普段アクション作品には出演されないような俳優さんがキャストとして配されていて一風変わった味わいが特徴です。
 ワシントンに在する孤島を舞台にしていることもあって、嵐の大雨の山中での泥臭いゲリラ戦が展開され、全体的に寒々としたトーンを作り出しています。
 娯楽ジャンルとして踏襲するべきお約束事が多々有るからこそ逆にちょっとした個性的演出が映えやすいのがアクション映画・・・本作の真価は如何なるものか、読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレ含みますのでご容赦くださいませませ。
 それでは・・・・・・・・・・・・"エンバンメイズ"!!

子どもの頃、ちょっと洒落た趣味の友人の家に行くとドアにダーツ板が掛かっていたり。
見掛けたらやりたくなるんだけど、自分の部屋にまで欲しいとは思わなかったな。
まぁ兄妹も居ましたし、いずれ投げたのが誤って当たって喧嘩になるのがオチだったでしょう。



Ⅰ. 作品概要

※日本語版ページが存在しないため、翻訳等でご覧下さい。

 シングルマザーのハンナは大家の気難しい老女ルーに家賃を催促されながらも幼い愛娘ヴィーとともに孤島で静かに暮らしていた。
 ところがある嵐の夜に何者かにハンナの友人のクリスが殺され、停電の隙にヴィーが攫われてしまう。
 何かを思い詰めて銃で自殺しようとしていたルーの元にハンナが駆け込んで事情を話すと彼女はハンナを連れ、山中に逃げ込んだ事件の黒幕であるハンナの元夫フィリップと彼の仲間たちを追って死闘を繰り広げる…。

 というわけで"狂った元夫に我が子を奪われる""我が子の危機に隣人が助っ人してくれる"という筋立てこそテンプレ展開ですが、敵の首魁であるフィリップとルーも実は親子である、というところが唸らせてくれるところです。

つまりはルーとハンナは義理の親子。
ヴィーはルーにとって孫娘だったというわけで。
身分を明かさず実は秘かに二人を見守っていたという渡世人的人情譚!!

 相手のフィリップは行く先々に写真とメッセージを残していくわけですが、実はそれがハンナ向けではなくルー向けだったというミスリードがなかなかどうして。
 フィリップはその幼少期にCIA工作員だった母親の若きルーにイランでの任務中に助命のための苦肉の策として捨てられており、それを恨みに成長してグリーンベレーとなりつつも人間性を屈折させて戦争犯罪者に成り下がってしまったのでした。
 フィリップによるヴィーの拉致は、一度は家庭を持ちながらも暴力を振って妻や娘を傷つけた自身を見捨てたハンナへの意趣返しであるとともに、自分の人間性を屈折させる原因を作った母親ルーへの憎悪の発露でもあった、というわけです。

クリント=イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』は
イラク戦争に於ける優秀な狙撃兵の物語でありつつも、
帰還後にPTSDに苛まれる彼を支える家族の物語でもあったわけで。
実際にはその家族が帰還兵当人から銃を突きつけられるケースも間々あったと
何かで読んだ覚えがありますが、そんな現実を考えると支え続けられなかった
としても責められよう筈が有りません。

 ルーの愛犬ジャックスの助けも借りつつ大雨の山中を追跡するルーとハンナですが、長年の戦いから来る古傷に悩まされるルーと娘の不在と生きていた元夫の恐怖にヒステリー寸前のハンナの不和がまた悲壮感を一層際立出せます。

事件の遠因がルーに在ると知って激高するハンナが
母親に向かない人間も居る‼」と己の深い悔恨と自殺未遂の背景を覗かせる
ルーの叫びに息をのむシーンがなんとも身につまされます。

 途中の小屋でのフィリップ配下の男たちとの格闘戦以外、派手な戦闘描写は有りませんが、それだけにルーが老骨に鞭打って満身創痍で己の現在に立ち向かう悲壮感がよく表れています。

濡れそぼった髪が滴る瘦せた相貌に不釣り合いな鋭い眼光が恐ろしいですが、
クライマックスまでの大雨が彼女の受難の象徴であり、
また彼女の現在を洗い流す表象でも有るのかもしれません。

 嵐が一夜明けて晴れ上がった海岸の灯台がヴィーを拉致したフィリップとの対決の場となりますが、本作のユニークなところはそこからはほぼ対決の主人公がハンナに移っている点です

