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水が持つ異常な性質

あまりに身近な水ですが、非常に珍しい性質を多く持っています。
そしてその特異性によって地球環境は成り立っています。

例えば水は4℃で密度が最大になります。
4℃以下に冷やすと4℃の水は底に沈み、温度の低い部分が水の表面に上がってきます。水が表面から凍るのはこのためです。
水の量が十分にある環境では、大気の温度が氷点下よりだいぶ下がったとしても、底の水の温度は4℃に保たれます。
その結果、極寒の地でも水中の生き物たちは生きることができます。

表面張力が大きいことも水の変わった性質のひとつです。
液体の中では水銀の次に大きな表面張力を持っています。
高い樹木でも毛細管の中を水が昇っていけるのは水の表面張力によるものです。
※水の表面張力に加え、凝集力(水分子が静電的に引き合う力)によって大木は頂上まで水を引き上げることができると考えられています。しかし数十メートル以上の樹木の水上昇を説明するには不十分として、さらに別の力が働いているとする説もあります。

なぜ水がこのような異常な性質を持つのか、それは水分子の構造にあります。
水分子は4つの頂点をもつピラミッドの構造をしています。
水の持つ異常な性質は、正四面体の構造を形成する傾向を持つ液体(シリコン、ゲルマニウム、炭素、シリカなど)に共通してみられます。
これらの液体は、水素結合、共有結合などの方向性のある結合を持ち、局所的に正四面体的対称性を好みます。
そのことが数々の異常な性質の起源となっています。
(➡︎「水素結合とは」で詳細を記載しています。)

2018年、東京大学とブリストル大学の共同研究により、水の特異性はその特殊な分子配列に起因していることが明らかになりました。

以下に水の持つ異常な性質を41羅列します。

1.融点が高い。2.沸点が高い。3.臨海温度が高い。4.表面張力が大きい。※土壌の保水能力が高い。※高い樹木でも水を吸い上げることが可能。5.粘度が大きい。6.気化熱が大きい。※蒸発するときにたくさん熱を奪う。汗をかくことで体温調節できる。7.融けるときに収縮する。凍るときに膨張する。8.摂氏4度で液体の密度が最大になる。※したがって、温度計には使えない。9.融けるときに第一隣接分子の数が増加する。10.温度が上がるにつれて第一隣接分子の数が増加する。11.圧力を加えると融点が下がる。12.圧力を加えると密度最大の温度が低くなる。13.重水、三重水の物性は軽水と著しく異なる。14.温度を下げると著しく粘度が増加する。15.(30℃以下で)圧力を加えると粘度が下がる。※1000気圧で粘度が最小になり、それ以上加圧すると粘度が再び増加する。16.空隙が多いにもかかわらず圧縮率が小さい。17.温度を上げると圧縮率が下がる(46.5℃以下で)。18.膨張率が小さい。19.負の膨張率。※このような物質は他に存在しない。※氷は温度を下げると収縮するが、-210℃以下で再び膨張に転じる。20.温度を上げると音速が速くなる(73℃まで)。21.比熱が大きい。※天ぷら油は水よりはるかに速く温まる。※サーモスタットとなり、気候を穏やかにする。22.水は水蒸気や氷に比べて比熱が倍以上。23.比熱が36℃で極大を持つ。24.NMRスピン格子緩和時間が低温で非常に小さい。25.溶質分子が密度や粘度などの物性にさまざまな影響を与える。26.水溶液は理想溶液ではない。27.X線回折パターンの異常。28.過冷却水には2つの相と第二臨界点がある。29.水は容易に過冷却できる。30.非常にたくさんの氷の多形がある。31.お湯は冷水よりも速く凍る(Mpemba効果)。32.水の屈折率は0℃直上で極大。33.非極性気体の溶解度は、温度を上げるにつれ減少し、ついで増加に転じる。34.低温では、水の自己拡散は密度・圧力を上げると増加する。35.水の熱伝導率は130℃で最大になる。36.電場中でのH+/OH-イオンの移動度は異常に速い。37.融解熱は-17℃で極大。38.誘電率が大きい。※水道の水に下敷きを近づけると曲がる。39.高圧下では、圧力を加えるほど水分子はより拡散する。40.水の電気伝導度は230℃で最大になり、それより高温では小さくなる。41.温かい水は冷たい水よりも長く振動する。

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