あたおか散文2020/10月分まとめ

Twitterでつぶやいたものをまとめたものです


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やかましい念仏、殊勝な愚痴

矢印の方向にしか進めない洞窟で、向かい風を飲みこむ

規則正しい石の道、右向け右の意志表示

自分だけ愛されていれば幸せで、自分以外の幸せは暗転に押し込む

安心と快楽と優越

薄々勘づいているのに、一寸先から身を逸らす

乾燥した肌、隣の芝生

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類をみない馬と鹿

逡巡する足取りに冷たい視線が集まる

出来そこないの自己を勝手に投影して、麻薬ちっくな安心感を頬張る雑草の集団、望まぬ輪廻に翻弄されようとも、違和感に物申し続ける逆立ちする愚直な河馬は

正義を仮装した槍に沈んでいった

甘い血は盲目に染みる

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思い出になりさがって色褪せた景色も、思い出にしたくなくて大事に仕舞い込んだ景色も、ただ一度も見返す事なく目の前に流れる景色に時間をさいている

言葉を言葉のままに排泄しては、また新しい言葉を探しに出向く

雄弁な夜は聞き手を求め、徘徊の繰り返し

早咲きの桜が小さく頷いた

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おぼつかない息遣いで駆け抜けた日々に労いを

はち切れた優しさにかろうじて繋ぎとめた常識に弔いを

泡沫の賛美、些細なご褒美

終焉の産声が口から漏れる前に、透明な悲鳴が晩餐会を開く前に

括り取られた運命に降伏を

手繰り創り出した人生には幸福を

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いつから空は羽根を持つもののもんになったんだ?

数本しかない歯を見せながら、老人が笑った

曇ってのは、土が吐いた息のかたまりなんだよ!なあ!

日本晴れの空を指差して、少しえづきながら、数本しかない歯を見せて、老人は、笑った

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辛勝への飛び込み、まとわりついた過負荷

ほおを撫でるように雨が降る

削いでやつれた思考では、花の蜜さえ受けつけない

肥えて傲慢な海からの救難信号、丸見えの落とし穴が並ぶ旧街道

手を振っているあの日の陽炎

そろそろわたしは歩き出そう

さよなら

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逆光する感情、爬虫類の目

煮詰まった嫌悪感が裸で走り出したとき、一雫の宇宙は膨張を始める

洗い落としきれなかった絵の具に、誤魔化しを混ぜ合わせ、丁寧に覆い隠すように

いつか剥がれてしまう嘘ならば、その下にもうひとつ、嘘を仕込んでおこう

火花が舞う、朧に月

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足の長い雨にうつつを抜かしている

道半ばで臥せた希望に首輪をつけて、なんとか引き連れてきた

落ちた視線、笑う沈黙、こざかしい歌が頭から離れない

白紙の約束を追いかけて、恐竜たちの宴にお邪魔したのはいつの頃だったのか

夜更かしが並んだ、よすがの交差点

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手仕舞いの猜疑心

双眸くべし砂塵の果てに、うずくまる霧々の罠

走り回る好奇心は首輪を噛み切って逃げ出してしまった

半分の月、欠けた方が静かに笑う

飽きるまで好きを喰らった夜景を、機械仕掛けの音色箱に転がして入れる

牙城の崩壊、渦巻く屍

永遠の一歩

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立ち込める縹渺、繰り返す卓上の遊戯、野放図の心臓は暗闇も光明も流し回す

整列する自販機の住人が、衰えた不規則をこぞって取り除いている

水際に見た揺れる絵空を、額縁にはめ込む作業

一枚一枚に想いを馳せながら

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降り出した雨に濡れることなく

手に持った傘をさすこともなく

痛みを理解しようにも、傷つくことを躊躇した雷鳴の檻の中

苦しみを分かち合おうにも、ともに背負うことに怯えた水溜りの前

目的と手段と願望と得物

先制点をあげた世渡り上手に、思わず手を合わした

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自分が自分にみる弱さを、明け渡した後に生じる責任から目を逸らしてきた

押し付けられた運命ほど無責任で楽なものはないと、日々の妬みで味付けをする

どこへ行こうか、どこまで行こうか

欲張りな銀貨の表と裏、実現拒否の虚ろ

本物という言葉に沈んだのは、偽物というただの言葉

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取り繕った詭弁、垣間見る郷愁、幼い息衝き

頑なに信じ込む、困難を丸め込んだ先、涙の朗誦

呻く踵を黙らせて、さむからしめる朝日を雲に隠した

いななきの手錠、六曜の万歳

進境はところにより、雨のち曇り

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空気がぱちぱちと音を立てて、わたしの一挙手一投足に呼応する

世界の輪郭がぼやけて、光の屈折が描いた未来に、どこか安心感と臨場感を魅る

はっきりしない心は、弾けて溢れそうな気持ちを抑えて、冷静さを装っていた

水面に反射する満面の笑み、指先

どんな明日に、夢を塗ろうか

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モップの連なる植物園で、筆ペンとスナック菓子の空中大車輪

