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クリプト民から見たコインベース【COIN】のビジネスモデルと将来性について

アメリカ最大の仮想通貨取引所コインベース・グローバル(以降、コインベース)が2021年4月14日にNASDAQに上場し、一時時価総額にして8兆円規模をつけ日本でも話題になった。

コインベースの主なビジネスモデル

2021年4月現在、コインベースには、およそ5600万のユーザー、アクティブユーザーも610万人以上、預かり資産も2230億ドル以上とされており、ユーザーが仮想通貨を取引するときに発生する手数料が80%以上の収益源となっているようだ。
2021年1Q(第1四半期)の取引高は3350億ドル以上、売上高は18億ドルを計上し、純利益は8億ドル以上と非常に高い利益率になっている。

コインベースのビジネスモデルや収益構造などを、より詳しく知りたい方は以下のS-1(*1)の翻訳記事を参考にすると良い。

*1 Form S-1(フォームS1)は、アメリカ合衆国において、新規株式公開(IPO)を行うために、米証券取引委員会(SEC)に提出する証券登録届出書(開示書類)をいいます。 これは、日本においては、目論見書や有価証券届出書にあたる書類で、IPOを実現するために越えなければならない大きなハードルの一つとなっています。

出典:https://www.ifinance.ne.jp/glossary/management/man264.html

ここまではコインベースの良いところばかりが目立っているが、不安材料も当然ある。

特によく指摘されるのは高い手数料に依存したビジネスモデルということだ。一般的なユーザーの場合、コインベースでビットコインを購入すると、手数料として購入金額の数%も取られる。そしてこの手数料は大口の投資家であればあるほどディスカウントされるような手数料体系となっている。

世界最大の仮想通貨取引所のバイナンスであれば0.1%程度、日本の取引所でも0.1〜0.2%程度がほとんどであることを考えると10倍以上高い。
グローバルでの競争力という点で現状の高い手数料のままで競争力を保てるのかどうかという声は昔から多い。

また、アメリカでビットコインETF(BTC ETF)が承認されると手数料の安さや既存の証券会社を通じてビットコインに投資することが可能になるため、BTC ETFの登場自体がコインベースのビジネスに打撃を与える可能性について指摘する声も多いようだ。
ただ、これについてはETFが買われるとETFの仕組み上BTCの現物が購入されることになるため、そうとも言いきれない。
ETF組成のためのBTC現物購入はNASDAQに上場したコインベースで行われる可能性が高いのではないだろうか。この場合、結局コインベースの利益に繋がる。
ただし、ETF経由でのBTC現物買いは、手数料としては相当割安で購入されることになるとみられる。
また、これまでコインベースで現物買いをしていたユーザーがETFに乗り換えるということも増えるだろう。
したがって、BTC ETFが登場した場合、筆者は、利益が増えるかという予測が難しいものの、コインベースの出来高は増えるが、手数料の収益率は落ちるのではないかと予想している。

コインベースの今後期待のビジネスモデル

2021年4月17日、コインベースからビットコインに次ぐ時価総額2位の仮想通貨イーサリアム(ETH)のステーキングサービスを開始するとのアナウンスがあった。


この記事によれば、ステーキング報酬の25%をコインベースの収益とするとのことである。
コインベースはユーザーの預かり資産がすでに2230億ドル以上であることから、仮にこのうちの一部の100億ドルがステーキングされ、ETHのステーキング報酬を少なめに見積もって年利5%と仮定すると、毎年5億ドルがステーキング報酬として発生することになる。このうちの25%がコインベースの取り分となるため、1.25億ドルの売上となる。
ETHのステーキングは個人でも可能ではあるものの、32ETH以上必要だったり、技術理解などまだまだ参入ハードルが高いこともあり、このようなステーキング代行サービスは一定の需要が見込めるため、今後注目すべきコインベースのビジネスモデルの一つになるかもしれない。

個人的には、このようなステーキング代行サービスをこのタイミングで発表する意味は大きいと思っていて、コインベースの利益の安定化につながると見ている。
なぜなら、現在のコインベースは、収益の大部分を手数料収入に依存しているビジネスモデルであり、市場が伸びているときは手数料収入も伸びるが、市場が冷えているときには想像以上に収益が落ち込む。
この収益構造は株式市場においてはマイナスに捉えられやすい側面だろう。
しかし、ステーキングサービスの収益は手数料収入に比べれば、非常に安定しやすく予測もしやすい。コインベース株への投資を考えている人にとっては、コインベースのステーキングサービス事業の今後の伸びは要注目である。

