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決して振り向くな!何が起きても…

すべては、人生最高のパーティーと共に始まった。美しい人々と素晴らしい音楽に包まれ、参加した全員が運命を共有していた。

朝6時30分、突然音楽が止み、人々は頭上を見上げた。迎撃ロケットや近くに落ちたロケット弾の煙が上がっていた。この時点では、僕らは事態の深刻さを全く理解していなかった。兵役中にこのような経験をしたことがあった僕は「ガザの戦闘部隊にでもいるみたいだな」と、友人たちに言った。
僕は続けた。「天蓋エリアに引き返して、大事なものだけを持ってこよう。車に戻って近くの交差点まで運転して、防空壕に入るんだ」今にして思えばその提案は、僕が考えつく選択肢の中で最悪のものだった。幸い、僕たちはそのアイデアを実行することはなかった。

駐車場を出ようとしたが、そこは大渋滞だった。ようやく道路にたどり着き、左折して北のキブツ・ベエリへと向かった。
しかし、ほんの数百メートル進んだところで、違法にもかかわらず道路の白線を横切って車が次々と引き返し始めていた。人々は車の窓から「引き返せ!迫撃砲だ!」と叫んでいた。テロリストの集団がノンストップで発砲しているのだと分かったのは、数分後のことだった。

僕たちは来た道を引き返し、再びパーティー会場の駐車場に連なる渋滞にぶち当たった。パトカーと救急車のそばを通ったとき、窓越しに彼らがこう叫ぶのが聞こえた。「MCI!MCI!トルコ騎兵だ!」MCIとは、Multiple Casualty Incident(多数傷病者事故)の略。トルコ騎兵とは、潜入者の暗号だ。足に銃弾の傷を負った少女と少年が救急車に助けを求めていた。南方からの銃声はどんどん近づいてくる。なぜ人々が車を前進させないのか分からなかったが、おそらく道路にはすでに死体が横たわっていたのだろう。

僕たちは、車を捨てて荒野へと走って逃げることを決意した。数分おきに雑木林で立ち止まってはどうするか考え、結局、ただひたすら走り続けた。あらゆるシナリオが、頭の中をノンストップで駆け巡った。一緒に荒野を走る人たちは何百人もいた。全速力で逃げる中、1台のパトカーを見かけた。乗っていた警察官は足に銃弾を受けていたが、車を降り、自分の代わりに女の子を車に乗せ、彼は走って逃げ続けた。

数百メートルを全力疾走し、立ち止まるたびに、僕たちに向かって銃が乱射された。約2時間、徒歩で走り続ける中、考え続けていたのは「何が起きても、絶対に振り返るな!」ということだった。恐ろしい光景と、すぐそばで倒れていく人たちを直視することは、とても絶えられなかったのだ。

僕の脳の半分は楽観的だった。「大丈夫、なんとかなる」しかし、もう半分はかなり悲観的だった。「テロリストたちは全方位から僕たちを取り囲んでいて、もう逃げ場はない。銃声がだんだん近づいてきている。もうこれでおしまいだ」それでも、僕たちは走り続けた。

約2分間のラストスパートの最中、銃声が頭上に迫ってくるのを感じた。しかし、神の守りか、こうした状況では小川の中や雑木林の近くを走るべきだということを、軍での戦闘経験から僕は知っており、友人たちを誘導して走った。そのおかげで助かったかどうかは定かではないが…

農地が広がる急な上り坂に差し掛かった。この時すでに、テロリストたちは僕たちに追いつき銃弾を浴びせていた。もし振り返っていたら、僕は地獄を目の当たりにしていただろう......農地の頂上に着くと、道路から畑に逃げ込んだ車の一団が見えた。僕は友人たちに「最初に見つけた車に乗って脱出するぞ」と叫んだ。ある車に乗り込もうとしたが、鍵がかかっていた。窓をノックしてドアを開けてもらった。間近に迫った銃声は、弾丸が近くに当たると信じられないほどの大音量になる。それでも、車に乗っていた人たちは、僕たちのためにドアを開けてくれた。僕たちは中に飛び込み、命からがら逃げた。数分後、銃声は聞こえなくなった。マップアプリを開くと、車はイスラエルとガザの地境から離れ、国道232号線に出ようとしているのだと分かった。後に国道232号線には、何百もの死体と燃えた車が溢れることになるが、僕たちはその道を通ってキブツ・ツェエリムに脱出することができた。神の守りと数々の奇跡のおかげで僕たちは無事でいられたのだ。

親友、故・ドリン・アティアスについて触れておきたい。彼の名前に「故」とつけるなんて、全く馬鹿げている。悪夢のようだ。ドリンからかかってきた最後の電話に、命からがら逃げていた僕は応答できなかった。君を恋しく思うよ。愛している。君を決して忘れることはない。これからも僕の心の中で生き続けるのだから。

ヤニヴ・M


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