見出し画像

口腔細菌と発がん性物質

近年、口腔細菌がさまざまな病気と関連していることがわかってきています。
2019年、発がん性物質のアセトアルデヒド(ACH)と舌の表面に生息する細菌数の関連に注目した研究が医学誌に報告されました。

ACHは口腔がん、食道がん、消化器がんの発症に関連することが指摘されています。
また、口の中のACH濃度と舌表面に付着した汚れ(舌苔)の面積に関連があることも報告されています。

舌苔のもとになっているのは剥がれ落ちた粘膜細胞や細菌です。
口腔細菌がACHを生産していると考えられます。
そのため、ACHを産生する能力が高い口腔細菌叢を持つ人がアルコールを摂取すると、細菌が分解してACHを産生し、発がんリスクが高まる可能性があります。

2014年10月〜2015年11月までの間に岡山大学病院歯科を受診した39人(男性12人、女性27人、年齢20〜30歳)を対象に検討が行われました。

舌苔の状態が0または1点の人の平均ACH濃度は48.3ppbであったのに対し、3点の人では215.4ppbと高くなりました。
ACH濃度が上昇すると細菌数が増加するという正の相関が認められましたが、年齢との相関は見られませんでした。

ACH濃度が最高の6人と最低の6人で細菌叢の特性を比較しました。
最高のグループでは、ACHの産生能が高い3種類の細菌の相対生存量がより多く、関節炎の発症を抑制する細菌と感染性心内膜炎の原因菌の一種は少ないという結果になりました。
ACHの産生能が高い細菌のうちナイセリア属と呼ばれるものは、がんの前段階として知られる口腔扁平苔癬と関連するといわれています。
中でもナイセリア・フラベッセンスと呼ばれる細菌はより高いACH産生能を持ち、口腔がんの発生原因となる可能性があります。

研究者は「ACH濃度と細菌数が有意な正の相関を示した点は、舌表面に生息する細菌がACHの産生源であることを示唆している」と指摘しています。

舌クリーニングにより舌表面の細菌数が減少し、ACH濃度が低下することが明らかになっています。
舌クリーニングは口の中で産生されるACHを減らし、飲酒者の口腔がんリスクを減らす可能性があります。

舌クリーニングは、歯磨きの後、専用の舌ブラシや歯ブラシを使って、鏡を見ながら行います。
舌を思いきり前に出し、奥から手前に、軽い力で行うことが大切です。
舌を傷つけないように気をつけてください。
頻度は多くても1日1回程度、やりすぎないようにしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?