Googleの親会社が保険事業に参入?! 日本の保険業界がデータ活用で勝つには どうするべきか?


「Googleの親会社であるAlphabetが保険事業に参入する」というニュースが一部メディアで報じられました。

この見出しだけを見ると「Googleが検索履歴をもとに保険を売りはじめるのか?!」という捉え方をしてしまいそうです。しかし、公式のリリースを見ると、そうではありません。

まず保険事業に参入するのは、Googleの親会社であるAlphabetの子会社であるVerilyの子会社であるCoefficientという会社です。親戚関係に例えて言うのであれば、GoogleにとってCoefficientは甥・姪です。少し距離があることが分かります。

さらにCoefficientの公式リリースでは「ハードウェア/ソフトウェア/データサイエンスを統合させる強みを生かして、雇用主向けストップロス保険の領域に取り組む」とあります。ストップロス保険は医療費が急増した場合にその支払いを保険会社が補う仕組みで、低頻度・高額補償の領域に該当します。保険の原点に立ち返ると、発生頻度が非常に低くても、発生した場合に高額な費用がかかる病気・事故などにこそ保険をかけるべきです。また、そういった病気・事故は未然に防げるのであれば防ぐべきです。こういった領域をデータを用いて革新していくという発表には期待が高まります。

少し見方を変えると、ストップロス保険は日本おいては高額療養費制度が適用される領域と言えそうです。そう捉えると「日本には参入してくる余地がないから安心」ともなりそうですが、果たして本当にそうでしょうか。



データ活用による保険の最適化

Coefficientの取り組みの本質は、データ活用による個々人の保険の最適化が行われるということです。

これまでは営業の経験やスキル、顧客のリテラシーに左右されていた保険選択が、データによって最適化される可能性があります。誰しもが、その人にとって最適な保障・補償を得られる世界になったら素晴らしいですよね。

さらに、このようなデータを用いた最適化は「勝者総取り」の世界です。例えば、Googleの検索、Amazonのおすすめ商品のレコメンドでは、ユーザーが本当に知りたかった情報やちょうど欲しかった商品が出てきます。このような体験は大量のデータによって実現されています。今からGoogle・Amazonのように大量のデータを得ようとしても難しいです。データの活用とその分析アルゴリズムの最適化は、先にやり切ったものが勝ちという世界です。

保険業界においても各社各様にデータ活用を進めようとしています。総取りするような勝者は現れるのでしょうか。

ただ、保険会社・保険代理店の皆様とお話していると、そもそもデータを活用しようにも、活用できない実態が見てきます。そこには、どのような課題があるのでしょうか。またその課題を解決するために、どのような方法を模索されているのでしょうか。


【課題①】顧客・契約データの分散

まず、保険の顧客・契約データが一元管理されていないという課題があります。顧客・契約データが複数のシステムに分かれて存在してしまっているのです。

地道ではありますが、分散してしまっているデータベースや顧客・契約管理システムの統合、名寄せなどを続けるしかありません。

顧客の方からみても、本来であれば加入している全ての保険が一つの場所で管理されていて欲しいはずです。しかしながら保険APIは銀行APIのようは普及していないこともあり、現状では保険証券の情報をまとめるぐらいしか方法がありません。

昨今、保険管理アプリや保険マイページをつくる会社が増えてきています。こういった取り組みを通じて、保険契約者を主体にデータを統合しようとする動きにも期待したいです。


【課題②】データが分析可能な形になっていない

分析に用いたいデータが、分析可能な形でデータ化されていないというのも課題です。

保険業界においては未だに7~8割の顧客が人を介して保険に加入しています。人を介して保険に加入する際は、顧客の家族情報・経済状況・趣味嗜好など、重要な情報のヒアリングがなされています。しかしながら、これらの貴重なデータは保険営業の頭の中にあり、ほとんどが記録されていません。

保険加入や請求の過程で、紙書類や手書きが多く、それらが分析可能な形でデータ化されていないという問題もあります。

これらの課題は業務をデジタル化することによって解決されます。昨今、ZoomやMicrosoft Teamsなどのテレワークの普及によって、業務をデジタル化することの機運が高まりつつあります。この機に一気にデジタル化を進めたいところです。


【課題③】保険業界と他業界のデータ紐付けが困難

最後に、保険業界と他業界のデータの紐付けが難しいという課題もあります。

例えば、他業界のデータとしては、昨今◯◯Payが盛り上がったように決済データに注目が集まっています。決済データには消費者の日常の行動履歴が詰まっているからです。決済データをもとにして、最適な保険をレコメンドすることには大きなポテンシャルがありそうです。

しかしながら、決済データなどの他業界のデータを取得する際に保険事業でも活用する想定がなされておらず、個人情報取得の同意が取れていないケースがあります。また、他業界と保険業界のデータを一意につなぐような統合IDが存在しないケースもあります。

こちらも地道な取り組みにはなりますが、他業界と保険業界のデータをつなぐための統合IDや認証基盤、データの取得ポリシーを整備していくことば必要でしょう。


地道に着実にデータ課題を解決した者が勝者となる?!

ここまで取り上げた課題のいずれも、解決には時間がかかり、派手さのない地道な取組みになります。将来を見据えてその取組みをやり切った企業が勝者となるのではないのではないでしょうか。

弊社hokanも保険代理店向けにこれらのデータ課題の解決に取り組んでいますが、まだまだ道半ばです。ただ、共同GWのデータ取込みとそのデータの名寄せや、挙績報告の入力フォームの制御とそのデータの集計・可視化など、データの蓄積から分析までの流れは出来つつあります。データ活用の業界最先端事例をつくるべく今後も尽力します。

保険業界にはGoogleで検索しても出てこない貴重なデータが沢山あります。Googleに負けないように、業界をあげてデータの蓄積や活用を推進していきましょう。


※本記事は保険毎日新聞にも寄稿した内容を再投稿したものです。保険毎日新聞からは許可をいただいています。

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