見出し画像

20180302日記

とにかく、疲れていた。
公開日翌日に観に行った映画に元気をもらって生きてきたがその元気もまたしぼんできたから、もう一度元気をもらいに、同じ映画のチケットを取った。
レイトショーだったが間に合わないかもしれないと最近のいつもの時間よりもはやめに退勤し、映画館へ向かう。結果、余裕の時間にチケットを発券することができた。
映画まですこし時間があるしそれなら一杯引っ掛けたいなとおもったとき、その店の前を通りかかった。半分はデリのはかりうり、もう半分は食事ができるようになっているようだった。あまり大きいとはいえないその店で何組かのグループが席を埋めているなか、外を向いてひとりでワインを飲んでいるおねえさんがいた。とてもおいしそうな顔に引き寄せられるようにわたしはその店に決めた。

あのおねえさんみたいにワインもいい。けどわたしはどうしようもないビール党なので一杯目のビールは欠かせない。はかりうりのデリの注文もできるし、別メニューも頼めるようになっていた。
どうしようかなと迷っていると、隣のテーブルでサングリアを飲むおねえさんふたり組が「またパンがきた……」と笑ったのでおもわずそちらを見ると、ピンチョスに豚肉のリエットにアヒージョ。そりゃあねとおもえるラインナップだけど、どれもおいしそうだから注文しちゃうのはしかたない。テーブルに乗り切らないほどの食事を注文しながらこのパンおいしいと言っているのだから「またパンがきた」というのは文句ではない。食事を楽しんでいていいなとほんわりした。
お隣さんをまねしてもいいけど、デリも気になって、結局注文したのはデリにあったキャベツとアンチョビのマヨネーズ和え、みたいなやつだった。おいしいと、メニューの詳細はおいしいことしか覚えてない。ビールというよりはワインにあいそうだけど、しんなりしつつも少しのしゃくしゃくさを残したキャベツとアンチョビとマヨネーズの味の濃さがいいかんじでぱくぱく食べて、ビールもあっという間になくなってしまった。
ふとあのワインのおねえさんを見ると、グラスをからにして外をぼんやり眺めていた。そして店員さんに声をかけてワインをもう一杯頼む。常連さんなのか、店員さんと気さくに話していた。店員さんはボトルを持ってきて、その場でワインを注いでいた。グラスで頼むとその場で注いでくれるお店なのか、そのおねえさんがボトルごと買ったのかはわからない。でも、目の前でお酒がそそがれるってとても幸福な気持ちになる。いいな、とおもったけれど映画の時間が迫ってきたのでわたしはこの日のところはワインをあきらめた。また今度この映画館にくるときにはワインにしよう。

疲れてはいるかもしれないけど、おいしいお酒とごはんを食べている姿は、この店に引き寄せてくれたあのおねえさんみたいに幸せそうな顔になってたらいいとおもった夜。
映画はやはりまたわたしに元気をくれて、残り半分をきった繁忙期をどうにか乗り切れるようにがんばれよと背中を押してくれたようだった。