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いつだって簡単に迷子になれる

新しい年になってしまった。なんとなくいまの自分を定期的に記録したくて始めたnoteは、自分のルールで必ず月に一度は「〇月の記録」としての記事を書いていたけれど、この先も続けるならいつかタイトルが重なってしまうことに唐突に気が付いた。
タイトルをつけるのは本当に苦手なので、できることならば避けたい。頑張ろう。

勤務先が遠いため、私は昨年から初めて定期券を買って毎日のように電車に乗っている。幼稚園から大学までずっと自分で歩くか自転車を使っていた。習い事にも家の人が車を出してくれるのは稀で、ほとんど自力で通っていた。

別に電車に乗るのが嫌いだったわけでも、乗り物酔いがひどかったわけでもない。まあ、乗り物酔いはするほうではあるけれど、それよりもっと切実に足りない能力がある。
私には絶望的に方向感覚がない。
どのくらいないかというと、家から5分と歩かないうちに迷子になれたり、ちょっと広いスーパーの駐車場に停めた車にたどり着けないくらい。

そのくせ裏路地や初めて見るお店に惹かれて、すぐ知らない道に足を踏み入れてしまう。「ここを曲がったら大体この辺りに着くはず!」という考えもまるで当たらない。本当に困ってしまう。

そうして今月のある日、仕事が終わり駅に着くと人々がざわめいていた。
駅員さん改札口に出てきてアナウンスをしている。
「ただいま、当駅にて事故が発生しました。運転を見合わせます。再開には1時間から2時間かかる見込みです」
そう聞き取れた。

高校生たちが不安そうに携帯を操作している。私もとりあえず彼に連絡を取った。時間はまだ夕方で、いつも19時半以降に仕事を切り上げる彼に迎えに来てもらうのは難しいだろうな、と思っていた。
他に帰る手段を探したけれど、ほとんどそんなものはなくて、タクシーはどうかと見ればすでに何人もの人が並んでいる。

彼から返信が届く。こちらの状況を尋ねる彼に返信をしてから、帰る方法を探す。そして一駅だけ歩こうかな、と思った。

良くない考えだと思う。都会ではないし、もうすぐ暗くなる。けれど、このままここで復旧を待つのは寒いし、私は短気だし、歩いていれば何かをしているので気は紛れるし、暖かいし、隣の駅でもこの駅よりは運行再開が早そうに思えた。

そして、私は歩いた。
怖かったし寒かったけれど、興奮もしていた。こんな無謀なことをしてしまう自分に。
幸い次の日はお休みだし、いいや、と思った。何もよくない。
線路沿いに進めば迷わないと思った道は、墓地で行きどまったり、なくなったり、街灯がなかったりして、遠回りをするうちにどんどん心細くなった。
ああ、また迷子だ。
寒くて暗くて心細かった。この年になって何をしているのか。
どうにか隣の駅まで歩いて、そうして無事部屋までたどり着いたけれど、ぐったり疲れていた。

いつだって簡単に迷子になれる。
けれど、そんなに寄り道ばかりしていたくない。
早く在宅で仕事ができるようになりたい。

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