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ヴォイニッチの科学書

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ボロフェン



2004年に原子1個分の厚さしかない炭素のシート、グラフェンが発見され、2010年にノーベル物理学賞を受賞して以来、さまざまな単層原子シートの研究が進められています。というのも、原子を単層のシートにすると原子のかたまりの時には見られなかった様々な特徴的な性質が表れ、それらの多くが新素材としての価値が非常に高いためです。

そのようなシートはこれまでに、ケイ素、窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどが

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Chapter-590 働かないオジサンたちはいざという時にがんばる?

2016年2月27日 Chapter-590 働かないオジサンたちはいざという時にがんばる?

北海道大学の研究で、働かないアリはコロニーの長期的存続に必須であることが判明したそうです。以前より、2:6:2の法則などがあって、組織の中には優秀な人が2割、普通の人が6割、働かないダメな人が2割いて、仮にその2割を解雇したとすると普通の人から働かない2割に転落する人があたわれて、せっかく下の2割を取り

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天の川の「向こう側」に隠されていた数百個の銀河を発見



夜空を見上げると空気のきれいで街の明かりの無い地域では美しい天の川を見ることができると思います。天の川は天の川銀河に含まれている太陽の仲間の星々の姿ですが、天の川銀河の外の宇宙がどのようになっているのかを観測しようとすると、天の川方向はこれらの星々が邪魔になって観測することができません。そのため、これほどまでに天体観測技術が進歩した現在であっても、天の川の向こう側に何があるのかはわかっていませ

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お腹の中にビフィズス菌がいる人はがん免疫療法が効きやすい?

腸内細菌の種類によってがん免疫療法の効果が人によって異なることがわかってきました。米国シカゴ大学の研究による実験用マウスでの研究ではビフィズス菌が腸内にたくさん住みついているとがん免疫療法がよく効くことがわかりました。がんを発症させたマウスにビフィズス菌を飲ませたところ、がんを治療することはできなかったもののがんの進行を遅らせることができることもわかりました。人間でどうかはまだわかりませんが、抗が

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第7周期までの周期表がついに完成



日本では113番元素の命名権が理化学研究所の研究者らに決定し、日本初、アジア初の元素の命名を行うことが決定した話題で盛り上がりました。日本ではこの話題ばかりが取り上げられましたが、実はこのたび、第7周期までの周期表が人類の歴史において初めて完成することになったのです。というのも、これまで113番と同様に名無しだった115番、117番、118番も命名者が決定したのです。いずれもロシアと米国の共同

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脳の基本構造は5億年以上前に完成していた



理化学研究所、兵庫医科大学らの共同研究グループは、顎(あご)を持たない脊椎動物「円口類」の脳の発生過程を観察し、この種の動物ではこれまで見つかっておらず、人間の脳の構造にも通じる脳の2領域と小脳として機能する領域を新たに発見しました。円口類とそれ以外の生物(顎口類)は非常に古くに進化的な枝分かれをして現在に至っています。円口類において哺乳類と似た脳の構造が確認されたということは、脳の各領域のほ

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食塩の中に海水由来のプラスチック(中国)

身の回りはプラスチックで作られた製品が大量にありますが、これらの一部は自然界に廃棄されて海に流れ込みます。そのようなプラスシックは砕かれたり、紫外線で劣化したりして非常に小さな粒子になります。これらが海を漂い続けるわけですが、中国の研究者らが中国内で市販されている食塩を調べたところ、海水を原料にして作られた食塩1キログラム中には0.2mm以下のプラスチックが600個前後も入っており、年間で1000

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Chapter-589 ジーンタイムリープ作用をトリガーに薬を探す

最新科学情報Webラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」

2016年2月20日 Chapter-589 ジーンタイムリープ作用をトリガーに薬を探す 

あらゆる病気に特効薬が開発され、病気で苦しむ人たちが救われるのは理想ですが、医薬品の研究開発は非常に成功率が低く、莫大な研究開発期間と費用を要します。また、患者数があまりに少なく商業的に成立しない疾患については治療薬の研究自体がなかなか行われません

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Chapter-588 水素さん、250歳のお誕生日おめでとう

2016年2月13日 Chapter-588 水素さん、250歳のお誕生日おめでとう

今年は水素の発見からちょうど250年です。

1766年、イギリス貴族出身の化学者物理学者ヘンリー・キャベンディッシュが金属と酸を反応させることによって人類で初めて水素を取り出すことに成功しました。

水素は周期表の1番であり、最もシンプルな原子であり、誕生から38万年後の宇宙で最初に作られた元素であり、宇宙に

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Chapter-587 多孔性液体爆誕

活性炭やシリカゲルのような、内部に微細な空間を多数持つ物質を多孔性物質といい、家庭用品として冷蔵庫の中やお菓子缶の中で活躍しています。これらにはフィルター効果などがあるので工業的にも使用されているのですが、工場では固体は少々使い勝手が悪く、液体の多孔性物質の登場が待ち望まれていました。

これまで、工場で使えるほど安定なシリカゲルのような液体は無かったのですが、ついにアイルランド、クイーンズ大学の

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脊髄損傷を細胞移植で回復させる

脊髄を損傷すると下半身不随となり、生活の質が大きく低下します。

一度損傷した脊髄は、二度と再生しないというのが現代医療の常識です。ですが、最近の神経科学の研究によるとそうでもないらしいことがわかってきました。脊髄損傷患者の脊髄に神経幹細胞を移植すると機能が回復する場合があるのです。

iPS細胞から作った神経幹細胞を脊髄損傷マウスに移植したところ、移植12週間後の脊髄内ではiPS細胞由来の神経幹

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球状星団で人を探そう



地球外知的生命探しは今も熱心に行われていますが、最近注目されているのが球状星団です。米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの発表によると、球状星団には非常に長い歴史をもち、高度に発達した文明が存在するかもしれないとのことです。

球状星団の星のほとんどは誕生してから100億年もたっていますので、長い期間安定して惑星をはぐくむことができます。その結果、生命が誕生して高い技術を発達させること

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人間の細胞30兆、細菌40兆とする新たな説登場

しばしば、腸内細菌の数は人間の細胞の数よりも多いといわれますが、これを否定する新たな推定値が登場しました。イスラエル・ワイツマン科学研究所による発表では体内の細胞と細菌は近い数であるとのことです。つまり、人間は30兆の細胞でできており、約40兆の腸内細菌を飼っているのだそうです。今回発表された数字は平均的な男性の結腸の長さ41センチと便1グラム当たりの細菌数から算出したものです。

ちなみに、科学

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高分子甘味料

甘い食べ物やハイカロリーな食べ物はとても魅力的ですね。でも、最近はおやつ1個買うにも裏っかわのカロリー表示をチェックし、しばしそのラベルを見つめた後に、そっと手に取ったおやつを棚に戻す・・・そんなことをしている人も多いのではないでしょうか。

実際問題として近年は肥満をはじめとする生活習慣病が大きな問題となっており、その原因の一つに高カロリーな食品の大量摂取があることは事実です。そのため、多くの低

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