真っ先に灯台に駆け付けてフィリップからヴィーを逃がしたのが彼女であれば、
追い縋ろうとする彼を撃って刺したのも彼女。

 義理の母であるルーと一晩を共に過ごして彼女の深い悔恨と懺悔を聞き、闘う姿を目の当たりにしたことで娘の庇護者としての力を受け継いだかのようです。
 
 その後はハンナとヴィーが逃げ延びて後のルーとフィリップの現在の親子の海岸での一騎打ちですが、地元警察の介入を強引に阻止してルーが握るCIAの弱みもろともフィリップと共に彼女を始末しようとするCIAの姿はなんとも露悪的ですが、最後の最後の事態収拾にのみ出張ってきたことで本当の諸悪の根源が何か端的に示した演出だったともいえるかもしれません。

"無事生還した保護対象を遠くから見ているのは死んだはずの…"
というラストシーンは同じネトフリ映画のこの『タイラー・レイク -命の奪還-
そのまんまだったのがちと玉にキズでしたが…。
まぁ、余韻としての演出の鮮やかさと反響次第での続編への引きを
両立させる手としては妥当だったのかナ。(*´罒`*)

 その他、気になる点としてはベテランバイプレイヤーのマット=クレイヴン演じる島の保安官とルーとの冒頭での銀行駐車場での短いやり取り、そして彼女の身を案じて浜辺に駆け付けるシーンは見ようによっては老いらくの恋の淡いシーンとして印象的だったので、彼がぶっきらぼうなルーを憎からず思っている経緯がもう少し語られればルーの根底にある優しさと人間性が深まったようにも思えました。



Ⅱ. 監督だったりキャストだったり

・監督 - アンナ=フォースター

長編映画は2016年の『アンダーワールド ブラッド・ウォーズ』に続いて本作が2本目。
他には『ホワイトハウス・ダウン』の撮影やドラマシリーズ『アウトランダー』の演出を担当。

 『~ブラッド・ウォーズ』についてはシリーズ5作目ということもあって既に出涸らし感が有ったのでそこが監督デビューとはちと可哀想というか。
 あちらの作品にしてもこちらにしてもなんだけど、なんかしら異様に凝ったカメラワークとか拘りの演出があると次の作品に注目できるんですが、とにもかくにも2~3か月で撮り上げるのに必死でそれどころではなかったのかも。

・主演ルー役 - アリソン=ジャネイ

個人的に思い出すのはスキャンダラスなフィギュア選手トーニャ=ハーディング
半生を描いた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』。
"あの母親にしてこの子有り"というこちらも強烈な主人公の母親役。
なんとも屈折した娘への愛情が胃もたれ間を誘いました…とさ。

 ある時は狂おしい母親だったり、またある時は冷徹な上司だったり・・・日本でいうと岸田今日子さんみたいな感じでしょうか?
 日本でもそうですが、男性はおじいちゃんになってもアクションされてる俳優さん多いですが女性は中々生涯現役でアクション、という方はお目に掛かれないので、続篇あるならぜひとも本作に勝るとも劣らない活躍を期待したいところであります。

・ハンナ役 - ジャーニー・スモレット=ベル

何処かでお見掛けしたと思ったら『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の
闘う歌姫ブラックキャナリーでした。
確か本作、公開と同時ぐらいに緊急事態宣言出されて結局劇場では観なかったのよね。
後々配信で観たけど、他の女性陣の活躍の場を作るためか、ハーレイ・クイン
やたら逃げ腰だったのがちとフラストレーションだったよなぁ。

 ちなみに同じネトフリ配信のSFサスペンス映画『スパイダーヘッド』でもヒロイン役。そっちも前に記事書いたのでよかったら併せてドウゾ。



Ⅲ. おしまいに

 というわけで今回はNetflix独占配信映画『LOU/ルー』について書きました。
 とどのつまり、女性の強かさを描きたかった作品だと思うので、多少アクションシーンの尺を犠牲にしてでもそのへんのドラマを濃縮して描くべきだったかも。せっかく祖母・母・娘と揃っているので娘のヴィーも幼いながらに毅然と父親への思慕の情を捨てて拒否する意思を描ければより重層的になったかも。

そういう意味ではもし次作あれば『ハロウィン(2018)』を
参考にしてくれると面白くなるかも…?

 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




"ルールールールーッッッ!!"

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