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フジロック配信・アジカンを見た

フジロックは2日目、7/27 16:50からは
誠にありがたいことにアジカンの配信があった。

後藤さんがSpotifyで発表したプレイリストによると
セットリストは以下の通り。

1. 君という花
2. リライト
3. 復活祭 / Easter
4. 荒野を歩け
5. 君の街まで
6. 今を生きて
7. UCLA
8. センスレス
9. スタンダード / Standard
10. ボーイズ&ガールズ


メンバーが登場するなり、われわれに耳馴染みの良すぎるテンポで
四つ打ちが鳴った。
液晶越しにも伝わるほどに高まるボルテージのなか、
ドラムのフィルイン。
ギターのイントロ。
「君という花」!

あっという間に場をつかんだかと思えば
つづけて「リライト」!
オーディエンスがサビを大合唱し、その音の塊に笑って応える後藤さんはマイクを口元から離して耳に手をあてた。音を観客に委ねて、それが熱をもってかえってくる調和の空間。しあわせだ。

興奮冷めやらぬままに
警報が街に響きわたるようなダークなイントロ。
「復活祭 / Easter」!
サビの3声コーラスは厚く、抑揚の少ないメロディーの強さが、ロックの強さが、刺さってゆく。

鍵盤楽器メインの音楽も多いフジロックの場のなかで、
序盤はソリッドな楽曲でギターロックの強さを見せつけた。
イヤホンで聴いたときには鼓膜を押し付けるような
固くて鋭い音圧が場を圧倒した。

つづいて穏やかな名曲たちが届けられる。
「荒野を歩け」では安定したバンドサウンド。

次に、まろやかなアルペジオと輪郭を撫でるようなベース。
このイントロが鳴った瞬間には
なんて贅沢なんだ……!と呟いてしまった。
「君の街まで」。
間奏でクラップをあおる後藤さんが朗らかで
画面の前の僕も、笑みがこぼれた。

そのやさしい空間をそのまま引き継いでタンバリンが響く。
「今を生きて」。
いきることへの賛美のような躍動の音色。

穏やかなテンポでポップな楽曲が鳴らされた。
それでいて、建さんのリードギターは冴えていた。
緩やかに延びたり空間を裂いたり
色んな表情を見せながら
情緒深く空間をかき混ぜる。
軋みつつ伸びる音は天を貫くようにも思えた。
ここでもギターは圧倒的な存在感を放っていた。

続いて、たゆたう音のうねりで場が満たされる。
繊細でいて凛とした存在感のある打ち込みが刻まれ「UCLA」。
息遣い、発声の一つ一つが空間に溶けるラップ。
雪崩のようにたたみかけるドラムと幸福なコード進行。
あっという間に去っては、また音の霧をこしらえる。

その怪しげなざわめきのなかから、
ギターの刻みが徐々に輪郭をたしかにしてゆく。
「センスレス」。
ダークなサウンドから、
四つ打ちのカラフルなテーマに移っては、
3声コーラスの美しい箇所があったり、
テンポが早まったり。
壮大に鳴りおわる。

叩きつけるようなビートで空間がまたシャキッと仕切られ、
「スタンダード」!
長い竜のようなうねりとパワーコードの細かな刻み。
「小さな願いは 今日 スタンダードだ」とサビの絶叫。

テンポやニュアンスを何度も展開しては、
ギターの持つ伸びやかさ・壮大さと
固くて勇敢な粒だちを同時に示す楽曲が続いた。
五人で鳴らすギターロックの表現の広さを、
無限の可能性を証明するようだった。

夕日の波打ち際のようなサウンドに煌めくピアノが踊る。
昔は歳をとるのが怖かった、
でもいまは変わってゆくのが、そのありのままが、
楽しいと後藤さんは笑う。
20年を超えるキャリアをもつバンドの
フロントマンがつむぐ全肯定のメッセージは
オーディエンスの心を抱き締めてくれた。

センチメンタルで、あたたかい空間のまま、
ギターはコードを進め歌がはじまる。
「ボーイズ&ガールズ」。
歳を重ねて熟成したボーカルが。
ざらつきから深みを増したまろやかさが。
それなのに
「はじまったばかり We've got nothing」。
まっすぐ伸びるロングトーンは空間を包み込む。
それに応える、雄大で壮大で包容力のあるギター。
たっぷりと鳴る。
なんどもなんどもWe've got nothingの言葉が山々に響いた。

われわれが描くべき余白を残して、
彼らはピースサインを残して
笑顔でステージを去っていった。

「幸せな苗場でまた会いましょう。」

今回のライブで思い知らされたことは
ギターロックのダークな強さから包容力まで、
その無限の表現力だった。
ソルファに収録される往年のアンセムから
近年のたっぷりとした名曲まで。

後藤さんを中心に、リズム隊の低音を下げて重厚感を出すとともに、ギターが最大限映えるようにサウンドが再編成してきた、とメディアでも何度ものべられてきた近年だった。同時に建さんのギターが最近いいんだ、ともインタビュー記事で何回か見かけた。
それを実感したライブだった。
ギターが暴れる舞台が整えられた、そしてその舞台に乗っかったギターはほんとうに気持ちよく伸びていた、軋んでいた、届いていた…ということは直感でわかった。

ギターロックに乗せて歌うという姿勢は
つまりアジカンのやる音楽は
現在も広がり続けている。

願わくば、彼らの音楽を聴き続けられますように。
そして、彼らの意思を少しでも継げるようにと、
安物ではあるがバイト代で手に入れたギターのネックを
今日も握りしめて練習しよう。

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