また、このあとすぐに紹介するが、コインベースには投資部門もあり、こちらの投資収益の動向にも要注目だ。

コインベースの投資部門「コインベースベンチャーズ」

コインベースには、コインベースベンチャーズという仮想通貨のベンチャー投資に特化した部門がある。

上記のページを見てみると、2021年4月17日時点でも大量の暗号資産関連のプロジェクトに投資していることがわかる。その数は、既に70にも登り、ベンチャー企業だけでなく、DeFiやNFT関連のプロジェクトなど多岐にわたる。

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筆者としては、ここで一つ一つのプロジェクトを取り上げて、分析してみたいものの、一冊の書籍になるほどの文章量になることが想定されるので、昨今世間で話題になっているいくつかのプロジェクトをとくにピックアップし紹介してみたいと思う。

まずは、一番トップにあるCompound(コンパウンド)からいくつかのプロジェクトを見てみよう。
Compoundが発行するCOMPトークンは、コインベースの社員108名がみる「今後30日間で購入したい銘柄は?」の社内アンケートでもBTC, ETHに次いで3位になっている銘柄でもある。

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DeFiレンディングの王者 Compound【コンパウンド】

Compoundは、2021年4月17日現在、イーサリアムネットワークにおいて、世界最大のTVL(Total Value Locked ≒ 預かり資産残高)を誇るDeFi(Decentralized Finance = 分散型金融)レンディングプロトコルである。
コインベースはCompoundの初期投資家である。
投資時期:2019年9月頃
投資額:100万USDC(1億円以上)

Compoundチームへの直接投資ではなく、Compoundプロトコル自体に100万USDCを預けている(レンディングしている)状態ということのようだ。USDCは1USDCが1ドルに紐づくステーブルコインである。
USDCの利息だけで年間500万円程度の利益、ファーミング(Compoundで貸し借りをすると利息とは別にCOMPというトークンが付与される)によって得られるCOMPのどの程度をガチホしているかはわからなかったが、以下のようなCoinbaseユーザへのキャンペーン等にも使われていようだ。
Learn Compound. Earn COMP. | Coinbase

CeFiレンディングの王者 BlockFi【ブロックファイ】

前述のCompoundに対し、運営組織が中央集権的にレンディングを行っているプロジェクトとして、世界的にももっとも有名なものがおそらくBlockFiであろう。顧客資産を直接運営が預かり管理することから、DeFiと対比して中央集権的な金融であるため、CeFi(Centralized Finance)とも呼ばれる。
投資時期:2019年1月
投資金額:不明

ソース:
https://blockfi.com/coinbase-ventures-and-able-partners-invest-in-blockfi

コインベースがBlockFiへ投資した金額については、調べた限りではわからなかったが、Compoundを挙げた以上、比較にも良いプロジェクトと思われるので挙げておきたい。
CompoundとBlockFiはユーザーの利用目的としては似たようなものであるものの、BitFlyerの金光さんが優良な比較記事を書かれていたので紹介させていただきたい。

NFTマーケットプレイスのOpenSea【オープンシー】

最近では、NFT(非代替性トークン)が話題だ。日本だけでなく世界中の多くの有名人や企業が立て続けに参入を表明した。

本記事では、NFT自体の説明は省略する。聞き慣れない方は以下などの記事を参考にしてほしい。

OpenSeaに話を戻す。OpenSeaはNFTのマーケットプレイスとしては世界でもっとも有名なものだろう。仮想通貨ウォレットを接続することで個人で直接NFTの売買が可能である。

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コインベースはこのOpenSeaにも投資している。
投資時期:2018年5月付近
投資金額:OpenSeaが調達した200万ドルのうちの一部


最後に

本記事では、コインベースのビジネスモデルを取り上げ、利益率の高さだけでなく、今後の懸念材料、今後期待できるビジネスモデル、投資先を紹介した。
コインベースは、現状では取引手数料に大きく依存したビジネスモデルではあるが、イーサリアムのステーキング代行サービスを始めたり、暗号資産プロジェクトへの投資も積極的に行っており、投資したプロジェクトのいくつかは非常に大きなプロジェクトとなっているためこれらのプロジェクトの動向についても要注目である。
今後、株式市場で評価されるために一つ重要なポイントは、BTC ETFの登場後も持続可能、かつ、安定した収益源を確保できるようなビジネスモデルを構築できるかどうかにかかっている。

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