ここで働いといてなんですけどよくこの店入ってきましたね、と言われたのは、もうビールが二杯目になっていたときだった。
ずっと気になっていた焼き鳥屋さんに、休日出勤をがんばったご褒美としてやってきたのだ。わたしのお昼休みの散歩コースのひとつがそのお店の前を通りかかるのだが、たしかにわたしも散歩をしないと知らない、奥まった場所にある。お昼どきはまだまだ準備中。けれどすこしふるびた雰囲気の看板がなんとなく、とてもおいしそうな焼き鳥の匂いを漂わせている気がしていた。
入ったときにはわたししかいなかった店内もがやがやとしてきて、スーツのおにーさんの団体、おねーさんふたり組、家族連れ。カウンター以外の席が埋まっていく。あんなことを言ったけれど、どうやら人気店のようだった。
ビールを飲みながら、音量をしぼってながされていたオリンピックを眺めていたとき、おすすめの焼酎が飲みたいっす、と元気なおにーさんがわたしの横からカウンターに呼びかけた。おかげで、カウンターの中に珍しそうなお酒の瓶が並んでいることに気がついた。ビール飲もうの一択しかなかった。でもビールおいしいんだもんしかたない。
気がつけば二杯めのビールはからになっていた。焼酎でもいいけど、今日はまた違うお店に行きたいかなとおもった。
休日出勤じゃなくてもまた来てくださいねとお見送りをしてもらった。今度は平日の仕事帰りにふらっと寄れたらいいな。次は焼酎と今はおもっているけど、たぶんまた、わたしはビールを頼んでしまうんだろう。