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東京の東側、美味しいものだらけ

幡野さんのワークショップの後、錦糸町駅の改札でいとこと待ち合わせた。
「わたし今日コンタクト入れてなくて!見つけて!」
とラインが来た直後、目を細めた険しい顔のいとこが私の前を通り過ぎて、笑った。
会うのは約5年ぶり。
「よく来たねー!」と笑う彼女は相変わらず元気そうで、輝いてる。
今夜は彼女の家に泊めてもらい、明日は東京の美味しいものを食べ尽くすのだ。

焼き鳥が食べたいという私のリクエストに応え、駅近のコスパ抜群な焼き鳥屋さんを予約してくれていた。


錦糸町は東京の東側で、ほぼ千葉県みたいなもんで、治安はあまりよろしくないと教えてくれた。
駅から店までの短距離に、ラブホテルが普通にあった。
店員さんは顔にピアスをいっぱいつけていて、ちょっと怖い。
つくねを二人前頼んだら、結構大きいから一人前を二人で分ける方がいいと教えてくれた。
めっちゃいい人やん。

朝5時に大阪を出て、ワークショップで体力を使い果たした私は、かなり疲労していた。
絶対に悪酔いするのでお酒は飲まないと決めていたのに、気づいたら普通に飲んでいた。
ビールも日本酒も焼き鳥も、何もかもうまい。
体力がみるみる回復してくのを感じる。

いとこと、つもりつもる話をした。
5年間で、お互い色んなことがあった。
それと同じくらい、食べ物の話をした。
卵の甘さと、とろろ昆布の相性が最高だねーとか。
そら豆かぁ、もうすぐ春やなーとか。

お互いのこと、家族のこと、過去のことや、この先のこと、目の前の美味しい食べ物のこと。
何を話しても楽しくて、落ち着く。

ひとり3000円くらいで、大満足だった。
店を出て駅に向かう途中、コンビニから出てきた顔面ピアスの店員さんとすれ違った。
感じたのは、恐怖ではなく愛着だった。


いとこの家は、錦糸町からバスで数分の静かな街にあった。
疲れたでしょうとお風呂を溜めて、なんかすごい疲労を回復してくれそうな入浴剤を入れてくれた。
お風呂上がりに、コンビニで買ったアイスを半分こした。

入浴剤のおかげか、翌朝はスッキリ目覚めた。
前夜にあれだけ飲食したのに、既にお腹が空いていた。

いとこは昔からスポーツが得意で、スポーツと共に生きている。
私も彼女のように東京の街を颯爽と走りたいと言ったけど、到底無理なので歩くことにした。


錦糸町に向かうバスの窓から見た、開店前のパチンコ屋にすごい行列ができている光景が衝撃的すぎた。
「これが錦糸町です・・・」と、静かにいとこが言った。
ラブホ、パチンコ、顔面ピアス。
これが錦糸町か・・・。


と思いながら朝の錦糸町を歩いていると、ほのぼのした団体に遭遇。

懐が深い街、錦糸町。


良い銭湯があるんだよと、案内してくれた黄金湯。

クラフトビールの醸造所もあって、朝から走った後にひとっ風呂浴び、ビールを飲むという至高の休日を提案してくれた。そおいうの、めっちゃ憧れる。


少し歩いたところに佇む、可愛いパン屋さんで朝食を買う。


機械の中で、パン生地が暴れていた。

フルーツサンドが有名みたいだけど、サンドイッチも美味しそう。


私はいちご、いとこは洋梨とアールグレイのフルーツサンドを買った。
鯖のサンドイッチを半分こした。
コンビニでコーヒーを買って、スカイツリーを見上げながら食べた。

鯖はさることながら、蓮根や人参の味付けも美味しい。
パンに鯖、あうね。



雨が降っていたけど、2月末とは思えないほど温かい日だったので、歩きやすかった。
気づいたら、隅田川まで来ていた。

あ、ゆりかもめ!
いとこが、「後でゆりかもめに乗るよと」言った。
なんか分からんけど、楽しそう。

ビールの形をしてるビル。
アサヒビールの本社だと聞いて、めっちゃいいと思った。

スカイツリーを背に隅田川を渡ると、浅草に着いた。
修学旅行生や外国人観光客で、かなり賑わっていた。
さっきまで錦糸町にいたのに、ちょっと歩いただけで全く違う世界に来たみたい。
東京って、面白い。


舟和の芋羊羹が最高らしいので、買って食べてみた。


幡野さんの教えの通り、写真を撮るときは、しれっと自然に撮る。
「笑ってー」「美味しい顔してー」とか、絶対言わない。
なのに、この100点満点の表情。
芋羊羹への愛が伝わる。
舟和の芋羊羹は、ほぼ芋だった。
美味しかった。


それから地下鉄に乗り、豊洲に向かった。

経由地の月島で、突然いとこが思いついたように「ちょっと、いちもんじゃ行っとくか」と言った。最高。


彼女が咄嗟に頼んだ「しそ香るキャベツとキュウリとみょうがの浅漬け」が、かなり良かった。
最高の箸休めやなーと言ったら、「この箸休めの大事さを語れるのが嬉しいのよ」としみじみ言っていた。
「美味しい」の感覚がピッタリあうって、嬉しいよね。


いろんなもんじゃがあったけど、王道の明太もちチーズ。

店員さんに焼いてもらう。

ベビースターもトッピング。お子ちゃまと言われようと、これは絶対いる。

粉雪のように降り注ぐチーズに、感激している。

めっちゃ嬉しそう。

ビールもおかわり。
あつあつもんじゃに、冷たいビール。
平日の昼間から、幸せ。


「全然晒されても大丈夫!」と、写真の掲載を快諾してくれた彼女に感謝。

このおいしそうな明るい笑顔を見てると、おなかがすいてくる。
元気が湧いてくる。

老若男女陰陽問わず、色んな人を愛し、愛される才能がある彼女。
歳下だけど、尊敬するところがたくさんある。


そして、ゆりかもめに乗った。
しかも最前列。
ゆりかもめ、めっちゃ早い。
楽しい。

先日オープンしたばかりの、豊洲 千客万来という施設に来た。
色んな飲食店や温泉が集まっていて、雨の平日にも関わらず大盛況だった。

豊洲といえばお寿司、海鮮、卵焼きとかのイメージだけど、どの店も大行列で、お腹と時間にあまり余裕のない私たちは、どこで何をしようか迷っていた。

あまりの人の多さに少し疲れてきた頃、見つけてしまった。
これしかないと思った。
〆はやっぱり、中華そば。
完璧な美味しさだった。


楽しい時間はあっという間。

新幹線の改札口で別れるとき、なんだか急に切なくなって、彼女を抱きしめた。

子どものとき、父の故郷でありいとこの実家がある秋田県で、年に1回のお盆休みに集まる風習があった。
優しいおじいちゃんとおばあちゃんに、毎食豪華で美味しいごはん。
夏なのに涼しい秋田で、いとこたちと過ごす夏休みは、とても特別で楽しい時間だった。
大阪に帰ってくるとたまらなく寂しくて、ひとり泣いていた年もあったことを思い出した。

祖父母が亡くなってから遠い存在になっていた秋田の思い出が、彼女と過ごす時間の中で鮮明になっていた。

優しくて、穏やかで、あたたかい人たちに、おいしいごはん。
昔から変わらない、いとこの笑顔。
大切な繋がりを思い出した。
本当にありがとう。

「今回は東京の東側をほぼ制覇したよ」と誇らしげに教えてくれた。

東京の東側は、おいしいものだけだった。

北、南、西側も、絶対に制覇したい。

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