ヘッドフォンの延長コードはカエルの尻尾に擬態する

軽トラに乗っけたマグカップの大脱走、映画化が決まったらしい

なんら不思議ではないふしぎだらけの世界にようこそ

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自分が忘れられた世界で、自分を唯一覚えてくれてた喫茶店のマスターが、ひかる星のおもちゃをくれた

こちらの視点からは、このお店でくつろぐ人々との記憶が巡っている

どことなくさみしさという言葉が浮かびあがるのをみた

静かに店を出る、星のおもちゃが点滅を始めた

旅だち

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緩やかに伸びる人の影を、あっちこっち飛び跳ねながら、踏まないように帰り道

大人ぶって買った苦いだけのコーヒーは、まだ半分以上も残っている

この街の地下には何が眠っているのだろう

どうでもいい疑問に目線を合わせて、日々をいきる人々から目を背けた

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お茶で濁したきれいな景色

雑談に紛らせた小さな奇跡

横幅目一杯に広げた人生の図式

今何周目なのだろうか、まっすぐ進めているのだろうか

落ちてたなかなか形のいい枝を掲げて、過去と未来と現在を巧みに指揮おりおり

髪を切って、古着を売って、つま先を揃えて、力を抜いて、良き

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色のない夜を走り抜けて、上がった息で行き先をうたった

非情の地図を丸めて三日月に投げたら、木の階段が螺旋を描いて空を覆う

海は荒れ、2人乗りの船は波の手のひらの上で無様に踊った

甲高い笑い声と気の利いた冗談が、しぶきになって舞っていく

一張羅の戯れ、繋がる雷

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溶けていくチョコレートに混ぜ込んで、一緒に溶かした秋の空

焦げついたフライパンを水につけ置いて、テレビのリモコンを探す

ため息で冷ましたコーヒーを、固定してしまった思考にゆっくりかける

そわそわする気持ちを何度目かの深呼吸で落ち着かせ、叶った願いを招き入れた

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強い言葉で自分をまもる人も、弱い言葉で自分をかたどる人も、そうすると決めた瞬間がきっとあって

目次に記載されないような、些細で痛々しい風が、勝手にページをめくって

涙を流す暇さえもなく、歩みを前へ前へと進めてきたのだろう

生きるために、ただ生きるために、ために

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嘘吐きのうたった真実の歌に流れた涙は、わたしにとっての本当で、禅問答に浮かび上がった分け隔てない落胆

好き嫌いが変わったのでなく、好き嫌いがわかったから、手に取るものが明確になったに過ぎなくて

繰り返しをする毎日は、未だにぼんやりとしか姿を見せてはくれない

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前を走る車のお尻に、青い空がくすみながらうつり流れていく

音楽と心だけがお喋りをつづけ、声が喉を通らないぼくは、1人で信号の相手をしていた

気を使えない運転だけを目がひろう

消し去りたい過去たちがバックミラーの中にならび、ひとつひとつ嫌味を言って最後列に並び直した

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疾走につぐ疾走

やわいエンジンが期待以上でこたえる

喜びで軌跡をかき混ぜて、逸脱したハイライトと抱き合った

誇張した未来が自ら扉を開け、祝杯の準備をしている

遠回りを飲み下し、近道という看板を蹴り飛ばしてた、あの映画はなんていうタイトルだっけ

燕の巣、羽衣、結

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水溜りを自転車で駆け抜けて、後輪に水しぶく羽根をひろげたら、ぐっとペダルを踏み込んで、どっとハンドルを手前にかたむける

重力から解放されて、目線は斜め上を指して、漕ぎ回す足が軽くなって、群青に溶け染まって

そのまま空を越えて、明日に向かって

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審査基準の曖昧さによる手枷を喜んではめる

冷めた光で編んだ愚かな自責をすする夜

半開きの引き出しから漏れた古い叙情詩の嗚咽

壁が歪み、炉は灯る

四肢の震え、うがつ咆哮

かすかに見える白い歯と、語尾が上がる短いため息が、小さな鍵穴を貫いた

不壊の心臓、不変の往来

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震える心臓でかろうじて息ているような

陽の光のあたたかさや、撫でる風のやわらかさ、ゆれる水のあでやかさがわたしの身体を洗い流してゆく

何もなくなったように、まっさらになる

それがどこか物足りなくて、大嫌いと許せないで汚した自分を、いつまでも大事に抱き寄せて眠る

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ぱっと開いたトリプシード

ゆるやかかろやかすったんころげて、レプチトリロファンは空を羽織った

コーズモリアたちが指さす方角を真っ赤なルイルヴァーチが埋め尽くす

笑ったカトラリ、夢見たコクピット

最後のジスクジスラは貴方にあげる

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