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ニッポンの誇るべき職人技術


note 41日目。


発想の転換で、日本の職人技術を生かした大ヒット商品を生み出し、倒産の危機から一転『 V字回復 』した会社のお話。


その会社があるのは、石川県金沢市。

金沢は江戸時代より続く左官職人の町。

金沢のある北陸地方は乾燥した気候で火災が多く、耐火性に優れた漆喰の壁をつくる左官が一大産業だった。


大正時代から続く左官業者『イスルギ』。

1970年の大阪万博では、各国の展示建物の壁を任されるなど、腕利きの職人を何人も抱える金沢の中でも指折りの会社。


そんな『イスルギ』も1990年以降、業績が大幅に落ち込み、創業以来の危機に追い込まれた。

『塗り』壁から、コストも施工手間も大幅にカットできる『壁紙』の時代へ。その流れは止まらず、どんどん左官の出番は少なくなっていく。このままでは、会社も『腕』の立つ職人たちも失ってしまう。


『イスルギ』はやむなく新規事業に乗り出すことを決めた。


白羽の矢が立ったのは、営業担当の石動博一 ( イスルギヒロイチ ) さん。職人たちを守ってほしいという社長の命を受け、動き出した。


『壁紙』と戦っても勝ち目はない。それならば、全く別の道を探そう。

『壁=左官』という考え方をばっさり切り捨てた。それは前代未聞の試み。


それ以外に『左官産業』を残す道はないと考えたイスルギさんは、積極的に異ジャンルの人たちから知恵を借り、新しい商品のアイデアを、次々とカタチにしていった。


左官職人が手掛けた壁は、世界的に評価が高い事に目を付けた。職人の高い技術を駆使した アート作品を作り、海外へ広めれば仕事の依頼が集まるかもしれない。

そこで、額縁状の『左官アート』というものを作った。

しかし、これは 全く売れなかった。その後も、職人の技術を生かした商品を次々と作り出すが、ヒット商品はなかなか生まれず、会社の業績はますます下がり、2006年には過去最低の売上を記録した。


自分たちの技術が詰まった新商品は全く売れない。余計な仕事ばかりが増え、プライドも傷つけられた職人たちは、イスルギさんに反感を持つようになっていった。そんな職人たちをなだめていたのは、最古参のベテラン職人の『カジ』さん。カジさんもまた、若い職人たちのために、なんとか左官事業を存続させたいと願っていた。

だが、そんなカジさんの願いも空しく、ついに職人のリストラ話が持ち上がる程、会社は存続の危機となった。

どんなに自分たちが頑張って稼いできても、無駄な『新規事業』に売上を取られ、おまけにリストラまでされてしまうかもしれない。職人たちの怒りはピークに達し、イスルギさんの新規事業を手伝っていた、カジにまで怒りの矛先が向けられ、他の職人たちから避けられるようになっていった。


ところが、2010年、思わぬところから事態は大きく転換していく。


いつもと同じようにイスルギさんはカジさんに『新商品』のアイデアを持ちかけた時のこと。イスルギさんに対する苛立ちがピークに達していた職人が、近くにあった水の入ったバケツを蹴り上げた。

その時、練習用の左官壁にかかった水があっという間に壁に吸い込まれていくのを目にした。

ものすごいスピードで吸い込まれる水。

それと同時に、お風呂上りに びしょぬれの足でリビングに来てしまう娘さんの姿を思い出した。


『 コレだ!!』


そこから、左官技術を使った『あるもの』を作ろうと思い立った。珪藻土は強力な吸水性があるものの、脆さが弱点。でもそこは高い技術を持った職人が集まる『イスルギ』。ベテラン職人のカジさんを中心に、開発に向けて準備が進められた。


長年の経験により培われた独自の配合で、珪藻土の脆さを補い、圧力に負けないためのマイクロ単位で平面の調整がなされ、ついに、お風呂場に革命を起こす商品が生まれた。


それが、『 soil 』という珪藻土のバスマット。


イスルギは『日本発の珪藻土バスマット』としてこれを発売する。

サッと 水を吸い込む このバスマットは、すぐさま話題に。

今では、30億円を売り上げる大ヒット商品となった。


このバスマットにより、左官職人の技術が再注目され、『イスルギ』は世界遺産である『姫路城』や『大阪城天守閣』の大改修など、歴史的建造物の修復依頼が殺到した。

そして、『イスルギ』は V字回復を果たす。



職人を救いたいという『オモイ』と、『職人の技』が奇跡を起こしたお話。

改めて、『オモイ』をカタチに出来る、日本の職人さんはすごい ( *´艸`)





今日も一歩前へ。

http://k-isurugi.co.jp/aboutsoil





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