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第12節 横浜F・マリノスvs ヴィッセル神戸 2019.05.18(完全マリノス視点)

スタメンはこちら。

◼️システム変更の狙いと修正

今節は4-1-2-3ではなく4-2-1-3。ポステコグルー初期にも採用されていた、馴染みのあるシステム。これにより、特にビルドアップ時の中盤センター3人の役割をこれまでより明確にしたかったのではないだろうかと推測している。

※今まで
三好・・・IH兼DH(何でも屋)
天野・・・IH兼DH(何でも屋)
喜田・・・アンカー

近頃は三好、天野の「ダブル何でも屋」が故にIHが2人ともポジションが下がり気味になってしまう事象が多発、IHの攻撃参加頻度は減少傾向にあった。

※詳しくはヒロさんのレビューを参照。


翻って、今節のイメージは以下のような感じ。

マルコスJr・・・CF~IH(インサイドの高い位置)
喜田・・・IH兼DH(何でも屋)
扇原・・・基本DH

マルコスはボランチ付近まで降りて来ることはあるものの、基本的にはセンター~左右ハーフスペースのライン間にポジショニング。

喜田は最終ラインに降りることもあればIHやウイングのようにも振る舞う、天野や三好的な「何でも屋」。

扇原は喜田が上下に動けばアンカー、喜田と並べばダブルボランチと、基本的にはCBの1列前でのプレイ。

これは監督が「お前はこれやれ、そっちのお前はあれやれ」と指示したというよりは、これらのプレースタイルの選手の組み合わせによって、中盤センター各々の役割をある程度明確にしたと表現する方が正しいかもしれない。その甲斐あってか、前節までの「IHが二人とも降りて来る」「ビルドアップの最初の局面でフィールドプレーヤーを6人使う」といった現象はかなり減少した。

以下は中盤センター3人(交代含む)のシュート数の推移。回復傾向にあることが分かる。

若干補足しておくと、11節は交代で後半70分から出場した扇原のシュートが2本あり、先発で出場した天野のシュート数はゼロであった。

またボールサイドに寄っても、逆サイドで主にウイングやサイドバックが幅を取り続けてアイソレーション(孤立)するという、近頃では珍しいポジショニングが試合を通して多く見られるようになり、ピッチの幅を効果的に使えるチームに変貌を遂げた。これは最近の試合と比べてあからさまに変わったところなので、ほぼ間違いなく監督サイドの指示により修正が入ったポイントだろう。これにより、サイドが得意分野である遠藤渓太が久々に爆発した(当然、良い意味で)。

◼️多彩なビルドアップ

マリノスはビルドアップの多彩さも取り戻した。

基本的には相手2トップに対して後ろは3枚で対応。2CB+もう1人は和田or喜田が務める。12節のポジショニングの鍵となったのは喜田(キー坊)、和田(ワー坊)、ティーラトン(ティー坊)の3人(3大坊)。

ティーラトンは「IHか!」とツッコミを入れたくなる広瀬と同じようなインサイドの高い位置を取ることもあるが、がっつり幅を取ることも多い。最近左SBとして起用されていた選手たちのポジショニングとは明らかに違っていた。インナーラップで渓太の内からチャンネルめがけて駆け上がった20分36秒、40分15秒、54分7秒のシーンや、2得点の起点となり1アシストも記録した攻撃貢献度、かと思えばマリノスのボール保持時に西大伍に寄せ切れておらず、守備(ネガトラを想定したポジショニング)の甘さも若干露呈するなど、まさに悪魔の左足2018を彷彿とさせるプレーの数々だった。

和田は、広瀬や松原のような最終局面での積極的な攻撃参加や、松原の縦パスや強烈なシュートなどの派手さはない。しかし動き回る喜田とコミュニケーションを取りながらのポジショニングや、幅を取る仲川の高さを見ての上下動など、絶妙な位置取りで配置のバランスを取る。後半、途中交代で右ウイングの位置に三好が入った時も、三好のインサイドなプレースタイルに合わせ即座に幅を取っていた。

喜田はIHっぽく振る舞うこともあれば、最終ラインに納まることもあり。3分36秒にはインサイドから外に向かうダイアゴナルランでバイタルを空けたり、はたまた12分15秒のシーンのように、左サイドで幅を取りアイソレーションからチャンスを演出してみたりと、三好と同等かそれ以上に効果的なオフザボールの動きだったと思う。鍵だけに、やはりキー坊(またの名を鍵坊)はマリノスのキーマンであった。鍵だけに。

特に配置が動くこの3人を軸とした流動的な動きで、相手に守備の基準点を定めさせず、パスを受けやすいポジショニングやフリーの状況が作り出せていたのではないだろうか。

◼️相手守備の緩さに助けられた面も

また、この日の神戸の守備はコンサドーレやセレッソに比べれば、2トップのコース限定もボールサイドへのスライドも甘く、縦横のコンパクトさにも欠けていた。後半に小川慶治朗が交代で入り、守備時もより4-3-3色が強くなった後は、縦横ベロンベロンに間延びしており、2列目もスライドして対応する気はさらさらなく、幅を取った渓太が勝負できるには十分なスペースが用意されていた。

そういった緩めの守備のおかげもあってか、マリノスとしては縦パスが通るのでライン間で受けられるし、今節からのシステム変更で配置バランスが劇的に改善したおかげもあってか、中を締められても幅を効果的に使える。ダイアゴナルランも復活した。1~2節や6節で感じた、正直忘れかけていたマリノスのポテンシャルを今節では思い出すことができた。

◼️サーチ&デストロイ

やっぱり畠中ってすごいな、と感じた前半10分のシーン。

やっぱり受け手のポジショニングも重要で、縦パスを受けるときは人と人の間で受けないとなかなか前を向けない。そんなポジショニングの選手を見つけ出す・いなけりゃ自分で作り出す(相手の配置を壊す)畠中は、やっぱりすごい。

◼️最後に

恒例の「ボール支配率」と「シュート数」のグラフ。

シュート数は劇的に回復。ボール支配率に見合った攻撃力が復活しつつあるとみている。システム変更や幅を取るようになったという変化だけではなく、センターフォワードが2人帰還したことも大きいだろう。

遠藤渓太の覚醒および、マルコスJrが中盤センターに収まりそうなこともあり、メンツが固定気味だった中盤センターのスタメン争いが激化している。4-1-2-3に戻すとしても左IHは天野と三好の争いになりそうだし、4-2-1-3のままだとしてもボランチの1角は扇原と天野の争いになりそうだ。ティーラトンの台頭によりSBの競争も激化。CFは帰還したエジガルと李忠成の競争だ。ウイングにしても、今節途中出場で2得点の三好が収まってもおかしくはない。サポーター的にはなんとも嬉しいチーム状況である。

ちなみに、12節終了時点で勝ち点21というのは2005年以降の1シーズン制では2013年に次ぐ成績。ここから折り返しの17節までに、どこまで勝ち点を延ばせるかが肝だ。優勝争いを演じたければ、次の磐田戦は落とせない。


To Be Continued
(磐田戦へつづく)

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