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『家の中に、テロリストがいる』と言うメッセージが届き、すぐ側でアラビア語が聞こえた

10月7日、朝6時

緊急警報が鳴り響いた。
こんな朝早く?土曜日なのに?

昨夜から、オメルにある祖父のシナゴーグでのシムハット・トーラのお祝いに行こうかどうか、迷っていた。これじゃあ、もう行けないね。

ダニーと私はベッドから飛び降りて、ダニーはヤティールを連れてセーフルームに行くために右側の部屋へ、私は左側の部屋で寝ている娘達たちをセーフルームに行かせるために起こしに行った。その途中タヴォルと廊下ですれ違った。彼女は警報を聞いて目を覚ましたので、自分でセーフルームに向かっていた。私はそのままアーベルの部屋に向かった。ドアを開けると、ヤティールもそこでぐっすりと寝ている。(ヤティールはいつの間にか、アーベルの部屋で寝ていたよう)。私は2人を起こし、「緊急警報よ」と叫び、みんなでセーフルームに走った。後ろの玄関も鉄格子もきちんと閉まっていることを確認した。サイレンは鳴り止まなかった。 

きっと警報はすぐに終わるから、また寝ようと思っていた。セーフルームに長くいるのは快適ではないので、早くベッドに戻りたかった。

アーベルはこらえきれずにすぐに震え始めた。私は彼女を落ち着かせ、タヴォルも「神様はきっと私たちを見守っていてくださる。心配しないで、私たちを見守っていてくださるから」と言って、彼女を慰めてた。

数分と絶たないうちに、窓の外で銃声がした。その音はとてつもなく近かった。いつもの侵入とは違うことは明らかだった。私とダニーは、子供たちに不安を悟られないよう、お互い怯えた視線を交わした。テロリスト側だけが一方的に発砲してるなんて考えるのは、恐ろしすぎる。私は、この銃声はテロリストと兵士の間で行われている銃撃だと考えることにした。

少し時間が経ち、携帯を寝室に置きっぱなしにしてきたことに気づいた。一方、ダニーとタヴォルの携帯にはメッセージが殺到していた。止まない銃声音は、家のすぐ外でなっているように聞こえた。

ダニーはドアのそばに立ち、冷静さを保ったまま、取っ手を強く握りしめた。私たち2人は目で会話をした。セーフルームの外側からアラビア語が聞こえたので、先ほどメッセージを送って来た隣人のロテムとイディットに返信した。恐怖が込み上げてきた。娘たちがこの緊急事態に気付かないことを願った。もし分かってしまったら、すぐにこの深刻な状況を理解して怖がることは分かっていた。

さらに時間が経ち、父と兄から電話がかかってきた(ダニーが少し前に私の携帯を取りに行ってくれていた)。オテフの村が侵入されたという。私も、今、とても危ない状態にあることを伝えたかったけれど、子供たちに聞かれるのが心配だった。気づかれないようにヒントを送ったら、二人に伝わり、彼らは愕然としていた。

長時間、セーフルームにいるのは至難の業だった。
子どもたちがトイレに行きたいと言ったので、ヤティールのゴミ箱をトイレとして使った。ママ友グループからのメッセージも絶えない。「テロリストが家の中にいる」「家が焼けている」など、みんなが救助を求めていた。みんなのことを思うと、胸が張り裂けそうだった。こんなに近いのに、助けに行くことが出来ないなんて。

ついに、私の体にも異変が起きてしまった。何回かダニーを説得して、ドアを開けてもらい、トイレに走った。トイレに座っていると、窓の外からアラビア語の叫び声が聞こえる。ハッと衝撃を受けた。テロリストがすぐそばにいるのだ。自分たちの身は自分たちで守るしかない。私は青ざめながらセーフルームに戻り、ダニーに包丁を持ってくるように静かにささやいた。彼はすぐに包丁を取りに行き、セーフルームに再び閉じこもった。水も食料もないまま。

おそらく何時間も経って、私はまたトイレに行きたくなった。またトイレに行かせて欲しいとダニーに頼んだ。ダニーはその隙に急いで水とスナックを取って来た。セーフルームに戻ると、ヤティールがお菓子を食べていた。私はダニーの行動力に感心した。

この時すでに、タヴォルは事の重大さに気付いていた。最初は楽観的であった彼女も今では恐怖に怯えていた。落ち着かせようとしたけど、ガタガタと震えていた。

ようやく午後2時半ごろ、兵士たちが家に来た。一瞬の間だけ、水と食べ物を取りに行かせてくれて、またすぐにセーフルームに戻った。チョレント(ユダヤ人が安息日に食べるシチュー)を持ってきたけど、誰も食欲がなかった。

午後4時半ごろ、地域パトロールのリーが来て、他のキブツの住人たちが集まっている公民館に行くように促された。そこに着くと、悲しいニュースを次々と聞くことになった。モル(17歳)と彼女の父親が家の中で殺された。前の日共に夕食をし、夜中三時までタヴォルと楽しく過ごしていた陽気なモルは、死んでしまった。心優しい隣人のロイも亡くなった。キブツの住人は何人か誘拐された。理解不可能な現実が明らかになってきた。

私たちが生きているのは奇跡だった。テロリストたちが近隣のほとんどすべての家に侵入したにも関わらず、私たちの家には侵入しなかったのだ。

次の日、私たちはエイラト(イスラエル南部)に避難した。

ここまで読んで下さった皆さん、ありがとう。

テロリストに襲撃される危険を冒しながらも、私たちを助けに来てくれた地域パトロールの英雄なる皆さんに感謝します。

モル・メイル、ドロン・メイル、ロイ・ポプレベルに心から追悼の念を捧げます。彼らの血に神からの報復がありますように。

マーヤン・P


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