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この場所にしがみつかせてください

 先日、noteを書いていて気が付いたことがあります。

「あれ? 文章下手になってない?」

 そういえば、ここ数週間、12月頃に書いた自分の文章を読み返していました時も感じました。
 紙の雑誌「かける人 創刊直前号」に載る文章です。
 同じくエッセイも載りますが、これは9月に書いた文章なので、もっと前です。しかし、文章の読み心地は、最新の文章よりもずっと良いのです。
 別に文章を書き続けてなかったわけではありません。
 でも、なにか大事なものが一つ欠けたような感覚に襲われました。
 
 だましだましでnoteの記事を最後まで書きます。そして、いつもの僕の記事ですよ、という顔でアップしました。
 しかし、心の中では同じ言葉がこだまのようになり続けていました。

「あれ? 文章下手になってない?」

 転職してから本作りに携わらせていただくことが増えました。
 ある時は、仲間たちで作った句集。
 ある時は、自費出版の小説。
 ある時は、企業総会の冊子。
 また、ある時は閉校する学校の文集。
 色々な方の文章に触れます。
 なかでもご自分たちでお金を出し合ったり、自分で貯金したお金を出したりして本を出版される方々の本は、とても熱量があって、上手い下手とは違う、何か心を振るわされる言葉が本の中にあります。
 作者の方が内容や文章の相談をしてくださることも多く、僕なりにですが「ここは一般的にはひらがなにした方がいいですよ」とか「一文で動詞が何個もまたがっているので、文章分けましょうか」とか、力になれることをしています。それでも、ふと「いや、文章下手なのに何偉そうなこと言ってんだ」と自分を俯瞰で見てしまいます。

 今年のゴールデンウィークはマガジンで新しい企画をします。
 休みの日は毎日、新しい執筆者の方々が記事を更新していく企画です。
  すでに半分以上の執筆者の方から原稿を読ませていただきました。

 皆さん、本当に発見がある内容で、毎日ラジオで紹介するのが楽しみなぐらいです。
 皆さんの記事を読ませていただき、「ここをもう少し詳しくしてほしいです。ここが面白いとこのコアだと思います」とか「ここは写真も入れていきましょう。解像度が上がると思います」とか返信しながら、「いや、お前の文章はどうなんだよ」というもう一人の自分の言葉が、欠けた部分の空洞から聞こえてきます。

 クラウドファンディングで作った紙の雑誌「かける人 創刊直前号」のリターンで手紙を書くコースがあります。昨夜からこのコースを選んでくださった方のために、手紙を書き始めているのですが、何度も手が止まります。感謝が半分、申し訳なさが半分です。
 こんなやつの考えていることに、質量を与えてくださってありがとうございます。価値を感じて、お金を出していただいてありがとうございます。でも、完成が遅くなってごめんなさい。どんくさくて何回もデータ入稿をミスしてごめんなさい。シャープにしようと思って絞っていったら、前回の半分ぐらいのページ数になってごめんなさい。でも、これより20ページぐらい増えたぐらいが僕の理想なんです。
 やっぱり欠けた部分から声が聞こえてきます。
 「お前は自分がどうしょうもなく下手なのを、借り物の知識やアイドルの体験でごまかしてきただけだよ。全然大したことない」
 寝ようとしたら余震が起こって、また机に戻りました。 

 本日、noteでの「創作大賞2024」の発表がありました。
 今回はホラー小説部門というどう考えても、五十嵐早香さんのためにあるような部門もありますが、僕も今年も小説を書いてみようと思っています。

 人間は不思議ですね。
 原稿を求められると、すぐにタイトルと冒頭部が思い浮かび始めます。
 主人公はこの人で、このことを縦軸に始めよう。
 昨年は締め切り当日に書き上げて、第一審査の基準に閲覧数と「スキ」や「コメント」の数も入るということを念頭に入れていなかったせいで、スタートから出遅れましたが、今年は早めにアップしたいと思います。
 「下手なのに、書くの?」と欠片た部分の隙間から声が聴こえたら、「下手だけど書くんだよ」と答える思います。

 下手なんだけど、好きなんです。
 上手くないので、あれば上手くなっていくには、やっぱり書いていくしかないと僕は思います。
 嫌というほど、現実を知った。
 いかに自分がバカでセンスがないか。
 でも、それはこの文章を書く場所を去る理由にはならない。
 うん、まだならないと僕は思います。
 だから、もう一回、全部と向き合います。
 他の方の文章より下手だけど。
 現実を見て、その中で新しい自分の文体を作っていきたいと思います。
 その先に待っているものが何かは分からないですが、まだここにしがみつかせてください。
 下手なんですけど、好きなんです。
 バカなんですけど、ここにいる時だけ人間らしくなれるんです。
 気づいたらプロになれそうなのに、それでも自信が無いんです。
 いまでも不安で仕方ないんです。
 だから、その隙間を埋めるように、今日も本を読んで、映画を観て、
 音楽を聴いて、心の中にある何かに、言葉や文章という形を与えようとします。
 
 他の参加者を圧倒的な実力でねじふせるなんてできないけれど、書きながら自分の欠片た部分の隙間から聞こえる声が、いつか聞こえなくなるように、創作をしてみたいと思います。ある時はパソコンに向かいながら、ある時はスマホの画面で、またある時はメモ帳を片手に海をみながら。
 
 うん、聞こえてる。
 分かってる。
 全部、分かってる。
 でも、全部認めた上で、
 またゼロから組み立て直すって決めたんだ。
 手癖で書くんじゃなくて、
 自分が一番伝えたいことを
 一番解像度が高く描けるやり方をさがす。

 ここから僕が創るものたちを。
 新しい成長を楽しみにしておいてください。
 
 
 

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