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希美センパイと相性悪くないですか 「リズと青い鳥」感想メモ

どうも、響け!ユーフォニアム布教委員会です。

2018年の4月後半。ゴールデンウィーク直前という、1年で1番映画業界が盛り上がる頃に公開された「リズと青い鳥」。スピンオフ元の作品である響け!ユーフォニアムが好きだったのでゴールデンウィーク中に劇場でしっかり観たくせに、自分の中で消化不良を起こして感想を整理していなかった。

とはいえ記憶に埋もれさせるのはあまりにも勿体無いので、暇な3連休にかこつけてPVを横目で追いながら感想を書き殴っておく。

ネタバレあり。



■ストーリーとテーマ

この映画は北宇治高校吹奏楽部の3年生、鎧塚みぞれと傘木希美の2人の関係だけに徹底的にスコープしてお話が進む。黄前久美子(響けユーフォニアムの主人公)といえど、この作品ではただのやる気のないモブ後輩でしかない。

ひと言で言ってしまうと「中学時代から続いていた"前を歩く希美と後ろを歩くみぞれ"という2人の関係性が、高校最後の吹奏楽コンクールで破局を迎える」のを、約90分間に渡ってあの手この手でこれでもかと叩きつけられる。
かくして軽い気持ちで映画を見に来たオタクは、脳みそを右に左にシェイクされて立ち上がれなくなるという寸法である。

「破局」という言葉を使ったものの2人の関係が変わり始めたことを表現したいだけなので別に悪い意味ではなく、と言いつつ、作中で描かれているのが「2人にとって良い変化」だったのかと言われるとよく分からない。本当に分からない。(立ち上がれないオタク)


■湿度が高い演出

表題にもなっている「リズと青い鳥」は、吹奏楽コンクールの自由曲であり、その"原作"の童話が劇中劇として登場する。ひとりぼっちの少女リズと、その家に遊びに来てくれる青い鳥。楽しく過ごす1人と1羽。
映画の前半は、ずっとそばにいて欲しい・変わりたくないと独白するみぞれがリズで、自由気ままに動く希美が青い鳥のように見えていたのに、後半に入り「希美が望んだから」とみぞれが自ら進んでオーボエを吹き軽やかな演奏を披露した頃にはそれがまったく逆に入れ替わる。青い鳥を自分の部屋に閉じ込めていたリズは希美だったのか。

何よりも分かりやすいのが物語冒頭シーンと、ラストシーンの差。
冒頭はみぞれの視点で朝練のために校門で待ち合わせをしている様子が描かれ、希美が登場して初めてBGMがスタート。廊下をカツカツ歩く希美の後ろを、後ろからのそのそとみぞれがついていく。
対してラストシーンは、(確か)音楽教室でオーボエをちゃきちゃき組み立てて練習するみぞれと図書室で受験勉強をする希美が描かれ、そして夕方、少し離れて一緒に下校していくのだ。

全てのシーンがこの関係の変化を構成していて、そして全てのシーンでみぞれから希美へのひたすら重い感情がつまびらかにされていく。楽器に反射する光、水槽のフグ、みぞれの本気の演奏で涙を流す希美。
これなんですよ。(したり顔)


■変わり続けること

自分は変わらない物語よりも、良くも悪くも変わっていく物語が好きで、特にリズと青い鳥のように「大切なもののために変わることを選んだ」お話はそれだけで評価が100万点ぐらい上乗せされる。

「ここで青い鳥を逃してしまったら、1人と1羽が過ごす楽しい時間は終わり」で、「もしかすると青い鳥は別の要因で死ぬかも」しれない。それでも「リズが部屋から逃さなかったら、青い鳥は冬が来て死んでしまう」から、だから変わる。そして「青い鳥も、リズがそれを望むなら、と飛び立っていく」。ああ。

加点要素の嵐によって脳みその許容量は無事限界を迎え、言語中枢は破壊されるのである。


■余談

自分は「ユーフォニアム」でも高坂麗奈の思考回路に一番共感していたので、今回もみぞれに面と向かって「希美センパイと相性悪くないですか」と言い放ち、練習と称して聞こえよがしに「私が考える最強のみぞれ・希美パートの吹き方」をぶち込んだ麗奈の行動に一番感情移入していた気がする。

つまり「相手を思って縮こまるとか意味分からないんですけど。全力でやれ、自分を押し出していけ」であり、うーん、やっぱり良いなこの女。嫌がらせをしてやろうとかじゃなくて、自分の信念と照らして心底理解できなくてイライラするんだよね。わかるわ。


あと作品全体として、相変わらず映像表現と音響が最高で。特に本気のオーボエ演奏は震えが来るぐらい素晴らしかった。「ダメな演奏」と「良い演奏」がこんなに分かりやすく聞こえるものなのかと。
今春の最後の?劇場版も期待しながら待つことにする。

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