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「更新」のフェイズへ

 最近、NHKのドラマが面白いです。
 平日は朝の連続テレビ小説の「虎に翼」を観て、日曜日は「光る君へ」を観るという一週間です。二つのドラマに共通していることは、女性に生まれたことが現代以上に自分らしく生きにくい世の中で、自分の努力やスキルで人生を切り開いていく様子を見ていると、とても嬉しくなります。また、これが特別な物語じゃなく、もっと「当たり前」のことになっていって欲しいなとも思います。男性社会から求められる「女らしさ」とか全然求めなくていいから、自由に「自分らしく」生きて欲しい、勝手に思い込まされていることから自由になってほしいと。
 で、ふと自分が好きなSKE48を考えてみると、アイドルという職業って、何かとてつもなく業が深いものなんじゃないか、と思うこともあります。その時代、その時代でファンが求めるものに応えようとするうちに、自分のキャパや根幹を変えてしまうという現象が起こっているんじゃないか、と僕は思います。
 それこそ、近年のVTuberをされている方がまとっているキャラクターの性格にリアルの性格が近寄り始めたという現象のように( 去年からこの手の研究が少しずつ論文として発表されてきていて、あと数年したらなんらかの結論が出そうな気がしています )。
 今日、やっと「イワクラと吉住の番組」をTverで視聴しました。
 ゲストは柏木由紀さんと松村沙友里さん、そして、松井珠理奈さん。
 トークでは3人のアイドルならではの記憶力の凄さをまず感じます。完全に感覚が麻痺していましたが、確かに握手会で毎週末に1日で何百人と会うのって他の業界からみたら異常ですよね。ここのトークがアイドルという世界では当たり前のことが、意外と冷静にみたら凄いことだと我々に認識させてくれます。

 で、ここから、松井珠理奈さん関連で非常に印象的なことが続きます。
 まず、嫌いな人がいるかという質問で「3人」と挙げ、スキャンダルにあった方だということと「先輩方がそっちにいっちゃうと…」とという理由も語ります。「刺しにきてる?」と笑いに変えたゆきりんは流石ですが、これって、多分、10年前だと絶対に言えなかったと思うんですよね。AKB48のドキュメンタリー映画でいえば3作目の頃ですから。やっとネタに出来るというか、話てもいいんだ、という柔らかさが生まれてきたのかも知れません。
 さらに、総選挙でトラブった話を自分の口から話し、そこから1位になることを求められていた重圧で、ゆきりんの言葉を借りると「かかっていた」状態で進んでいきます。その結果としてトラブルもあり、休養期間にも入ります。また、乃木坂46がAKB48の公式ライバルとして出てきたことに対して、「SKE48がAKB48のライバルだと思っていたから少し残念だった」という言葉には、嬉しさと懐かしさを感じつつも、ちょっと待てよ、と思いました。
 ひょっとして、「総選挙」や「AKB48を追い越せ」という僕が熱くなってきたもの、「48らしさ」や「SKEらしさ」が松井珠理奈という人の「自分らしさ」を覆い隠してしまったのではないか、と。
 彼女は自分の人生を得点で表した時に、入った時が100点でそこから下がっていったそうです。でも、ある時を境に生き方を変えたといいますか。責任を背負わなくていい生き方へとシフトチェンジしていきます。一度崩れたものを、もう一度「自分らしく」生きるために。
 彼女が創作するものをご存じの方は、彼女がいかに繊細で傷つきやすいか知っていると思います。幼さを感じてしまう方もいるかも知れません。そんな人を若い頃から「強き者」にしていたんだなあ、総選挙1位という「最後の勇者」にしてしまったんだなあ、とふと思いました。
 ここからが複雑なところなんですが、自分が好きな松井珠理奈像は、結構、上記の彼女を覆っていたものに紐づけられていて、「戦闘集団SKE48の若き天才」という源義経とか沖田総司とか、そういう若い天才をイメージしていたんですね。しかし、ご存じの通り、この手の天才たちってもれなく短命ですよね。それに対して、松井珠理奈さんは先日、事務所から独立して自分で仕事を作っています。戦の世が終わって平和な時代が来た感じでしょうか。「鎌倉殿の13人」の中で源義経が平家を滅ぼした後「この先、私は何と戦えば良いのだ」という天才の悲しみを感じる言葉をつぶやきます。そういう意味では、今の彼女は戦い以外の生き方を見つけた天才かも知れません。それは歌の中の言葉を「創る」ことであったり、体温の変化で心を「ととのえる」ことであったり、様々な方法で「自分らしく」生きるための術を見つけていったのかな、と思います。
 この辺りは、彼女のファンクラブに入ってらっしゃる方の方が詳しいと思います。あくまで僕の想像です。
 ただ、時代の流れと共に、少しずつ松井珠理奈さんに求めるものが変わってきたのかも知れません。自分は昔から求めるものは変わらないという方もいらっしゃるでしょう、僕のようなSKE48村から少しだけ離れて、山や森に入ってたまに村に帰ってくるマタギドライブ的ファンは、求めることの変化を感じています。それは、「AKB48を追い越せ」という目標の消失や「総選挙」というゲームの終わり、「恋愛禁止」という暗黙の了解の風化という変化だと僕は感じています。その頃に必要だった「らしさ」がもう必要なくなったのだと僕は思います。もし、必要だとしたら、それは曲の中のパフォーマンスや演技の中でだと思います。
 どうか、彼女の本質にあたる柔らかい部分が求められる時代が、これからは来て欲しいなと思います。繰り返しますが、パフォーマンスの中では硬さというか激しさをどんどん出してほしいと思うんですけどね。
 
 多分、自分のアイドル人生の中で落ち込んだことを語るのは、精神的に負担もあると思いますし、それをまた面白おかしく切り抜いてコタツ記事を書くウェブニュースとかあるんだろうなあ、と思います。あと、Youtubeで嫌がらせの動画ばかり作る人たちとかね( 僕はもれなく『報告』ボタンを押してブロックしています )。でも、その手の閲覧数稼ぎのものが追いつけないぐらい良い評判が広がって欲しいなと思います。その為に、この手のじっくり話せる番組やメディアにはどんどん出て欲しいな、と思います。僕としては、「あちこちオードリー」に出て、若林さんの傾聴する感じで色々と話を聞いてほしいですね。「マジカルラジオ」繋がりでもあるし。

 5年ぐらい前に生まれた悪いイメージを少しずつ「更新」していくフェイズが始まる気がしています。時代で求められるものが変わるように、人も変わります。明日彼女のことを好きな人が一人でも増える、イメージの分断が少しでも「更新」される仕事に巡り合えますように。

※なんとなく、イメージした曲を貼ってお別れです。

 https://www.youtube.com/watch?v=-wb2PAx6aEs&list=RDMM-wb2PAx6aEs&start_radio=1

 
 


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